半年ほど前に書いた文章が

初版 2023/07/02 09:10

改訂 2023/07/02 23:49

PC内に残っていたので、最近更新も滞りがちのこちらにアップしてみる。
まあ、たいしておもしろくもないですが。

以下本文。

化石の世界に舞い戻ってきたのは、いろいろと偶然が重なった結果だが、そうなるようにあらかじめ決っていた、という意味では必然の連鎖でもある。

思えば、一昨年の夏にヴェデキントの「パンドラの箱」を読んだのがその始めだった。

ルイズ・ブルックス主演の同名の映画を見てからは、古いサイレント映画一般に関心が拡がり、パブリック・ドメインのものばかり見て漁る日々が半年以上もつづいた。

そうしているうちに、映画のなかで俳優たちが、男も女もタバコを吸うシーンが頻出するのに気がついた。
私もかつては喫煙者だったので、昔買ったパイプを取り出して、ふたたび火を着けてみた。
ちょっとかれらの真似をしたみたくなっただけなのだが……

そこから一気に復煙、さらには手巻、シガリロ、シガーと、喫煙方法の模索がつづいた。
そして結果的にシガーがもっとも私の喫煙欲を充たしてくれるものであることを悟って、去年の5月ごろから本格的に葉巻の世界にのめりこんでいった。
そしてほぼ毎日、1時間から2時間、台所で換気扇を回しながら煙を吐呑しつづけた。

3か月も経ったころだったか、近所で異臭騒ぎがもちあがった。
どうも何か焼いてるような匂いがする。
気分のわるくなる人が出る。
窓が開けられない。
洗濯物が干せない。
そんな苦情の原因が、私の台所での喫煙にあることに、いやでも気づかされるはめになった。

私としても他人様に迷惑をかけてまで自分の楽しみを追求しようとは思わないので、台所での喫煙はやめて、二階の自室の窓を全開にし、ここを第二の喫煙場所にすることにした。

ところが、この部屋にはかつて買った化石標本や鉱物がいっぱい並べてある。
そういうものにタバコの煙がかかるのはなんとしても避けたい。
そこで標本のたぐいをすべて一階におろした。

しかし、もともと一階にそれらを置くスペースはない。
コンソールやキャビネットの上が化石で埋め尽くされてしまい、にぎやかにはなったが、落ち着いた雰囲気がかき乱されてしまった。

そこで、不要な標本を整理する必要が生じ、厳しい目で取捨選択して、かなりの数の標本を放出した。
そして残った標本は煙の害の及ばないよう、標本箱に入れて、さらに大型のデスクトレーに収納することにした。

ところで、そうやって手持ちの標本を放出する段になって、その説明文を書くためにいろいろと資料を参照したり、ネットで検索したりするうちに、皮肉なことに、化石への関心が再燃してしまったのである。

おそらく標本の処分という必要が起こらなければ、各標本はもとの居場所で心地よく惰眠をむさぼっていたに違いない。
私もことさらかれらに興味の目を向けることもなく、すべてはそこにあるものとして、日々の生活のなかに埋没していただろう。

というわけで、長くなったが、結局のところ喫煙場所を確保するために標本の整理を余儀なくされ、その作業の過程で、皮肉にも化石への関心が再燃した、というのがことの顛末だ。

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ktr

鉱物と化石の標本を集めています

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    Trilobites

    2023/07/02 - 編集済み

    興味が復活するタイミングには、幾つもの偶然が重なる奇跡が面白いですね。そもそも三葉虫に興味を持ち、更にコレクターになるための条件も、凄い奇跡だと思います。

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      ktr

      2023/07/02

      いったん興味を失ったものが復活することは、私の場合まずないんですが、三葉虫はわりとすんなり復縁できました。
      しかしそれも、こうやってお話できるつながりがあるからで、一人ではむつかしかったかもしれませんね。
      最近仕事の関係でちょっと更新できませんでしたが、またぼちぼち再開したいと思います。

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    trilobite.person (orm)

    2023/07/02 - 編集済み

    何がきっかけになるのか、分からないものですね。私も再開の発端の一つが引越し(にあたり標本整理の必要がある)でしたし、遠からず似た感じで再開に至ったのだなと思いました。
    仰る通り、私も1人では熱意が続かなさそうですし、つくづくネットがある時代で良かったなと思いますね。

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      ktr

      2023/07/02

      コレクションというのは、増やすにせよ減らすにせよ、動かすことが大切ですね。
      増減が止まってしまうと、その時点でほぼ終了となることが、今回の件でわかりました。
      それと、やはり同士の存在は大きいです。
      私みたいな、真正のコレクターでない人間にはとくに。

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