ノビリアサフスについて
初版 2023/03/04 22:14
改訂 2023/03/09 18:55
最初にこの種に注目したのは、ジョアキム・バランドの1852年の図版集に出ている Asaphus nobilis の図を見たときだ。
1ページまるまる費やして描かれたその絵の威容は圧倒的だった。
この Asaphus nobilis に Nobiliasaphus の属名が与えられたのは1965年のことで、命名者はチェコのプルシビルとヴァネク。
ここまでは順当な流れといえる。
ところが、その後なにか事情があって、今日ではチェコで産するものには Nobiliasaphus の名称は使われず、かわりに Opsimasaphus という名称が使われている。
正式名称は Opsimasaphus (Nobiliasaphus) nobilis nobilis とのこと。
Opsimasaphus はもともとデンマークで産出したアサフスに付けられたもので、なぜこれがチェコのアサフスに転用されたのかは不明だ。
そうこうするうちに、Nobiliasaphus という名前だけが大陸を横切ってフランス、スペイン、ポルトガルに西漸し、それらの地で産出するアサフスの名前として使われるようになった。
だからこんにち Nobiliasaphus といえば西ヨーロッパ産のものに限られると思って間違いない。
ざっとそういう経緯があるので、私としては西ヨーロッパ産のものの中にもチェコ産の面影を認めたいという、淡い願望がある。
なにしろチェコの標本などこんにち求めるべくもないのだから。
そういっても、チェコのノビリアサフスの標本が皆無というわけではなく、日本にも入ってきている。
東大のクランツ標本のコレクションのなかの、化石標本リストのF-39がそれで、Asbplus nobilio という謎の名前になっているが、これは手書きのラベルの転記ミスによるもので、標本の写真をみても、それが Asaphus nobilis であることは明白だ。
trilobite.person (orm)
2023/03/05オンラインのクランツ標本のf-39をみてみましたが、確かに、Asbplus nobilioという変な名前になってますね。間違った名前なのに、逆によくこの標本の山からAsaphus nobilisを見つけられましたね。
この標本群、これまであまり気に留めた事が無かったのですが、誤記に気をつければ、古い産地の標本を調べる時に参照に出来そうです。
ktr
2023/03/05私は鉱物にも興味があるので、それで見ていてたまたま見つけたんだと思います。
古いクランツ標本はアンティークとしてもすばらしく、機会があれば手に入れたいですね。
Trilobites
2023/03/09 - 編集済みF39の写真みましたが、頬棘は無く、尾部は想像で書き加えられているので、ノビリアサフスとは気が付きませんでした。当時は、当たり前だったかもしれませんが、クランツ標本の幾つかの標本は、そんな状態の物も混ざっていますが、明治初期位の入手できる種類が何だってか、興味深いですね。
ktr
2023/03/09私はネットにある画像しか見ていないんですが、よくよく見ると、クランツ標本の三葉虫はすべて石膏製のレプリカのような気がしてきました。
F-36のトリメルス(?)なんか、ほぼ間違いなく作り物ですね。
いまでも博物館の恐竜の化石などはレプリカが基本ですが、昔は三葉虫でもレプリカが幅を利かせていたのかもしれませんね。