レプリカの効用
初版 2024/01/01 10:03
改訂 2024/01/05 18:22
そういえば先日久しぶりにオークションで一件落とした。
ケネディさんのところで出ていた生痕化石。
それはまだ届かないが、クルジアナと呼ばれる、三葉虫の足跡みたいなものだ。
ほとんど競ることもなく落とせたのは、それだけ魅力の乏しいものだったからだろうか。
そうともいえるが、このタイプのクルジアナは私には懐かしいものだ。
というのも、かつてそれのレプリカを手に入れたことがあるからで、そのレプリカはもう破損してしまって手元にないが、同タイプのものをネットで見かけて、懐かしさのあまり入札、そのままあっさり落札の運びとなった。
調べてみると、クルジアナにもいろんなタイプがあるが、このウェールズで産するものはあまりネットに画像が上っていない。
それは一見したところ、植物化石のようにもみえる。
そして、サンプル画像で見るかぎり、かつてのレプリカと色合いや質感が瓜二つなのである。
これほどレプリカに酷似した本物が出てくるとは思わなかった。
いちおうそれだけの話だが、ついでだから、レプリカについて少し書いておこう。
数年前に三葉虫のレプリカのまとめ買いをしたことがあるが、その中に含まれていたダイフォンが目当てで買ったので、それ以外のものはほとんど手放した。
しかし、ごく少数のものだけは手放さずに取っておくことにした。
その中に、カリメネ・ブルーメンバキがある。
このカリメネ・ブルーメンバキというのは、カリメネの中のカリメネともいうべき存在で、英国のシルル系で産出する古典的な三葉虫だ。
私も昔から名前だけは知っているが、実物にお目にかかる機会はなかった。
ダドリーという産地がすでに閉鎖されて久しく、世にある標本は愛好家のキャビネットに収まっているのがすべて、という状態だったからだ。
まあそれでもいろいろとネットやら書籍を漁っているうちに、ブルーメンバキの画像だけはどうやら披見することができた。
実物も岐阜の企画展で見ることができた。
ところが、である。
それらすべてを合わせてみても、これがブルーメンバキだ、という明確な形が頭のなかで像を結ばないのだ。
図鑑、ネットの画像、実物標本、そのどれもがブルーメンバキの同定に役立ってくれないというのはどうしたことだろう。
そうこうしているうちに届いたレプリカの山のなかに、ブルーメンバキの延びたのと丸まったのを見つけたとき、私のなかで一切の疑問は氷解した。
これがブルーメンバキだ、という明確な理解が、このふたつのレプリカによって直観的にもたらされたわけである。
こうなるともうブルーメンバキを他のカリメネと取り違えるおそれはない。
というわけで、レプリカが教材として扱われることが多いことの意味が、実物教育という言葉とともに、みずからの体験として了解できたのだった。
Trilobites
2024/01/01 - 編集済み例え精巧なダイフォンであってもレプリカは、やめておこうという私の方針は、ktrさんの一連のレプリカ購入後に急速に三葉虫収集熱が冷めてしまった事例を目の当たりにし、これで満足してしまうと三葉虫収集の概念が揺らぐ事が、自身にも及ぶ可能性を否定出来なかった出来事があります。例え幻で入手不可能と分かっていても、目標をおいておかないと収集は終了してしまいますからね。
ktr
2024/01/01レプリカにもレプリカなりのよさがありますが、あくまでも代用品なので、ほんものとは比べ物になりませんね。
そこをちゃんと理解していれば、かつての私のように混乱することもないと思います。
三葉虫以外では、たとえば恐竜の牙とか爪とかですと、私にはレプリカでじゅうぶんです。
ロシア産のヘリコプリオンなんて、インテリアとしても最高ですね。
trilobite.person (orm)
2024/01/04 - 編集済みブルメンバキの、特に防御姿勢のレプリカなどは、写真だけで見ればほぼ本物とそう遜色ないように見えますね。かつてダイフォンのレプリカをktrさんのブログで見かけた際、私には本物と区別がつきませんでした(ダイフォンは本物自体が作り物っぽいという問題もあるかと思いますが)。
この辺りを突き詰めていくと、高額な本物の標本を購入する意味とは?というような疑問が湧いてきてしまいます。自然物である化石は、まだ真贋がつきやすい方だと思いますが、人工物のコレクター(絵画なり陶器なりの美術品)の方々は、そのあたり、どう折り合いをつけているのかがちょっと気になります。
ktr
2024/01/05化石のレプリカは軽いのでほんものと間違うおそれはないですね。
教材と謳っているいるかぎり害はないですし。
問題は精巧なフェイクとかイミテーションでしょうけど、そのあたりのことは私にはわかりません。
騙したり騙されたりはあまりしたくないな、と思うくらいですね。
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