三葉虫の謎(7)

初版 2023/05/09 17:45

改訂 2023/05/09 22:45

ちょっと前まで、モロッコ産の三葉虫といえば、本体のみならず母岩にもはっきりした特徴があった。
それは何かというと、母岩の表面にエアツールでつけられた幾本もの条だ。
その条は、本体を中心に放射線状につけられていることが多く、場合によっては、いや私の経験でいえばほとんどの場合、母岩の裏面にもなんらかの形で条が彫られている。

これには何か意味があるのだろうか。
それがいまもって分らずにいる。

表側の条は、もし何か意味があるとすれば、標本の美観を高めるためにつけられたとみるのが妥当だと思うが、裏側の条にいたっては、美的な面からも、実用的な面からも、どういう意図でつけられているのか、皆目見当がつかない。

最近では母岩の処理も徐々に変りつつあるようで、ロシアの標本のように白くならしたのが増えてきたのは、個人的には好ましいのだが、モロッコ産ならではの野趣が稀薄になってきたようで、ちょっと寂しくもある。

Author
File

ktr

鉱物と化石の標本を集めています

Default
  • File

    Trilobites

    2023/05/09 - 編集済み

    デボン紀モロッコ産が代表的ですが、昔は技術や機材の面もあったのですが、化石自体が重要で、母岩は付随物程度の認識でしたので、美的というよりは、粗削りのままだったというのが正解かと思います。また補修や割れなどを隠す(カモフラージュ)する目的もありました。時が経ち、技術や機材の進化と共に収集家としても、補修をして完全に近づけるより、不完全でも自然な状態を好む価値観の変化があり、母岩を含めた美的センスがある標本が重宝されてきます。代表的なものがHammi氏の台頭だと思います。

    返信する
    • File

      ktr

      2023/05/09

      粗削りといわれればなるほどそのとおりで、それが一種のモロッコ印になっていたんでしょうかね。
      いちいちきれいに仕上げている暇もないくらい忙しい、という現場の事情もありそうです。
      数からすればいまでもそういうのが一般的で、極上の標本は一部のマニア向け、というふうに両極端に展開しているような気がしますね。

      返信する
  • File

    trilobite.person (orm)

    2023/05/09 - 編集済み

    母岩の処理の中にはユニークなものもあり、例えば三葉虫クラブは、母岩をツルツルに磨いたりしていましたね。Hammi氏の台頭でちょっと影が薄くなってしまいましたが、Horst Burkard氏なども、母岩の処理に多少の特徴があった気がします。

    条線入りの荒削りは標本自体が変に浮いてしまい、そう好みではなかったので、現在の風潮は有難いですね。特に、今Hammi氏は母岩の特徴のみならず、周囲の小さな化石(巻貝とか正体不明生物の断片など)も残すのがマイブームのようで、共産化石が好きな私は大歓迎なのですが、あれはともすると、人によっては好き嫌いがありそうです。

    返信する
    • File

      ktr

      2023/05/09

      そうでしたか、やはり名の通った人はそれなりの工夫をされているんですね。
      ハミーさんのもの、たしかにこれはやりすぎでは、と思うのもありますが、手元に置けば、意外と飽きのこない、味わい深い標本になりそうな気がします。

      返信する