TOYOTA TS050 HYBRID TOYOTA GAZOO RACING #8 WINNER 24H LE MANS 2019

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トヨタ・TS050 HYBRIDは、トヨタ自動車(トヨタ・モータースポーツ)が2016年のFIA 世界耐久選手権 (WEC) 参戦用に開発したプロトタイプで、トヨタ・TS040 HYBRIDの後継モデルにあたります。

トヨタのル・マン24時間レース初参戦から33年目にして初のル・マン総合優勝車であり、日本車としてもマツダ・787B以来の優勝車となりました。

トヨタは2014年にTS040を投入してWECのチャンピオンに輝きましたが、2015年は資金を大量投入したポルシェ・アウディの競争レベルから取り残されたため、2016年に向けて開発計画の見直しを迫られました。
2015年の第3戦ル・マン24時間レースの頃には新車開発を決断し、開発リーダーの村田久武氏のもと、約10カ月という短い期間でTS050を開発、2016年ル・マン24時間レースの初制覇を目標設定として進めて来ました。

前後輪にモーター・ジェネレーター・ユニット (MGU) を搭載する四輪ハイブリッド方式は変わりませんが、パワートレイン関連は一新され、燃料流量と燃料の総エネルギー量が約7.5パーセント削減される新レギュレーションに対応し、エンジンは3,700 ccのV8自然吸気 (NA) から、2,400 ccのV6直噴ツインターボへ変更されました。
このエンジンはトヨタの東富士研究所で開発され、F1のパワーユニット同様副燃焼室(プレチャンバー)技術が採用されており、蓄電装置は充放電のレスポンスに優れるスーパーキャパシタから、蓄電容量の大きいハイパワー型リチウムイオン電池に変更され、ル・マン1周あたりのエネルギー放出量では4段階のうち最大の8メガジュール (MJ) を選択。本来、これらの技術は2017年以降に順次投入される予定でした。

トヨタは2015年より「TOYOTA GAZOO Racing」の統一ブランドでモータースポーツに参戦することを発表していたため、カラーリングもTS030以来の白×青パターンに代わり、GAZOO Racingの白×赤×黒パターンにイメージチェンジを行いました。

2016年シーズン、第3戦ル・マン24時間レース決勝はトヨタの2台とポルシェ・919(2号車)がスプリントレース並みの接戦を続けましたが、ポルシェより1周分多く周回するトヨタが、最終盤で計算上ピット一回分のマージンを稼いでいましたが、しかし終盤、プッシュしていたトヨタ6号車の小林可夢偉選手がスピンして脱落。最後の30分でポルシェ2号車がピットインし、トヨタ5号車が1分半のリードを保ち栄光のチェッカーを目指しましたが、残り6分、5号車の中嶋一貴選手から“I have no power!”と無線が入り、200 km以上の速度を出すことが出来なくなってしまう。残り4分30秒の時点でポルシェ2号車とのギャップは37.580秒に迫っており、トヨタ陣営はマシンをピットに入れるかコースに残すか迫られ、トヨタはマシンをコースに残すことを決断し、マシンの再起動を試みましたが、ピット前に停車した数秒後にポルシェ2号車が通過し、トヨタ5号車は首位から脱落しました。結果、レースの大半をリードしたにもかかわらずポイントを獲得することは出来ませんでした。
トラブルの原因はエンジン左バンクのコンプレッサーとインタークーラーをつなぐカーボン製のパイプが脱落し、過給圧が低下したためと判明、この部品は17,000 kmのテストをパスし、レース前に新品に交換していたにもかかわらず、問題が発生してしまいました。

2017シーズン、第3戦ル・マンでは練習走行、予選、決勝から優れたペースを見せ、特に予選では小林可夢偉選手が従来のコースレコードを2秒縮めるという成果をあげました。決勝でも前半を1-2体制で走り続けましたが、8時間ほどで2位の8号車はトラブルにより長期ピットイン。1位の7号車は、10時間経過後の夜間のセーフティカー走行中にピット出口の赤信号で待機していたところ、マーシャルと同じ黒・オレンジ色のレーシングスーツを着たアルガルヴェ・プロ・レーシングの地元ドライバー、ヴァンサン・キャピレール(フランス語版)が駆け寄ってきて親指を立ててエールを送った。しかしこれを搭乗していた小林が発進の合図と勘違いし、慌ててピットが無線で小林を制止。この結果想定していない手順で発進してしまい、クラッチを破損。しかもこのトラブルの発生は、セーフティーカー走行が終了したホームストレート上でスローダウンしたことにより発覚、結果ピットには還れずリタイアとなってしまいました。残った9号車も、オープニングラップでバイコレスが落下させたパーツで右カウルを破損したり、ドアが開いてしまうなどのトラブルに見舞われており、それでも7号車のリタイア時にはトヨタ勢最上位となっていたものの、直後にホームストレート上でLMP2の追突を受け、右リアをバースト。ズルズルと這う様に走りながらピットへの帰還を試みましたが、ピット進入口でわずかに届かずリタイアとなってしまいました。
この年のル・マンは結局、先にトラブルに見舞われた8号車が最後まで生き残り、総合9位(クラス2位)で終わりましたが、総合3位でフィニッシュしたネルソン・ピケJr.選手、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン選手、マティアス・ベシェ選手がドライブを担当したLMP2クラスの13号車バイヨン・レベリオンがレース中に違反行為をしたため失格処分となり、総合8位に繰り上がりました。このレース後、現地に訪れていたトヨタ自動車社長の豊田章男氏は、ドライバーに「思い切り走らせてあげられなくてごめん」と謝罪する声明を出す一方、チームを「クルマを速くするだけではルマンには勝てないんだ! 我々には“強さ”がない! 強いチームにはなれていない!」と厳しく叱責しました。

2018年〜2019年の変則的なスケジュールで行ったシーズン、2度のル・マンを行うこととなったが、2018年6月の第2戦ル・マンでは、中嶋一貴選手が2014年以来2度目のポールポジションを獲得。決勝ではトヨタはライバルより1ラップ2秒以上速く走り、終始レースを支配しました。8号車は一時7号車にトップを奪われ、ペナルティで2分以上遅れましたが、その後フェルナンド・アロンソ選手の鬼神のような速さや黄旗のタイミングなどもあり、8号車がトップに返り咲きました。また小林可夢偉選手がピットインし忘れてガス欠の危機に陥いりましたが、徹底した対トラブル訓練により事なきを得ました。最後は中嶋と小林がランデブー走行でチェッカーを受け、トヨタは30年越しの悲願の総合優勝を果たしました。日本車としてのル・マン総合優勝はマツダ・787に次ぐ2例目、日本人は荒聖治選手に次ぐ3例目ですが、日本車と日本人の組み合わせでの総合優勝は史上初で、日本車又は日本人の1-2フィニッシュもまた史上初となりました。
なおレース展開やレギュレーションの違いもあって一概に比較はできないが、8号車の記録した周回数388は、TS050が戦ってきたポルシェ・919ハイブリッドの2016年の384周、2017年の367周を凌ぐ数字であり、トヨタがトヨタ・TS010で参戦した1991年以降では2010年のアウディ・R15 TDIによる397周、2015年のポルシェ・919ハイブリッドの395周に次ぐ三番目に多い周回数になりました。

このモデルである2019年6月の最終戦となる第8戦ル・マンでは、7号車がポールポジションを獲得したが、コース上でスピンしたマシンと衝突してしまい、モノコックの交換を強いられました。
決勝でも7号車が終始トップを走っていたものの、残り1時間で右リヤタイヤがパンク。しかもそのタイヤ交換のためのピットインで、誤って右リヤではなく右フロントタイヤを交換するミスを犯してしまい、これはモノコック交換時の配線ミスが要因でした。そのため再度のピットインが必要となり、結果として大半のリードを築いていたにもかかわらず8号車に逆転を許してしまい、最終的に前年同様に8号車がトップでゴールし2連覇を達成、同時に同車を駆るセバスチャン・ブエミ選手/中嶋一貴選手/フェルナンド・アロンソ選手組が2018 - 2019年のシリーズチャンピオンを獲得しました。これによりブエミは2回目、中嶋とアロンソは初のシリーズチャンピオンとなりました。

2019年〜2020年シーズンは、秋に開幕し翌年夏のル・マンで閉幕することになりました。
しかしコロナ禍のため2020年6月開催が9月に延期され、尚且つ無観客で行われた第7戦ル・マン24時間レースは、7号車がポールポジションを獲得。8号車は3番手からスタートしました。7号車のスタートを担当したマイク・コンウェイ選手は、3番手からスタートした8号車が2番手からスタートした1号車レベリオンとの2位争いをしている間に後続とのマージンを広げていき、8号車は1号車レベリオンをかわし2位へ浮上しましたが、1時間が経過したところで左リアタイヤのパンクに見舞われピットインしたため4位へ後退したものの、その後レベリオン勢をコース上で交わし2位へ復帰しました。
その後、2台のバトルは続き、ピットインロスやセーフティーカーのピットタイミングなどで8号車が首位に立ちますが、7時間が経過したところで8号車がブレーキ温度上昇のトラブルに見舞われ、再び7号車が首位に立ち、8号車は3位でコースに復帰しました。8号車は前を行く1号車レベリオンをオーバーテイクし、再びトヨタが1−2体制を築きましたが、しかし12時間が経過した頃、小林がドライブしていた7号車が排気マニホールドの破損による出力低下に見舞われ修復作業に30分を要し、3位の3号車レベリオンから4周遅れの4位でコースに復帰しました。
そして、2位以下に十分な差を広げた8号車がペースをコントロールしながら周回を重ねていき、最終的には差が5周まで広げていきました。
一方の7号車はレース復帰後追い上げ続け、ライバルの3号車レベリオンが残り1時間でクラッチトラブルによりガレージで修復作業に時間を要したことで3位に浮上、2位の1号車レベリオンから1周遅れでの3位表彰台を獲得しました。

この結果、8号車がル・マン3連覇を達成。これによりTS050で3回目のル・マン優勝となり、同時にTS050にとって最後のル・マンとなりました。また、この優勝により、トヨタが本年度のチームタイトルを獲得しました。

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