爺はじじでも總持寺(そうじじ)御用達~輪島松竹梅模様四段重

初版 2023/01/25 17:45

改訂 2023/01/28 16:55

輪島に曹洞宗の「大本山總持寺」というお寺がありました。開山は1321年ですが、その後、後醍醐天皇、前田利家、徳川家康の後ろ楯もあり、全国にその末寺1万6千余を数えるに至る大寺院になりました。当時は巨大な組織であったこのお寺から、輪島に膨大な漆器の注文があったそうです。寺の数だけで2万近く、従事する僧の数はぞれよりずっと多くなるわけで、お椀だけでも大変な数が必用だったでしょうね。しかし、1898年(明治31年)4月13日の大火で、開山廟所である伝燈院経蔵といくつかの小施設を除いたほぼ全山を焼失してしまいます。その後、1911年(明治44年)、横浜鶴見に寺が移転され、輪島の元のお寺は「總持寺祖院」という名称になりました。

これからご紹介する八寸重は輪島のお寺が焼失する、明治31年以前の製作と思われます。

重台付の堂々たる八寸重です。狩野派のようなダイナミックな松竹梅の蒔絵ですね。

反対面ですが、微妙に絵柄が違います。

お重はもちろんですが、重台はさらに現代では使うことがないと思います。ただこれがあると無いではかなり格が違って見えます。

一段目だけだと松の幹が全く見えず、少々さびしいものがありますね。

何度も言いますが、蓋が二枚あると本当に便利です。

この蒔絵では特に金蒔の松の幹の表現が素晴らしいです。輪島らしい男性的な描写です。

右上部にうっすらと布着せの凹凸が見えます。

二方桟にも傷みはありません。

重台もシンプルですが、スッキリとして出来が良いです。

箱書はとても達筆。ただ箱は簡素な印象です。

このお重は「大工冶太郎」氏の工房製作のようです。總持寺御用達の印が燦然と光っています。

1990年3月に行ったロンドンで、初めてエドワードグリーンのドーバーを購入しました。以来、ここの靴の虜になりました。質の良いしっとりとしたカーフ、美しい木型、無い物ねだりと分かりながら、この時代のエドワードグリーンの靴を今も追い求めてしまいます。
他に古い靴も修理して履いています。特に戦前の英国靴は素晴らしいと実感しています。

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    利右衛門

    2023/01/25 - 編集済み

    これは…息を飲むというか、言葉を失う美しさなのです✨

    輪島にそういう大きなお寺さんがあったからこそ、塗り物の工房も多かったのでしょうし、良い職人さんも集まったのでしょうね。

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      グリーン参る

      2023/01/25

      利右衛門さん、
      おっしゃるとおりこのお寺のような大注文主がいたことは大きいと思います。加えて江戸時代から続く、輪島独特の販売方法が隆盛をもたらしたと思います。出張セールスです。テレビもネットもない時代に、見本をもって全国を回って漆器の予約を取ってきたそうです。徹底した分業制も製品の質を高くしています。
      昨年、ブラタモリで「輪島」をやっていました。ご覧になっていなければ是非どうぞ。

      https://www.dailymotion.com/video/x8cykje

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      利右衛門

      2023/01/25

      ブラタモリ、ありがとうございます🎵
      拝見させて頂きますね

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      グリーン参る

      2023/01/25 - 編集済み

      余談ですがこの明治31年の大火で、輪島にあった江戸期の古い漆器はほとんどが燃えてしまったそうです。ですから現存する古い輪島塗は、他の地方に渡ったものの方が多いかもしれません。このお重も別の土地にあって火災を免れたものと思われます。江戸時代の古い輪島の文献や資料もかなり燃えてしまったと、輪島の方がお話しされていました。

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