昔の名前で出ています(by小林 旭) ~ 「弘前塗 松葉紅葉菓子入」

初版 2022/07/16 09:55

改訂 2024/03/19 08:57

「津軽塗」は明治以降(明治6年以降)の近代になって出てきた呼称と言われています。それ以前は「弘前塗」や「から塗り」などと呼ばれることが多かったようです。

「弘前塗」と言われていた頃の作品をご紹介します。今の津軽塗とはちょっと受ける印象が違うかもしれません。

大きさは最大径五寸弱(14センチ程)の菓子器です。蓋がきっちりと嵌る作りになっています。全体に黄漆に菜種でななこ塗を施し、その上に松葉と紅葉を描いています。模様は身と蓋で連続しており、絵柄としてまとまっています。菜種が実に細かく、この作業だけでも大変な手間と思われました。

特に糸輪はありませんが、わずかに天井を削っています。蓋下のぐるりもシャープに成形されており、凹凸部分の上下も絵柄は連続しています。木地の狂いは全くなく、蓋と身はピタリとはまります。

蓋も身も内外模様が付けられています。どの部分でも絵柄は連続しており、蓋がされても外されていても絵を楽しめます。

様々に角度を変えた葉の散らし方もうまいなぁと思います。

画像が粗くて分かりづらいのですが、紅葉の葉の先端や葉のギザギザがとてもシャープに描かれています。漆はその高い粘性という性質上、細く描くことは難しいのですが、先の先まで赤いラインがテーパードされています。

身の内側の斜面に絵を描くことは、手の動きが制限されるため特別に難しいはずなのですが、破綻なく紅葉を描いています。大変な技量です。

身の口回りの作りも繊細で、口縁まで模様付けをしています。使われている色は三色のみですがさみしい感じはせず、「やまと絵」の流れを汲んでとても豊潤な印象が漂います。

高台の内側だけが黒漆です。一部漆剥がれがありますが、この部分以外には破損はありません。大切にされてきた器なのでしょう。

シンプルな共箱です。桐製です。

「一ノ橋」の間さんという方のご所有だったようです。「弘前塗」という文字が見えますが、江戸時代としても非常に達筆な箱書です。この器は天保から安政頃の製作ではないかと推察しますが、弘前藩の塗師の力量をまざまざと思い知らされました。

私の好きなボンゴ豆を入れたいのですが、「もうちょっとちゃんとしたお菓子を入れなさい」と家族に非難されています。

「ボンゴ豆がちゃんとしたお菓子じゃないってのかよ!」(心の声)

1990年3月に行ったロンドンで、初めてエドワードグリーンのドーバーを購入しました。以来、ここの靴の虜になりました。質の良いしっとりとしたカーフ、美しい木型、無い物ねだりと分かりながら、この時代のエドワードグリーンの靴を今も追い求めてしまいます。
他に古い靴も修理して履いています。特に戦前の英国靴は素晴らしいと実感しています。

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    レイレイ

    2022/07/16 - 編集済み

    毎回美しいモノの日記👏😆
    …そして
    ボンゴ豆、を検索しちゃいました(笑)
    食べたことないかも🙄
    ポリッピーに似てますね😋

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