スクテルムはハミープレップで

先日ebayでスクテルムが出ておりまして、それがモロッコ産には珍しい、ほとんど石を割ったままのものだったので、これなら私にもなんとかなりそうだと思って、入札してみました。
それはメタスクテルムという名前のもので、表面が粒々で覆われているのが特徴です。
けっこうな稀少種のようですが、しかしその状態はけっしていいとはいえず、あちこち剝がれたり欠けたりしております。
まあこれならある程度の値段で落札できるだろう、と高を括っていたのでした。

しかし、終ってみればその値段は私の予想のほぼ３倍。
そんなに高いんですか、この種類は……
これにはほんとに驚いてしまいました。

そういっても、その標本にあの金額を出す人の気持もわからなくはありません。
というのも、そのおんぼろさには、丁寧にプレップされた標本には望むべくもない、荒々しい野趣が感じられたからで、私は同じような状態のものをボヘミア三葉虫の図鑑などでよく眺めておりましたから、その「醜の美学」とでもいうべきものには少なからず感銘を受けていたのでした。

いずれにしても、逃してしまったものは仕方ありません。
それに、あの値段を出すのなら、メタスクテルムは無理でも、スカブリスクテルムくらいなら、ハミープレップで手に入るのではないか。
そう、やっぱり三葉虫を集めるならば、ひとつくらいはハミーさんのものが手許にあってもいいと思うのです。
そして、モロッコ産のデボン紀に的を絞れば、私の場合、スクテルム以外は考えられないんですね。
なぜかといえば、前にも書いたように、スクテルムの完全体はモロッコ以外ではほとんど産出しないからです。
この点において、私の化石購入における禁則をやや緩めざるを得ません。
モロッコ産には手を出さない、ただしスクテルムは別、というふうに。

いつの日か、ハミーさんのスクテルムが手に入るときがくるでしょうか。
楽しみにして待ちたいと思います。