「ボヘミア中部のシルル系」について

初版 2024/01/08 13:06

改訂 2024/01/13 13:50

ジョアキム・バランドの著作「ボヘミア中部のシルル系」は三葉虫好きの間ではよく知られております。
というか、三葉虫好き以外でこの本の存在を知っている人がいたらむしろ驚きであります。
これの第一部「三葉虫」だけが、どういうわけか長い間ネット上になくて、いったいどうなっているのかと思っていたら、いつのまにか上がっていました。
これでようやっと「シルル系」の全貌が明らかになりました。

それを見渡すと……いやはや、おそろしい。
著者の生前に21巻が出て、それだけでも厖大な量ですが、死後にはお弟子筋の方々が補筆して刊行されたのが5巻あります。

その内訳を下に書いておきますと、

1852年に出た第一部「三葉虫篇」が1巻、1000ページになんなんとする大著です。
1872年にはそれの補遺と図版集が出ております。

第二部は「頭足類篇」で、1865年から1877年までに、じつに11巻が刊行されています。
そのうち本文が6巻、図版集が5巻という内訳です。

第三部は「翼足類篇」で、1867年に本文と図版集を合せて1巻で出ています。

第四部は、著者の死後出版で、Jaroslav Perner という人の筆になるもの。「腹足類篇」となっており、1903年と1907年に、本文と図版合せて2巻で出ました。

第五部は「腕足類篇」で、1879年に本文と図版と合せて2巻で出ております。これはバランドの著。

第六部は「無頭類(二枚貝)篇」で、1881年に本文と図版集が4巻で出ました。これもバランドの著です。

第七部は「海林檎篇」。これは死後出版で、1887年に W. Waagen という人が本文図版合せて1巻で出しております。

第八部は「蘚虫類・花虫類篇」で、やはり死後出版、1894年と1902年に Philippe Počta とい人の手によって本文・図版集2巻が刊行されました。


     * * *


第二部以降もほとんどが500ページ前後の大著であり、「三葉虫の謎」の著者フォーティは、「ロンドンの自然史博物館の稀覯書室で、特別に認められた訪問者は、一つの本棚を占めるそれぞれが電話帳よりも大きい大型本、バランデが生涯をかけた苦労の成果『ボヘミアにおけるシルル紀の地層』を閲覧することができる」と書いています。

こんにちでは特別に認められた訪問者でなくても、ネット上でこれらの著作を閲覧することができます。
興味のある方は、下記のリンク先からどうぞ。

https://www.biodiversitylibrary.org/bibliography/14776

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ktr

鉱物と化石の標本を集めています

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    Trilobites

    2024/01/10 - 編集済み

    正しく大著ですね。一つ一つの図版にも手が込んでいて、今ならPCでソフトウェアを駆使して描けるでしょうが、どれだけ手が掛かっているんだと思います。私は500部限定再販で入手しましたが、こうやってPDFで閲覧可能なのは、助かりますね。以前、入手可能な初版を見つけたのですが、高額で少し悩んでいるうちに売れてしまい、後悔した記憶があります。

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      ktr

      2024/01/11

      1852年といえば、日本では江戸時代ですからね。
      そんな時代にこういうものが出たというのがもう驚異です。
      1000ページの第一巻なんて古書の世界でもめったに見られない稀覯本ですから、私なんかにはとても手が届きません。
      それだけに、ネットで見られるようになったのは悦ばしいかぎりです。

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    trilobite.person (orm)

    2024/01/12 - 編集済み

    実は未だに、私は書籍でこの図版を持っておらず(そして何より、じっくり読んでおらず)、いち三葉虫ファンとして後ろめたい心持ちになります。自身のにわか感が、どこまでも拭い切れないとでも言いますか。いずれにせよ、こんな価値のある本がweb上で閲覧できるのは素晴らしい事ですね。

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      ktr

      2024/01/12

      私も深く読み込んでいるわけではないので、やっぱりにわかですよ。
      それにこの手の本はパラパラ読みにこそ適しています。
      そして、ボヘミア三葉虫研究の古典として、この本以前にハヴレとコルダの「プロドローム」というすばらしい本があります。
      これもネットで閲覧できるので、ぜひ。

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    • 中々ヒットせずも、バランデ先生から辿ってやっと出てきました。Prodrom einer Monographie der böhmischen Trilobitenという本ですか、google booksで読めました。
      最後の方のページの、種々の三葉虫の図版だけざっと眺めてみましたが、19世紀の(とりわけこの地域の)こういった絵というのは、実物や写真とはまた違う趣で、見ていてワクワクするものがありますね。面白い本を有難うございます。

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    • 連投ですいません。
      上の本の図の、Taf.Ⅶ (スファエレクソクスやディクラノペルティスの図が載っている、一番最後の方のpage)のハルペス(種名はHarpes ungulaと読める) の尾部が、面白い事になっていますね。
      尻すぼみの尾部の先、他の地域の類似種を参考にすれば本当なら何もないはずですが、何やらhypostomaをひっくり返したような二又の構造がついています。流石に復元ミスでしょうか。面白くてコメントしたくなりました。

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      ktr

      2024/01/13

      さすがに、おもしろいところに目をつけられますね。
      この図はバランドもおや?と思ったらしく、その箇所にマークをつけています。
      「尾部はハヴレ氏の観察にもかかわらずコルダ氏によって想像されたか?」と書いてあるようです。

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    • なるほどですね、バランド先生が指摘ずみでしたか。
      画蛇添足とはこの事かと思いつつ、コルダ氏が想像を膨らませてしまいたくなる欲望もわかります。
      疑問が氷解しました、お聞きしておいて良かったです。

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      ktr

      2024/01/13

      そういえば、ダドリーのフェイク三葉虫として有名な(?)「眼柄のあるカリメネ」の実物がケネディ氏の本に出ていましたね。
      あれを見たときはあっと驚きました。
      ハヴレとコルダのハルペスも、もとの標本が残っているなら見てみたいものです。

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