ヘッケルの著作「自然の芸術的形態(Kunstformen der Natur)」
初版 2024/04/03 20:55
改訂 2024/04/06 20:12
の一葉として描かれた三葉虫たち。
その図を見ていてはっとしたのは、そこにトリアルツルスが付属肢付きで描かれていることです。
これらの図版が出版されたのは、1899年から1902年にかけてですが、その時期にすでに三葉虫の付属肢が今と変りないくらい正確に描かれていたとは、少なくとも私にはちょっとした驚きでした。
付属肢の研究って、そんなに昔から行われていたのか!
たしかに確認してみると、ビーチャーがウーティカ頁岩の三葉虫化石床を発見したのが十九世紀の終りごろで、その研究がいちおう完成をみたのが1902年、つまりヘッケルの図が出たのとほぼ時期を同じくしています。
換言すれば、ヘッケルはビーチャーの研究が出ると同時にその成果を自分の作品に取り込んだわけで、その同時代的な目配りのよさには感心してしまいます。
もしビーチャーの発見がこの時期までになされなかったとしたら、この図にはトリアルツルスではなく、ダドリーのカリメネが描かれていたことでしょう。
カリメネからトリアルツルスへ。
この流れが三葉虫研究の新旧を象徴しているようでもあります。
Trilobites
2024/04/04 - 編集済み書籍について軽く調べてみましたが、このページ以外の生物も素晴らしい描写で、飾って楽しみたい芸術品ですね。1904年の完全版が、市場に出てないか見てみたら、幾つかありましたが結構なお値段で簡単に入手できるものではありませんね。事実上の日本版なんかもある事が分かり、機会があれば入手してみたいと思います。
本題のトリアルツルス、確かに19世に既に完成された状態なので、この時期にはNYで産出があったのかもしれませんね。私もこの辺りの詳細が分かったのは20世紀中盤以降の話かと思っておりましたので、驚きました。
ktr
2024/04/05ヘッケルといえば、個体発生は系統発生を繰り返す、というのが有名で、とにかく古い古い人のような気がしていたので、肢付きトリアルツルスとの結びつきは意外でした。
この図版集は全部で100枚ありますが、たいていはネットで閲覧できるので、私はそれで満足しております。
クラゲ類がやたらに多いのですが、じつのところ、放散虫とか有孔虫とかの、小さくて地味な生き物のほうが、この図版集のなかでは魅力的に描かれています。
1人がいいね!と言っています。
trilobite.person (orm)
2024/04/06 - 編集済み私もこの図及びヘッケルが好きで、ラボジャーナルの表紙にしています。
ヘッケルの存命が1834-1919年との事で、老境に入ってからもなお、当時最新の成果を目敏く取り入れ続けたのは、精力的で凄いなと思います。コレクターとしては、三葉虫をちゃんと重視していた事も嬉しいところです。
現代の進化発生生物学では、「個体発生は系統発生を繰り返す‥ように見えることも、発生過程のほんの一部では見受けられる」あたりが、差し当たりの着地点のようです。しかし、発生と進化の関わりをこれ程までにロマンチックに捉えたテーゼは他になく、今でも多くの人の心を捉えて離しませんね。
ktr
2024/04/06なるほど、三葉虫研究にはうってつけの絵ですね。
私はじつはヤフオクでこれのポスターが出ているのを見て、おや? と思ったのでした。
ヘッケルのテーゼを信ずれば、私たちは胎内生活の10ヶ月のうちに、生命発生から現在までの何億年という進化の歴史をたどってくるわけで、たしかに話としては壮大かつロマンチックですよね。
学生のころ「宇宙の神秘」という本を読みましたが、その著者がヘッケルだったことを思い出しました。
1人がいいね!と言っています。