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W.ROKKOR-QE 35mm F4
1960年頃に登場した,minoltaの一眼レフ用ROKKORレンズの第一世代のレンズです。当時のレンズラインナップのなかで廉価版としての位置付けで,暗い開放F値,簡略化されたレンズ構成,少ない絞り羽根,プリセット絞りとすることでコストを抑えたモデルです。結果として無理のない設計で軽くて小さく,開放からよく写るレンズになっています。といっても開放でF4なのでちゃんと写ってくれないと困るとも言えます。 写真ではわかりにくいかもしれませんが,絞りがF8あたりで星型になります。そのためうまく背景を選ぶと星型の光源ボケが得られます。ただ,それほど寄れるレンズではないので F8あたりで背景をぼかすのはちょっと難しいところもあります。 もともと一眼レフ用のRokkorレンズは叩き売り状態なうえに,廉価版レンズとなれば全く需要がないようで値段もあって無きがごとしです。この個体はAUTO ROKKOR-PF 55mm F1.8をヤフオクで探していたらたまたまこのレンズとセットで出品されていたので,55mm F1.8を入手したらいっしょにくっついてきたという感じです。 安いけれど良いレンズだと思います。ただ,さすがに暗いところでは厳しい場合もあります。フィルム時代よりもISO感度が可変なデジタルカメラになった現在になって本領を発揮しているレンズかもしれません。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/W.ROKKOR-QE%2035mm%20F4 に置いています。 #レンズ #MF #W.ROKKOR #SR #Minolta #35mm #F4 #広角 #単焦点
MFレンズ SR MinoltaMOR
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Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS
Snoy Eマウント用のフルサイズのレンズとしては比較的早い時期の2014年11月に登場したSony Zeissレンズ(SEL1635Z)です。ズーム域は超広角の16mmから準広角の35mmまで,開放F値はF4通しです。純正にはF2.8の高級ズームレンズもラインナップされていてとても評判がよいですが,とても高価なので手も足もでません。SEL1635Zは登場からすでにかなりの時間が経過しているので,中古価格もこなれてきていてタマ数もそこそこあって入手しやすくなっています。 このレンズにはTessarという伝統的なZeissの名前がついていますが,ズームレンズなので10群12枚というおおがかりな構成になっています。3群4枚のTessarとは似ても似つかないレンズ構成ですが,何をもってTessarという名前になったのかよくわかりません。Sony Zeissには伝統的なレンズ銘が付いているけれどもオリジナルのレンズ構成とはまったく関係ないものが多く,古い時代のZeissレンズ好きからするとなんだかなぁ,と思うところはあります。だからといってどうだ,ということもないし,ちゃんと写るので特に困ることもないのですが。 このレンズによる作例を https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/SEL1635Z に置いています。 #レンズ #AF #SonyE #Sony #Carl_Zeiss #16-35mm #F4 #SEL1635Z #広角 #ズーム #手振れ補正
AFレンズ Sony E SonyMOR
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Topcor-S 5cm F2
1957年頃に発売されたレオタックスTVやその後のFVについていたレンズです。Topcor-S 5cm F2はSがつかない初期型,Sがついた白鏡筒の前期型,黒絞りの中期型,黒鏡筒の後期型と変遷します。中期型までが真鍮製の鏡筒で,それぞれ異なる光学系で写りも異なるようです。巷では中期型の写りがもっともよい,という話もあります。 戦前からの光学メーカーとしては東京光学と日本光学が有名で,陸のトーコー,海のニッコーと戦時中は呼ばれたようにそれぞれ陸軍や海軍に光学機器を納めていました。東京光学は1981年に民生用カメラ事業から撤退し医療機器や測量機器などに特化します。1989年にはブランド名だったトプコンが社名となり,2008年には測量機器メーカーのソキアを完全子会社化して測量機器部門を強化しています。一方の日本光学はニコンと社名を変え,現在もカメラやカメラ用レンズを製造しています。 東京光学は当初はバルナックライカコピーのレオタックスにTopcorレンズを供給するのみで自前のカメラは作っていませんでした。しかし,1954年のM型ライカ(M3)の登場によりバルナックライカが時代遅れになったため,日本のカメラメーカーは一斉に一眼レフに向かいます。その流れにあわせるように東京光学は1957年にexaktaマウントを採用したペンタプリズム付きフォーカルプレーン式一眼レフカメラTopcon Rを発売します。レオタックスカメラはそれと相前後する1959年に倒産します。それ以降,東京光学は一眼レフカメラとそのレンズの製造を1981年まで続けています。 東京光学がL39マウント用のレンズをいつから作っていたのかよくわかりませんが,M3が出るまでの1950年代前半が全盛期だったと想像されます。黒絞りの中期型Topcor-S 5cm F2が出た頃は既にバルナックライカコピーのレンジファインダーカメラの終焉が予見されはじめていたと思われます。その一方で,十分に熟して充実した内容のレンズが作れるようになったタイミングだったといえるのかもしれません。 Topcor-S 5cm F2は4群6枚構成の典型的なダブルガウス型のレンズです。この個体は絞りを閉じていくと開口部が少し歪な形になってしまいます。おかげで相場より少し安く入手できました。絞り羽根が歪んでいるようなので,きちんと整備をしないと寿命を縮めることになることはわかっているのですが,実用上の支障がないためついつい横着をして放置したままでいます。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Topcor-S%201%3A2%20f%3D5cm に置いています。 #レンズ #MF #Topcor #L39 #Tokyo_Kogaku #50mm #F2 #標準 #単焦点
MFレンズ L39 Tokyo KogakuMOR
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TELENAR 13.5cm F5.6
Roeschlein KreuznachはStefan Roeschlein氏によってドイツのBad Kreuznachに1948年頃に創立された光学機器メーカーです。1964年にこの会社は現在のSill Opticsに売却されていますので,実質的な活動期間は15年あまりだったと推察されます。創立者のStefan Roeschlein氏はMeyer-Optik Görlitzにおいて光学技術者としてPrimoplanやTrioplanなどの現在でもたいへん有名なレンズを設計した人物です。1948年,60歳になって一念発起して自らのレンズメーカーを立ち上げたのでしょうか。60歳で会社を立ち上げ,自ら光学設計をしてレンズを製造する,というのは普通に考えて相当なエネルギーが必要なはずです。それをやってのけたというのはとてもエネルギッシュな人物だったのかもしれません。 このレンズはRoeschlein KreuznachがPaxetteの第二世代のカメラ(39mm径のねじ込み式マウントをもつレンズ交換式カメラ)のために供給したものの一つです。Roeschlein Kreuznachが作ったレンズの種類はそれほど多くはなく,いずれも比較的廉価なカメラ向けの小型のものが中心であったように見えます。135mmのTelenarも開放F値が5,6という当時としても暗いレンズですが,そのかわりに手のひらに収まるほどで非常にコンパクトです。レンズ構成や発売時期などの情報は私がネットを検索した範囲では何も見つけることができませんでした。この個体はレンズ銘に-E-がつかない距離計に連動しないタイプです。また,銘板に刻印された焦点距離もmmではなくcm表記ですので初期に製造されたものだということは予想できます。レンズ交換式の最初のPaxette IIの発売が1952年なので,この個体も遅くても1950年代の前半には市場に供給されていたはずです。 Roeschlein KreuznachのPaxette用レンズはいずれも小型化を優先して,ある程度(というか,かなり)収差を残したまま製品化したようなところがあって撮り方によってはボケが大暴れするような印象です。しかし,収差の暴れ方の再現性がよくわからず,たまに普通に写ったりして安定性というか一貫性がなく,コントロールが難しそうです。なんだか開発途中で投げ出しちゃったんじゃないかと思うくらいですが,見慣れてしまえば普通に見えてきます。現代のレンズとは対極にあるレンズと言えるかもしれません。この個体も例外ではなく,収差が多く残っており,いくらピントを合わせてもあってるのかどうかわからないくらいに滲みます(光路の調整が正しくない可能性も濃厚ですのでなんとも言えませんが)。しかしRoeschleinのレンズとしてはこれが普通だったのかもしれません。絞り環のねじ込み位置がおかしいようで絞りの指標と目盛があっておらず設定している絞り値がよくわからない,という問題はありますが,とりあえず写真を撮るには問題はありません。 撮ってみると,もちろんピント面でもあまり解像していません。そもそも高画素のカメラで撮って等倍で見るようなものではありません。しかし,普通に鑑賞する分にはなぜか解像感や立体感があるように錯覚してしまうのです。戦後すぐまでのCarl Zeissのレンズのような見るものを引き摺り込むような説得力はもちろんないのですが,こと自然さ,という点では意外にも相通じるものがあるように思います。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/TELENAR%201%3A5.6%2F13.5cm に置いています。 #レンズ #MF #TELENAR #M39 #Roeschlein_Kreuznach #Paxette #135mm #F5.6 #望遠 #単焦点
MFレンズ Paxette M39 Roeschlein KreuznachMOR
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Tamron 80-210mm F4.5-5.6
TamronのModel 278Dです。20世紀の最後くらいに発売されたレンズだと思われます。まだこの頃はTamronもPentaxマウントのレンズを作っていました。重さがたったの281gという軽い望遠ズームです。望遠端が200mmではなく210mm,広角端が70mmではなく80mmで,最初からニッチ狙いかと思わず邪推してしまう微妙なスペックです。 21世紀に入ってカメラがデジタル化して,等倍で見るとレンズの解像度がとても気になり出した頃のレンズです。21世紀のはじめごろにPentaxのFAスターレンズが次々にディスコンになっていましたが,FA 85mm F1.4がついにティスコンになるという話を聞いtあわてて中野のフジヤカメラに走ってなけなしの小遣いをはたいて流通在庫を確保しました。そのときに,売り場に新品なのに2000円くらいで山積みされていたのがこのTamronの278Dでした。 85mm F1.4を買うつもりで来ているので金銭感覚が麻痺していますから2000円なら激安だよな,と思ってなぜか勢いでいっしょに購入したように記憶しています。実際,いくらなんでも2000円は安すぎるというか,もはや根がついていないのと同然でした。お店の人になぜこんなに安いのか聞いたら,デジタル時代になったのでフィルム時代の甘いレンズは売れないからだ,という説明でした。安いのでとりあえず買っとけ,とそのときは思って買ったと記憶しています。 しかし,予想通り,その後,一回も使った記憶がありません。実際,使っていないんだと思います。最近,防湿庫から発掘されました。15年以上経過しているため,ゴムのローレットは加水分解で白くなっています。実用上の不都合は何もないのですが,いかにも放置されていた感が満載の外観です。レンズ構成も単純で,プラスチックの鏡筒ということもあって驚くほど軽量です。言い換えればチープ感が全力で漂っている,ということですが,これはこれで旅行に持っていくというような目的には十分であるように思います。 #レンズ #AF #Tamron #PKAF #PK #80-210mm #F4.5-5.6 #望遠 #ズーム
AFレンズ PKAF TamronMOR
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SUPER ROKKOR 5cm F1.8
千代田光学精工(のちのミノルタ)は1947年にバルナックライカコピーの35mm判レンジファインダーカメラMinolta-35Aを市場に投入します。フィルムは35mm判でしたが,撮影範囲は24x32mmのニホン判が採用され,そのときの標準レンズは「梅鉢」の名で知られるChiyoko SUPER ROKKOR C 45mm F2.8でした。その後,いくつかのモデルを経て1958年にMinolta IIbで24x36mmのライカ判が採用されますが,このモデルがミノルタの最後のレンジファインダー機となります。 SUPER ROKKOR 1:1.8 f=5cmは1957年か1958年に登場したと考えられていますが,某所での考察によるとMinolta IIbの前年の1957年に市場投入されたと考えられるとのことです。これは,ミノルタ独自の複層膜コーティングであるアクロマチックコーティング(AC)が実用化されたタイミングが1958年で,かつ,SUPER ROKKOR 1:1.8 f=5cmにはACによるコーティングが施されていないことから推察されています。 いずれにしても,SUPER ROKKOR 1:1.8 f=5cmは千代田光学がリリースした(ほぼ)最後のL39マウントレンズであったことは容易に想像できます。このモデルの前,おそらく1954年ころには梅鉢の上位の高速レンズとして5cm F2の標準レンズがリリースされています。しかし,このF2のレンズはかなりの暴れ玉のようです。一方のF1.8はよく写るレンズという定評に加えて,販売期間が短かったこともあって,千代田光学がライカコピーの最後を飾るレンズとしてそれなりの人気があるようです。 私は普通の人なので暴れ玉の5cm F2ではなく普通に写るであろう5cm F1.8を探していましたが,それなりによいお値段のためなかなか手が出ませんでした。結局,価格の誘惑に負けて絞り羽に少し油染みのあるあまり状態の良くないものを入手しました。このレンズはダブルガウス型の第2群の張り合わせレンズを二つにわけた5群6枚構成であり,Carl Zeisのウルトロンと似たような構成です。 撮ってみると確かに解像感が高く,絞ればかなりかっちりとした像を結び,よく写るという印象です。ただ,ハイライトが簡単に飛んでしまうようなところがあるように私には感じられます。そのため,陽の光を受ける金属面などがのっぺりしてしまい金属の質感が感じられなくなる場合がありました。その一方で,ハイライト以外では階調が豊かで陰影のある木の表面などの質感表現はたいへん優れていると感じます。 ところが,暗部よりも明部のほうが粘る,という意見もあるようで,そのあたりは被写体のどこに注目しているか,によって感じ方が異なるのかもしれません。いずれにしても,被写体を選ぶようなところが無きにしも非ずなのですが,よく写るか,と問われれば定評どおりよく写るレンズだと思います。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/SUPER%20ROKKOR%201%3A1.8%20f%3D5cm に置いています。 #レンズ #MF #Super_Rokkor #L39 #Chiyoda_Kogaku #Minolta #50mm #F1.8 #標準 #単焦点
MFレンズ L39 Chiyoda KogakuMOR
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STAEBLE-LINEOGON 35mm F3.5
STAEBLE OPTIKは日本ではあまり馴染みのない光学メーカーですが,ドイツ語のwikipediaによると(機械翻訳を使って読んでみた),1908年にFranz Staeble博士によって創立されています。第二次世界大戦中はドイツ空軍のための光学機器を作っていたようですが,終戦後はプロジェクタ用レンズやカメラレンズを作っていたようです。Stableが作ったカメラ用レンズのなかではPaxette用のレンズはそれなりに多く作られたようです。第一世代のPaxetteに付けられた固定レンズや第二世代のレンズ交換式Paxette用のM39マウントのレンズも種々作られています。 このレンズはM39マウントの第二世代Paxette II用の交換レンズである焦点距離が35mmのSTAEBLE-LINEOGON 1:3,5/35です。Paxette用レンズとしてはもっとも広角をカバーするレンズだったと思われます。当時は(現在もそうかもしれませんが),広角よりは望遠のほうが需要が高かったのでしょう。某サイトの解説によれば,3群3枚のトリプレットに第1群を追加して焦点距離が35mmとなるように調整した4群4枚の「変形トリプレット型」ということです。4群4枚といえば条件反射的にエルノスター型を思い浮かべてしまいますが絞りの位置が異なりますし,エルノスター型は望遠レンズ向けであることを考えると,広角レンズの基本設計としてトリプレットをベースにしたと考えるのは合理的であると思います。 コンパクトなレンズで,コンパクトなカメラであったPaxetteによくマッチしています。この個体は整備済みで入手したものです。第二世代Paxette用レンズのなかでも早い時期のモデルのようで距離計には連動しません。 フランジバックの調整のために5mm厚のリングがマウントに固定してあります。ライカのL39マウントのLeica Mマウントに変換するL-Mリングを介してLeica M用の接写リングを挟んでLeica Mマウントカメラに装着するか,さらにライカMレンズを変換するアダプタを挟んでミラーレス一眼に装着することで撮影が可能です。マウントアダプタを間にたくさん挟むため,個々のアダプタの誤差が累積して無限遠がうまく出ない,ということになりがちですが,この個体はそのあたりも調整されています。モノクロ時代のレンズらしくモノクロで撮影した場合には滑らかな階調表現をする印象です。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/STAEBLE-LINEOGON%201%3A3.5%2F35 に置いています。 #レンズ #MF #LINEOGON #M39 #Stable_Optik #Paxette #35mm #F3.5 #広角 #単焦点
MFレンズ Paxette M39 Stable OptikMOR
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Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
動物瞳AFが使ってみたくてSonyのα7iiiを入手しました。それ以前からα7sを古いMFレンズの母艦として使っていましたが,Eマウント用AFレンズは1本も持っていませんでした。動物瞳AFを使うためにはAFのレンズがなくてはなりません(当たり前)。なので,28-70mmレンズがついたレンズキットの中古α7iiiをヤフオクで調達しました。 動いている犬でもちゃんと瞳を追いかけるのはさすが,ですし,28-70mmは悪くはないのですが,よいというわけでもなくて,結局,Sony ZeissのSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAをこれまた中古で買ってしまいました。物欲には際限がありません。 SEL55F18Zは最初のフルサイズミラーレスであるα7とα7Rと共に発表された5本のレンズのなかの1本で,2013年12月に発売されました。フルサイズセンサーを積んだα7シリーズのキットレンズであるSEL2870と同世代ということになり,現時点からみるとかなり古いレンズになってしまいました。しかし,AFも写りもそんなに古臭くはなく,いまだに,第一線で戦えるレンズだと思います。 レンズ構成をみるとどこがSonnarなのかよくわからん感じです。かの有名なベルテレが発明したSonnarは3枚貼り合わせレンズがあってこそのSonnarだという思い込みが(私には)あるので,SEL55F18Zのレンズ構成図を見てもSonnarという感じはまったくしません。たんにSonnarという名前を使っただけなんじゃないか,という気もしますが,何をもってSonnarと名付けたのかは知る由もありません。 SEL55F18Zは開放から解像度が高くて,ボケも綺麗,というもっぱらの評判で,実際その通りです。日頃,古いMFレンズばかりつかているので,さすがに現代的なレンズなんだ,ということを改めて思いました。SEL55F18Zが発売された時には,一部で,解像度番長,と言う人もいたようですが,現在ではもっともっと解像感が高いレンズが数多くリリースされていて,SEL55F18Zの解像感はもはや特筆すべきことではなくなったように思います。とは言え,私自身にとってはSEL55F18Zは十分すぎる解像度を持つレンズだと思います。 SEL55F18Zで撮った画だけみているとあまりなんとも思いませんが(たんに私の感覚が鈍いだけかもしれません),他のレンズから吐き出された画と比較してみると,SEL55F18Zはやたらと色が濃くてこってりした画に感じられます。レンジファインダーのContax時代(Contax Cマウント)のオールドZeissのレンズはもっとさらっとしていたように思うのですが,世代を重ねて新しいシステムに移ろうにつれて濃い,というかねっとりとした雰囲気を纏うように感じられます。その最初の兆候はたぶん,Zeiss IconのContarexに見られ,Yashica (というか富岡光学)が生産した一眼レフのContaxでその傾向が強まった結果,Zeissのレンズは濃厚というイメーッジも定着したのかもしれません。最近のCosina Zeissは使ったことがないのでどういう感じなのかわかりませんが,Sony Zeissはヤシカ/京セラのContax/Yashicaマウント時代のZeissレンズのイメージを継承しているように思われます。 個人的には,どちらかというと,さらっとした感じのオールドZeissが好みです。しかしその一方で,このこってり風味のZeissもこれはこれで捨てがたいと思う自分もいます。結局,欲には際限はないということなのかと。 このレンズによる作例を https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Sonnar%20T*%2055mm%20F1.8%20ZA に置いています。 #レンズ #AF #SonyE #Sony #Carl_Zeiss #55mm #F1.8 #SEL55F18Z #標準 #単焦点
AFレンズ Sony E SonyMOR
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smc PENTAX-FA 50mm F1.4
ペンタックスの標準レンズです。50mm F1.4という標準の中の標準ともいえるスペックのレンズですが,このレンズの起源は,前回の東京オリンピックが開催された年から1年ほどした1965年にリリースされたSuper Takumar 1:1.4/50まで遡ります。初期のSuper Takumar 1:1.4/50は6群8枚構成でしたが,その後に登場した改良版からは6群7枚構成の変形ダブルガウス(ウルトロン)型となり,FA 50mm F1.4に至るまで基本的な設計思想は変わっていません。もちろん,ガラスの組成が変わったり,コーティングやフォーカシングシステムの違いにあわせて少しずつ変化していることは間違いありません。 オートフォーカスのフィルムカメラ時代のペンタックスレンズは距離環のトルクはスカスカだし,全体にプラスチッキーな感じだし,チープ感全開でしたが,このレンズもその例に漏れないいささか残念な仕様です。マニュアルフォーカスカメラ時代のMレンズやAレンズの方がレンズとしての存在感があったように思います。 設計が古いレンズならでは,というような典型的な昔風味の写りです。開放ではとても甘く,ピントの山がよくわからないくらいです。f2.8あたりまで絞ると画面中央の解像度があがり,f5.6まで絞れば画面全体で解像感が感じられる描写になります。オートフォーカスが使えますが,光学系から言っても,写りから言っても完璧にオールドレンズの範疇に入るレンズです。 このレンズによる作例をhttps://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/smc%20PENTAX-FA%2050mm%20F1.4 に置いています。 #レンズ #AF #smc_PENTAX-FA #PK #PKAF #Pentax #50mm #F1.4 #標準 #単焦点
AFレンズ PKAF PentaxMOR
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smc PENTAX-F 1:2.8 100mm MACRO
1984年末に登場したミノルタのα7000は本格的なAFを備えた一眼レフシステムとして業界をひっくり返すほどの衝撃を持って迎えられました。他社は全て,ミノルタを追う立場となり,Pentaxも総力を結集し,ミノルタに遅れること約2年,1987年に最初のAFフィルムカメラであるSFXを世に送ります。SFXではそれ以前のMFレンズ用の自動露出に対応したKAマウントに上位互換なKAFマウントを採用します。これにあわせてPentax-Fレンズシリーズを展開しました。 1991年にはAF第二世代モデルであるZ-10が登場し,マウントもKAF2に,レンズもPentax-FAシリーズに刷新されます。そのため,Fレンズは5年ほどの短命に終わってしまいます。 smc Pentax-F 100mm F2.8 MacroはFシリーズレンズとしてPentax最初の100mm等倍マクロです。生産期間はFレンズが展開された1987年から1991年までであったために,意外にもレアです。前世代のAEに対応したsmc Pentax-A 100mm F2.8 Macroが希少性ゆえに中古市場ではかなり高価で取引されています。しかし,どういうわけかF 100mm F2.8 Macroは同様に希少であるにもかかわらず,その希少性は価格にまったく反映されていません。 これは,AFをアピールするあまり,非常に狭い幅のMF用距離環が鏡筒先端にとりつけられており,いまひとつ高級感が感じられない鏡筒のデザイン(作りは決して悪くないのに),見た目以上に重いことなどネガティブな要素が多いことが原因ではないか,と想像します。 100mm F2.8の等倍マクロはAレンズから登場し,FレンズでAF化されるとともに光学設計も変更されています。その後,FA, D-FAへと時代とともに同スペックのレンズは変遷していきますが基本設計はFレンズのままです。その意味では,PentaxとしてはFレンズにおいて100mm F2.8 Macroはひとつの完成形であったのかもしれません。 この個体をいつ,どこで入手したのかまったく記憶にありません。おそらく,中古店でとても安い値段で投げ売りされていたことに惹かれて思わず買ったのに違いありません。当然のように,このレンズで何を撮ったのか,これといった記憶もありません。防湿庫の奥から発掘されて,そういえばこのレンズを買ったよな,ということだけを思い出しました。 Muuseoに展示するためにレンズの来歴を調べてみて,意外なレンズの背景を知ることとなりました。もはや写真を撮るという目的からは大幅に外れていますが,これはこれで楽しいかな,と。 #レンズ #AF #smc_PENTAX-F #PK #PKAF #Pentax #100mm #F2.8 #望遠 #単焦点 #マクロ
AFレンズ PKAF PentaxMOR
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smc PENTAX-DA 1:2.8 14mm ED [IF]
PentaxのAPS-Cセンサー用の超広角レンズです。発売時にはPentaxの超広角短焦点レンズとしては,もっとも広角でもっとも明るいレンズでした。 DA 14mm F2.8は2004年6月に発売されているので,デジタル一眼レフが本格的に普及し始めた頃の超広角レンズということになります。smc PENTAX-DAシリーズのレンズはデジタル一眼レフに対応した高解像度のレンズという位置付けですが,当時のカメラのセンサー画素数を考えると2020年代のレンズと比較するのはちょっと可愛そうです。2004年はPentaxからはAPS-Cサイズのセンサーを搭載したデジタル一眼レフとしては2世代目,610万画素の*istDSが市場に投入された年です。 APS-C専用の単焦点レンズとしては大きく重く,その後,2013年に登場したHD PENTAX-DA 15mm F4 ED AL Limitedが1段暗いものの小さく軽く,コーティングも進化していてDA 14mm F2.8の立ち位置は微妙になりました。さらに,2021年には35mm判換算21mmの画角としてはフルサイズ用のHD PENTAX-D FA 21mm F2.4 ED Limited DC WRが登場したことで,もっとも明るい単焦点レンズの座を明け渡すことになりました。 DA 14mm F2.8は大きく重い,ということに加えて,手持ちのAPS-CカメラがK-7で,ファインダーのキレがイマイチであったため超広角ではピントがつかみにくく,あまり持ち出しませんでした。本当はカメラのせいじゃなくて,横着だっただけなのですが。 さすがに古い時代のレンズらしく開放は甘いですが,当然のように絞れば普通に写ります。このレンズが登場した当時はこれが普通でしたし,特に不満もありませんでしたが,2020年代の開放からカリカリに解像するレンズばかり見ているとずいぶんと見劣りします。とはいえ,PKマウントのAPS-C用レンズとしては他に代わるものがありませんから,文句を言わずに使う,が正しいのだと思っています。 #レンズ #AF #smc_PENTAX-DA #PK #PKAF #Pentax #14mm #F2.8 #広角 #単焦点
AFレンズ PKAF PentaxMOR
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smc PENTAX-D FA 50mm F2.8 MACRO
Pentaxのデジタル,かつ,フルサイズ対応のマクロレンズです。2004年10月頃の発売だと思われます。Pentaxのフルサイズの一眼レフカメラは2016年4月発売のPentax K-1が最初のモデルですので,50mmマクロがなぜデジタル対応のフルサイズ向けとして,しかも2004年と云うかなりはやい時期に発売されたのか,謎です。2009年にはフルサイズ対応のデジタル向けマクロレンズであるD FA 10mm F2.8 macroも発売されていますが,いずれにしても2015年のCP+でK-1のプロトタイプが発表されるまで,フルサイズのセンサーを搭載したPentaxの一眼レフカメラはオフィシャルには存在しませんでした。 フルサイズセンサーのカメラの開発についてはMZ-S (フィルム一眼レフ)ベースの600万画素 のセンサーをもつカメラが2000年のフォトキナで発表されていますが,あまりにも高価になりすぎるという理由で2000年10月には開発自体の中止が発表されています。それにもかかわらずフルサイズ対応のマクロレンズを市場に投入してきた,ということはたぶん,フルサイズセンサーの一眼レフカメラの発売を真剣に考えていたのだと思われます。しかし,2008年にはHOYAに吸収合併され,さらにはカメラ部門のみが2011年10月にリコーに買収されて経営が迷走します。HOYAが欲しかったのはカメラ事業ではなかったはずで,リコーがPentaxのカメラ事業を買収したことは伝統あるPentaxのカメラ事業を生きながらえさせることにつながったため,結果としてよかったと思いますが,2000年代後半のPentaxはフルサイズの一眼レフどころではなかったことは容易に想像できます。 そんななかで将来のフルサイズ・デジタル一眼レフカメラを見据えてリリースされたこの50mm F2.8マクロにはPentaxの意地を感じさせるレンズだと思います。2022年時点で発売から既に17年近くが経過していますが,まだ現行モデルとして現役です。 小型軽量でありながら等倍撮影が可能で,近接から無限遠まで安定した性能のフローティングシステムの採用,AFの合焦後にMFが可能なクイックシフト・フォーカス・システム,ピント位置を固定するためのフォーカスクランプといった,多くの機能が盛りこまれており,開発時のPentaxの意気込みが感じられます。Aポジションつきの絞り環も装備されているので古いフィルムカメラでも使えます。というよりも,2016年にK-1が発売されるまでは,むしろ,フルサイズのイメージサークルを活かせるのはフィルムカメラしかありませんでした。 とても小さく軽いにもかかわらず19.5cmの最短撮影距離で等倍撮影ができますが,レンズが大幅に繰り出すため,被写体とレンズ先端の距離は5cmほどになります。フードが付属していますが,19.5cmまで寄るとレンズ前玉がフード先端とほぼ同じ面まで繰り出しますので,フードとしてはまったく機能しません。フードは横からの衝撃や被写体との衝突からレンズを保護するためのもの,という役割を期待されているように思えます。もちろん,風景などの遠景を撮る場合には,レンズの繰り出し量が小さいのでフードは正しくフードとして機能し,とても有効です。 ほどよいコントラストと色のり,近接から無限遠まで安定した描写など,古いレンズですが現在でもじゅうぶんな性能のレンズです。フィルム時代の標準レンズであるFA 50mm F1.4がオールドレンズ風味であるのとは対照的に現代的なレンズと言ってよいと思います。とはいえ,カリカリの解像度というわけではないので個人的にはとても気に入っています。こちらの展示物の写真のなかにはこの50mm F2.8 macroをPentax K-1 Mark IIにつけて撮ったものも少なからずあります。 このレンズによる作例を https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/smc%20PENTAX-D%20FA%2050mm%20F2.8%20Macro に置いています。 #レンズ #AF #smc_PENTAX-D_FA #PK #PKAF #Pentax #50mm #F2.8 #標準 #単焦点 #マクロ
AFレンズ PKAF PentaxMOR
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smc PENTAX-A MACRO 50mm F2.8
smc PENTAX-Mレンズの後継として絞り環にAポジションが追加され,電子接点も追加された世代のレンズで1984年に登場し,AFのSFXが登場した1987年の翌年,1988年にsmc PENTAX-F MACRO 50mm F2.8に交代します。このAレンズの50mm F2.8マクロはハーフマクロ(0.5倍)ですが,前世代のMレンズまでの50mmマクロはF4のハーフマクロ,後継のAFに対応したFレンズ以降の50mmマクロはF2.8で等倍マクロです。 したがって,50mm F2.8のハーフマクロはPentaxではAレンズだけしかありません。レンズ構成も先世代,後継機とも異なる4群6枚構成です。普通は4群6枚といえばダブルガウス型のレンズ構成を想像しますが,後群の第3群が張り合わせではなく,第4群が凹凸の張り合わせで,クセノター型を想起させる構成です。製造期間がわずか4年で,かつ,同型のレンズが全くない,という意味で希少種なのですが,特に写りがよいというようなこともないので,たいして注目されていなくて,中古の価格もたいしたことはありません。同世代のsmc PENTAX-A 100mm F2.8 MACROが希少品として特別な扱いをうけているのとは対照的です。 レンズの距離環のテーパー部分にレンズ銘を刻印するAレンズのデザインは個人的にはかなり違和感がある,というか端的に言えば,あまり好きになれないのですが,後継のAFレンズに比べるとずっと「普通のレンズ」っぽい(私の基準で)ので許容範囲です。 どうしても等倍撮影が必要という事情があったためにD-FA MACRO 50mm F2.8を入手したため,ハーフマクロのsmc PENTAX-A 50mm F2.8の出番がなくなってしまったのですが,モノとしてはとてもよいレンズだと思います。 撮影倍率が1/2でも撮影対象において特に問題がなくて,かつ,マクロなら普通,MFだよね,という(非常にニッチな)人にとってはMFのフィーリングもよく,開放F値も明るくて唯一無比のレンズだと思います。そういう私は安直にsmc PENTAX-D FA 50mm F2.8 MACROを使ってます。 https://muuseo.com/MOR/items/85?theme_id=30044 #レンズ #MF #smc_PENTAX-A #PK #PKA #Pentax #50mm #F2.8 #標準 #単焦点 #マクロ
MFレンズ PKA PentaxMOR
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smc PENTAX-A 50mm F1.2
旭光学は1984年にプログラムAEを含む自動露出に対応したPENTAX Super Aを登場させるとともに自動絞りに対応したsmc PENTAX-Aレンズもラインナップします。Aレンズはマウントの物理形状はそれまでのKマウントから変更はされていませんが(というか,現時点でのデジタル一眼レフの最新モデルであるK-3 Mark IIIまで変更されていません),絞り情報を伝達するための電気接点が追加され,KAマウントとなります。 このとき,50mm F1.2もリニューアルされます。レンズ構成は前モデルを踏襲して6群7枚の拡張ウルトロン型ですが,レンズの曲率などは再設計されているようです。また,絞り羽は前モデルの8枚から9枚に変更されています。フィルムの一眼レフカメラがAF化されてMFのAレンズが少しずつ整理されていく中で50mm F1.2だけは旭光学の一眼レフ用のもっとも明るいレンズとして生き延びます。2000年にはPENTAX LXの特別バージョンが発売されますがその際に標準レンズとしてシルバーの50mm F1.2がセットされます。シルバーの50mm F1.2はLimitedシリーズを彷彿とさせる意匠で高級感のあるものでした。 標準モデルの50mm F1.2はその後も生き続けます。デジタル一眼レフの時代に入ってもカタログに残っていましたが,2011年頃にカタログから消えたようです。27年にわたるロングセラーだったことになります。MFレンズなのでもちろんAFは使えませんが電気接点も絞り環もあるので,歴代のあらゆるKマウントカメラで使うことができるオールマイティなレンズです。F1.2で少し大柄ですが,最近の肥大化したレンズと比較すればむしろコンパクトと言ってもよいと思います。 作例を以下においています。 https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/smc%20PENTAX-A%2050mm%20F1.2 #レンズ #MF #smc_PENTAX-A #PK #Pentax #50mm #F1.2 #標準 #単焦点 #大口径
MFレンズ PKA PentaxMOR
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smc PENTAX 135mm F2.5
旭光学の135mmはM42マウントのTakumar時代から大口径F2.5のレンズがラインナップされていました。M42からKマウントへ移行した際に,マウントだけ変えてTakumar時代のものが引き継がれて1975年にKマウント版135mm F2.5が登場しています。Kマウントのごく初期にはsuper multi coatedを意味するsmcを大文字で表記していたようで,135mmレンズの銘板にも「SMC PENTAX 1:2.5/135」と刻印されていました。これが前期型です。 その後,SMCをsmcと表記するようになって銘板の刻印も「smc PENTAX 1:2.5 135mm」となった後期型が1977年に登場します。また,焦点距離の表記にmmがつくようになっています。 光学系は前期型も後期型も6群6枚で,レンズ構成に変化はありません。各エレメント(レンズ)の形状は微妙に変わっているのかもしれませんが細かいことはわかりません。大口径中望遠レンズとはいえ公称で500gあり,かなり大柄なレンズです。 手持ちの個体は銘板の刻印から後期型です。プラスチック製の純正フードがついています。このレンズをいつどこで入手したのかまったく記憶がありません。たぶん,1990年代の後半に東京出張のついでに中古カメラ店にぶらっと寄った際に,二束三文で売られていて思わず買ったのだろうと思います。実測で483gと公称値よりは少し軽いのですが,重いことに変わりはありません。ガラスの塊のような存在感は素晴らしいと思いますが,その重さゆえに入手してから一度も使った記憶がありません。しかし,存在感はあるので手元にこのレンズがあるという記憶は鮮明でした。最近,はじめて,それも今さらのようにフィルムカメラのPENTAX LXにつけて使ってみました。今のレンズのような解像感はもちろんなくて柔らかい画で,ちょっと懐かしい気分になりました。よくも悪くもオールドレンズ感満載ですが,個人的にこういう写りは好きだったりします。 作例を以下においています。 https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/smc%20PENTAX%20135mm%20F2.5 #レンズ #MF #smc_PENTAX #PK #Pentax #135mm #F2.5 #望遠 #単焦点 #大口径
MFレンズ PK PentaxMOR