笑ゥせぇるすまん「コレクター」

初版 2023/08/13 11:54

改訂 2023/08/21 17:52

動画サイトのおすすめにあがってきたもの。
これを見てちょっといろいろ思うところがあった。

まず、コレクターがコレクションを続けているのは、興味が持続しているからというより、いまやめてしまったら、これまでのコレクションが無駄になってしまうんじゃないか、という不安に駆られてのことかもしれない、ということ。
じっさいのところはどうなのかわからない。
私は真性のコレクターではないし、そこまでコレクションが拡大しているわけでもないからね。

次に、手持のコレクションをすべて手放しても手に入れたい、究極の一品が存在するか、ということ。
私の場合でいえば、手持の三葉虫すべてと交換してダイフォンを手に入れる、ということになるだろう。
もっとも、私の手持のすべてを集めたって金額的にダイフォンに釣り合うわけではないので、現実味はない。
しかし、大コレクターの場合でも、そのすべてを投げうってでも手に入れたい究極のアイテムが存在するのかどうか、私には興味がある。

次に、そうやって手に入れた究極のアイテムが、それだけではたしてコレクションと呼べるのかどうか、という疑問だ。
どんなに優れたものでも、一品だけ持っている人を、私はコレクターとは呼びたくない。
コレクションには複数性が不可欠なのではないか、と思う。
動画の主人公は、究極のアイテムを手に入れて、コレクションからはすっかり足を洗い、ただその一品だけを愛でて人生を充実させている。
しかし、私が思うに、その窮極のアイテムの周囲には、いつのまにか同類が集まってくるのが不可避ではないだろうか。
コレクションをやめるどころか、そこから新たなコレクションが始まるような気がする。

最後に、人は該アイテムが贋物(コピー)であっても、そうと知らなければ、幸せになれるだろうか、という問題がある。
これはもちろん「然り」だろう。
本物と区別のつかない贋物は、本物として通用する以外にない。
所有者自身がそう信じて疑わない場合はなおさらだ。
騙されたまま一生を送るというのは、はたから見れば気の毒千万だが、当人は幸せな夢を見ているわけで、それはそれで幸せな一生だといえるだろう。

と、こんなことを考えながら見ていた。

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ktr

鉱物と化石の標本を集めています

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    Trilobites

    2023/08/15 - 編集済み

    三葉虫の魅力の一つに形態の多様性がありますので、全コレクションと引き換えにDeiphonが入手できたとしても、私だったら満足できないと思います。

    これはコレクションが一つだけでは体をなさいという事ではなく、例えば同じ化石分野の恐竜を収集していたとして、Tyrannosaurus rexの完全体全身骨格が入手できたとしたら、多分それだけで満足となるでしょうから、分野によりけりなんだと思います。勿論、価格や大きさ、認知度などが比較できないのもありますが、三葉虫には、これぞ頂点と思わせる種が一つだけではないと思うので、この辺りの差があるんでしょうね。

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      ktr

      2023/08/15

      三葉虫はとくにそうですけど、恐竜化石にしても、ひろく博物館ということで考えれば、Tレックス一体だけでは成り立たないので、コレクションの根本に複数性があるのは否めないと思いますね。
      それを説明するのに、「徳は孤ならず、必ず隣あり」と中国の古典を引っぱり出してみたり、あるいはコレクションの原型はハーレムにあるので、そこでは一夫一婦制は成り立たないんだ、と考えたりしております。
      私みたいにコレクションという活動そのものに興味が向いている人間は意外に少ないのかもしれませんね。

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    trilobite.person (orm)

    2023/08/21 - 編集済み

    私など他人のコレクションを見るのが好きなのですが、個々の標本を別個に見るよりも、陳列された標本群など、一定数以上の複数の集合標本を眺める際の方が、どうにもワクワクドキドキしますね。
    理由として、集合標本だとコレクターの嗜好・コレクションの方向性がわかり、そこに面白味を感じるからだとか、通り一遍の理由は思いつくものの、実際これが何故なのか、どうも言語化し難いものがあります。ミネラルショーが楽しいのも、根本に同じ何かがある気がします。
    三葉虫限定でいえば、この生き物の素晴らしい点の一つは、形態的にも生態的にも昆虫並みに極めて多様である事だと思っていますので、1〜数点のみのコレクションには、それがいかに希少な種であったとしても、コレクションとしての魅力は感じられないでしょうね。

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      ktr

      2023/08/21

      コレクションそのものの定義が「広くものを集めること」らしいので、至高の一品だけではやっぱりコレクションにならないですね。
      そしてこの場合の「広く」は、博物館や博物学の「博」と同義語なので、すべてのコレクションは究極的には博物館に通じているんだと思います。
      そういう見地に立ってコレクションを眺めるのが私には楽しいんですが、ormさんの嗜好に通ずるものがあるとすれば嬉しいですね。

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