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第一次発行 10銭 朱色/赤色 ヴァラエティー(その8):左下桜花紋右横青海波小波落ち / 1st 10 Sen - variety (8): Wave pattern missing right of Lower Left Cherry Blossom
第一次発行10銭赤色で、印面四箇所にある桜花紋のうち、左下の桜花の右側にある青海波紋様の小波がが欠落しているエラー。画像2枚目はエラー部分の説明。 ずいぶんと長ったらしい名前をつけているが、青海波紋様の小波欠落は手彫証券印紙ではしばしば見られる忘彫エラーの一つである。 この変種はカタログ等には記載されていないが、長谷川純氏の収集品を精査させていただいた結果、第2版のpos. 27であることがわかり、かつ、同一のエラー印紙が確認できたことで、晴れて定常変種であることが立証された。 ここ1ヶ月あまり第一次発行10銭赤の版別スタディに取り組んでおり、手持ちのマテリアルの紋様の特徴を色々と確認している中で、証書に貼られたこの1枚に気づいた次第。第一次発行10銭赤は現時点で12版が確認されているが、その割にはカタログに収録されているエラー/定常変種は意外と少ないので、今回の発見も実に貴重である。 ちなみに10銭赤の第2版は明らかに印刻の特徴が異なる2種類の印面(「2A」と「2B」と称されている)が混在しており、少なくとも二人の彫師によって製造されていると考えられている。今回紹介したこのエラー印紙は第2B版に属する。
unechan
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第三次発行10銭青:10枚貼り証書/ 3rd Issue, 10 Sen Blue - 10 copies franking on Document
第三次発行印紙のうち、特に5銭と10銭は版別の研究に取り組んでいるところなので、研究材料としてペア以上のマテリアルを意識して入手している。 こもたび、ベテランディーラーさんから入手した、蔵出しの証書の束に入っていた一枚がこちら。所有しているうちでは最も多い10枚貼りの、明治十四年の証書。鮮やかな青と、消印の朱色のコントラストが美しい。 貼られている印紙は、『銭』の旁、第6画目が強く跳ねるという特徴があって、古屋氏、長谷川氏の作品集で第4版とされているものと考えられる。 実は第一次発行10銭赤にも同じ特徴を持つものがあって、少なくとも同一彫師の作になるものと推定しているが、もしかしたら同一の限版を流用したのかも知れない。第二次発行10銭青にも同じ特徴を持つ印紙は存在するのか?同一の原版を流用していたのか? 色々な事柄を考えるきっかけを与えてくれた貴重な一枚だ。
unechan
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第一次発行 10銭 朱色/赤色 ヴァラエティー(その7):左額面 「銭」点落ち / 1st 10 Sen - variety (7): Left Value inscription “Sen" dot missing
第一次発行10銭赤色で、左額面 「銭」の点が欠落しているエラー。いわゆる忘彫に分類される。 立派なエラーで、カタログにも古くから収録されていて、長谷川カタログ(2016:第6版)p.152にて第1版28番となっている。 この印紙、つい先日入手した証書2枚組のうちの一枚に縦ペアで貼られていたもので、オークション画像を見た限りは第一次10銭赤の初期印刷=第1版もしくは第2版だな、とは思っていたが、まさかのエラー印紙貼りとは思ってもいなかった。保存状態が良かったのか、実に美しいピンクの刷色で、まさに初期印刷の第1版という感じである。 コレクションを充実させてくれる、嬉しい一枚だ。
unechan
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第五次発行1銭黒色:目打8 1/2の15枚ブロック / 5th Issue 1 Sen Black: block of 15
この度入手した証書のロットに入っていた明治17年2月付の地所質入借用証書に貼られている17枚の中の3x5=15枚ブロックで、目打8 1/2のもの。第2版の、ポジション5から45, 6から46, 7から47である。 第五次発行1銭黒色には5種類の基本目打があり、その中で目打8 1/2(20mmの中に目打がおよそ8個半ある)は最後期に出現したものである。手持ちの証書貼り使用例から推測すると早くて明治16年の後半から出現していたようで、ポーラス紙に濃い黒色で印刷されている。 この目打8 1/2は小判切手とのつながりが深くて、個人的には地味であるが好きな目打だが、大きなブロックはおろか田型(二枚x二枚の四枚組)すら持っていなかった。 この証書、出品されていた時の画像では濃黒色のポーラス紙のブロックで、再構築シートの材料になると考えてロットを一括落札(最低値!)したもので、本日届いて仮リーフに整理するためにアイロンがけして折りたたんでいるときに、目打のピッチが荒いことに気づいた次第。 これまで目打8 1/2のアルバムには最大で縦3枚ストリップ貼りのものしか入っていなかったので、これで一気にコレクションを拡張することができた。 決してレアなものではなく、地味ではあるが嬉しい一枚である!
unechan
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第五次発行10銭青色:第1版リコンストラクションシート完成版【2025/2/14完成】/ 5th Issue 10 Sen Blue: Plate I - Reconstructed Sheet [completed Feb 14, 2025]
2023年10月7日に着手しておよそ1年半弱、昨日の第2版に続いて、本日、第五次発行10銭青色の第1版リコンストラクションシートも完成! 画像2枚目はシートの左半分、画像3枚目はシートの右半分の拡大。 こちらも第2版と同様に、2023年12月にあと3ポジションまで漕ぎ着けた後は予想通りの難航で、手に入る10銭印紙は面白いように既集のポジションばかりという、手彫証券印紙の神様の悪戯に付き合っていた。 ところが、こちらも同じく昨年の暮れから今年に入ってから入手したさまざまなロットに混じっていた単片を集め、改めて整理してプレーティングを進めたところ、2月に入ってPos. 33とPos.37発見、一気に追い込みが進み、先週には残りPos. 29 一枚となった。 このPos. 29、これまた特徴のあるポジションで、左警告文の「厳」と「刑」の間によく目立つ点があるのと、「刑」の旁の二本足がやたらと広がってよく目立つ。こちらも面白いほどの偶然であろうが、これまで手元に来てくれたのは、Plate IIのPos.7と同じく古屋厚一氏旧蔵の28枚貼り証書に入っていた一点のみ。 そんな中、某オークションに出品されていた使用済み10銭の単片を何気なく見ていたところ、上の特徴がある一枚を発見。画像が小さかったので見間違いの可能性もあったが、ここは自分の願力を信じつつ、空振りを覚悟で即決で購入。 本日届いた現物を確認して確かにPos. 29であることを確認。印面のコンディションも良く、上々の一枚である。ビンテージ物のデニスンのヒンジを丁寧に付けて、シートの穴を埋めて、晴れてPlate Iのリコンストラクションシートが完成した。 一年半ほどかかったのに、完成は一日の差という面白さ。第五次発行1銭黒のプレートリコンストラクションと同じような現象である。 手彫証券印紙の神様は本当に悪戯が好きなようだ 笑
unechan
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第五次発行10銭青色:第2版リコンストラクションシート完成版【2025/2/13完成】/ 5th Issue 10 Sen Blue: Plate II - Reconstructed Sheet [completed Feb 13, 2025]
2023年10月7日に着手しておよそ1年半弱、ようやく第五次発行10銭青色の第2版リコンストラクションシートが完成! 画像2枚目はシートの左半分、画像3枚目はシートの右半分の拡大。 同年11月にあと4ポジションまで漕ぎ着けた後は予想通りの難航。その間、目につけば同印紙の単片や証書貼りマテリアルを収集してプレーティングに励んでいたのだが、面白いように既集のポジションばかり... 第五次発行1銭黒のプレート再構築のときと同じく、手彫証券印紙の神様の悪戯が続いていた。 ところが、昨年の暮れから今年に入ってから入手したさまざまなロットに混じっていた単片を集め、改めて整理してプレーティングを進めたところ、Pos.39 を1月24日、Pos. 20とPos. 37を2月8日に発見、一気に追い込みが進んで残すはPos. 7 一枚となった。 このPos. 7は左警告文の「可」の字が異形で、よく目立つ筈なのに、本当に不思議なことにこれまで手元に来てくれたのは古屋厚一氏旧蔵の28枚貼り証書に入っていた一点のみ。隣のPos. 8は単片、証書貼りとも複数枚集まっているのに、ぽっかりとあいた真空地帯のような存在であった。 そんな中、未整理の印紙貼り証書を整理していたところ、上耳紙付きの10銭青印紙(+10銭が一枚、1銭が一枚)が貼られた証書を発見。見ると、異形の「可」! 証書のコンディションがイマイチだったので、迷わず水剥がしして乾燥させて、長谷川純氏のフルシート写真と照合して再確認。確かにPos. 7である。しかも、一緒に貼られていたもう一枚の10銭青はPos. 8で、目打でピッタリ再結合できて横ペアが完成。 こうやって、晴れてPlate IIのリコンストラクションシートが完成した。4種類の色調が混じっていて、モザイク画のようでこれはこれで美しい。 今後はより良いコンディションの印紙への貼り替えを進めて、展示作品に使えるように仕上げていきたい。ちなみに第1版も程なく完成の予定である。
unechan
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第一次発行 10銭 朱色/赤色 ヴァラエティー(その6):左額面 「銭」第二画落ち / 1st 10 Sen - variety (6): Left Value inscription “Sen" second stroke missing
第一次発行10銭赤色で、左額面 「銭」の第二画落が欠落しているエラー。いわゆる忘彫に分類される。 画像2枚目は忘彫部分の解説。 この変種はカタログにも収録されており、長谷川カタログ(2016:第6版)p.152にて「第2版 46番 左”銭”の第2画落ち」となっている。 随分と前に入手した、第一次発行10銭赤と第一次発行5銭茶貼りの明治10年付の証書に貼られていたもので、何気なく第一次発行印紙貼りの証書を眺めていたら目に飛び込んできた次第。 灯台下暗しというか、いままで気づかなかったのが不思議なくらい、気がついてみたらすごく目立つエラーである。手彫証券印紙は一枚たりとも疎かにしていけないということをまたもや思い知った!
unechan
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第一次発行 10銭 朱色/赤色 ヴァラエティー(その5):左警告文 「厳」3画落ち / 1st 10 Sen - variety (5): Left Warning "Gen" (third character) - three strokes missing
第一次発行10銭赤色で、左警告文の「厳」のタレの中にある「耳」の部分の横棒3画が欠落しているエラー。いわゆる忘彫に分類される。 画像2枚目は忘彫部分の解説。 かなり細かい変種なのでカタログには収録されていないが、長谷川純氏のご教示により、第4版のPos. 44であることがわかっている。 このような定常変種は、エラーそのものよりも、エラーがプレーティングの手助けとなるところに意義があると考えている。 つまり、この印紙が第4版なので、左警告文の「刑」の左側が大きく、右の「リ」の入りのセリフが強く、終わりも大きく曲がりながらハネる、「可」の縦棒の入りが曲がっている、「銭」の点がカギのような形(「?」の点を取って寝かせたような形)という彫りの癖があるものは第4版の可能性が高い、という感じで、版別の手助けとなる次第。 第一次発行10銭印紙は12版あることが知られているが、版が異なると彫りの癖も結構異なっているので、手元のマテリアルも大きく(仮の)12グループに分けて整理を進めているところ、このエラー印紙が見つかったことで、少なくとも第4版がどの仮グループに対応するのか判明しそうだ。 一枚もおそろかにできないのが手彫証券印紙の面白さである。
unechan
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第四次発行10銭青色:Plate IV 【ポーラス紙/濃青色:珍版?】/ 4th Issue 10 Sen Blue, Plate IV [Porous Paper / Dark Blue - rare plate?]
珍品とされている、第四次発行10銭青色印紙(洋紙、目打)を思いがけず複数手に入れることができたことに気付いた。 先日手に入れた、洋紙目打10銭と和紙目打5銭が貼られている証書(画像1)である。同一時期に同じ出所の複数の証書のロットで、現在進行中の第五次発行10銭青色印紙のプレートリコンストラクションの材料に使えると考えて入手した次第。 帰宅して確認すると、ポーラス紙/濃青色の目打10、印面の特徴からは(第五次発行10銭青色の)Plate Iで、幸いなことに上耳紙付きのものも2つあったので、早速プレーティングを試みたところ、全く合わない。Plate IIのシート写真と照合しても合わない。(画像2) 残りの証書に貼られている印紙を確認したところ、いずれも合わない。左警告文の「刑」が見たことない異形のものや、額面表示の「1」の下のセリフが右側に長く伸びているなど、第五次発行10銭青とは顔つきがちがうものが多数あった。 長谷川純氏の作品集「手彫証券印紙」(2022)に、第四次発行10銭青色でポーラス紙のものが掲載されていたことを思い出し、同書p.140の「Fourth Issue 10 Sen Blue, Plate IV」図版を拡大して眺めてみると、今回入手したものと実によく似ている! これは、と思い、図版をスキャンして、合致するものがないか探したところ、この耳付きの印紙ではないが、残りの証書に貼られているもので、長谷川氏のリーフに貼られている印紙と一致するものを発見した(画像3)。 明らかに第四次発行10銭青色 Plate IVを入手したのは今回が初めて。長谷川氏によると、この版の印紙は数日で製造が中止されたと考えられること、現存数はわずか30枚程度の使用済みが確認されているのみで、未使用は未確認、とある。地味ではあるが、実は大珍品である。 このミュージアムでも何度も述べているが、手彫証券印紙はどこに何が潜んでいるのか全く油断ができない... (このあたりの顛末はLab ジャーナル「手彫証券印紙ノート」で詳しくレポートいたします)
unechan
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第一次発行 10銭 朱色/赤色 ヴァラエティー(その4):下額面 「1」下セリフ落ち / 1st 10 Sen - variety (4): Lower Serif missing in “1” of lower value inscription
第一次発行10銭 朱色/赤色のヴァラエティーで、下額面表示の「1」の下のセリフ(横棒)が欠落しているエラー。画像2枚目がエラー部分の説明。明治7年の証書に貼られているもので、使用時期と色調から初期印刷のものと思われる。 細かい忘彫のためか、長谷川(2016)をはじめとしたカタログには未収録。
unechan
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第三次発行10銭青色:印面変種「右額面銭の点落ち」2例目 / 3rd Issue 10 Sen blue : variation - right side value inscription "Sen" dot missing - Second example
第三次発行10銭青色の、右額面「銭」の点が落ちている忘彫エラー。 このコレクションルームで、縦三枚ストリップの3番目の印紙でこのエラーを発見し、また、同じエラーが第二次発行10銭青色にも存在することが判明した経緯を詳しく報告させていただいた、思い出のエラー印紙。この度、ようやく2例目に出会うことができた。証書に貼られたもので、擦れと糊の変色が目立ってコンディションとしてはイマイチではあるが、これで確実に忘彫エラーであることが証明できる。 また、これでコレクションリーフにも単片(3枚ストリップ)と証書を貼ることができる。 来年度は第三次発行印紙での競争展出品を目指しているので、実に嬉しい出会いであった。
unechan
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第五次発行10銭青色:目打11L / 5th Issue 10 Sen Blue: Perf. 11L
第五次発行10銭青色の、目打11L。 カタログではさほど珍しく無いような評価であるが、私には縁がないのか、本コレクションルームの基本目打で紹介したものを入手して以来、実に数年ぶりに追加できた一枚。特に右辺の目打が大穴で、目打山が尖っているという、11Lの特徴をよく表している。 こちらも雑多なロットに混じっていたもので、本当に手彫証券印紙は気が抜けない。
unechan
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第五次発行25銭黄色:無地紙、篆書八角印付き(6、7例目) / 5th Issue 25 Sen Yellow, normal paper with Tensho hexagonal cancel (sixth and seventh example)
第五次発行25銭黄色の入手は本当に運と出会いを待つしかない。 この度、海外オークションで小判切手、菊切手と印紙、証書類がごちゃ混ぜになったストックリーフが相次いで2つ出品され、その中にひっそりと第五次発行25銭黄色が1枚ずつ潜んでいた。 旧小判4銭の面白い消印や、さまざまな証紙、第一次発行大型高額手彫証券印紙も混じっていたためか入札数は多かったものの、予算を十分に下回る落札価格で無事に両ロットを入手することができた! イギリスから大きな書留郵便で届いたストックリーフに収まっていた2枚、いずれも無地紙、目打10で、このコレクションルームでも紹介した、例の篆書八角印が押されている。 恐らく数シートが同じ場所で使われて、それが一括で海外に流出し、さまざまなコレクションに収まっていたものが、少しずつ里帰りしているのであろう。 今回入手した2枚、ありがたいことに、画像1枚目のものシートの最上段(Pos.1 - 10)、画像2枚目のものはシートの最下段(Pos. 41-50)と思しきマージンがあって、ポジションの識別のための貴著なマテリアルとなりそうである。 これでコレクションは無地紙7枚(全て八角印)、ポーラス紙2枚(八角印はなし)となった。
unechan
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第五次発行 5銭 印面ヴァラエティー:内枠右下雲型飾り落ち(Pos. 25) / 5th Issue 5 Sen variety: right-lower cloud form ornament missing (Pos. 25)
第五次発行5銭印紙には一つ前のアイテムとして紹介したPos.49と、こちらのPos. 25の2つの印面ヴァラエティーが報告されている(長谷川2022)。 このPos. 25は、印面内側枠の右下にある雲型飾りが欠落している忘彫エラーで、画像2枚目にエラー(忘彫)部分を示している。長谷川カタログ(2016)では p.172に定常変種番号 29-2として掲載されている印面変種。 先日訪れたJAPEX2024のディーラーブースで入手したロットに紛れこんでいたもので、このような宝探しがいまだに可能なのが手彫印紙の楽しさの一つでもある。
unechan
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第一次発行 1銭 灰色/黒色のヴァラエティー(23): 左額面「一」の下に小丸 / 1st Issue 1 Sen - variety (23) - small circle below "one" of left value inscription
第一次発行1銭灰色の、左額面の「一」の下に小さな丸のようなものが付いている定常変種(画像1枚目の赤丸の部分)。 印面の誤刻というよりか、原版に何らかの傷がついたものと思われる。 この程度の印面の変異はよく見かけられるもので、普通は印刷の際にゴミが紛れ込んでしまったために生じた偶発変種と考えるのがよいのだが、 一つ前のアイテムとして紹介した、第一次発行印紙が多数貼られた証書に、画像2枚目のとおり、 全く同一ポジションで、(当然だが)同一の変種がある印紙を2枚発見した。 これにより、定常変種であることが証明でき、晴れてこのミュージアムで紹介できるに至った次第。 当然ながら細かすぎてカタログなどには未収録。
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