角川書店 角川文庫 呪いの塔

0

昭和五十二年三月十五日 初版発行
昭和五十二年九月三十日 五版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和7年(1932年)に新潮社の「新作探偵小説全集」の第10巻として刊行された横溝正史の長編小説「呪いの塔」。
軽井沢の小高い丘の上にそびえ立つ“バベルの塔”と呼ばれている奇異な遊戯場。迷路のような構造になっているこの塔で、有名な探偵小説家・大江黒潮とその妻や友人たちが、酔狂な仮想犯罪劇を行うことになった。被害者役は大江、犯人役は雑誌編集者兼探偵作家の由比耕作と決まり、霧の深い夕刻に劇は決行された。やがて劇が終盤に差し掛かった頃、突然、丘じゅうに響き渡るような大江の悲鳴が聞こえた。驚いた人々が大江のいる展望台に駆けつけると、肩口にナイフが突き刺さった状態で、大江が本当に殺されていた...
江戸川乱歩や甲賀三郎、大下宇陀児といった錚々たる面々が名を連ねた、新潮社の「新作探偵小説全集」の為に書き下ろされた長編作品ですね。当時の横溝正史は勤めていた博文館を辞め、専業作家としてスタートした頃。まだ、ドロドロとした情念みたいなものは感じられませんが、それでも随所に“横溝らしさ”の萌芽が見られる作品です。そして、江戸川乱歩の代表作「陰獣」に対するオマージュともパロディともつかない被害者「大江黒潮」というネーミング、更には当時の横溝自身を投影させたと思われる「由比耕作」と乱歩をモデルにしたと思われる「白井三郎」、狂言廻し役を務めた2人の設定に、横溝の乱歩に対する複雑な感情が見え隠れしている辺りも興味深いところです。角川文庫には昭和52年(1977年)に収録されました。
画像は昭和52年(1977年)に角川書店より刊行された「角川文庫 呪いの塔」です。“バベルの塔”で行われた仮想犯罪劇に参加した面々を描いた表紙画ですね。ただ人物を描いただけなのに、横溝作品らしい不穏な気配がちゃんと立ち込めているのが流石です。

#横溝正史 #杉本一文 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画

Default
  • File

    グリーン参る

    2023/01/08 - 編集済み

    島倉千代子さんかと思いました❗

    返信する
    • B6cf967ebcafa336fe0b5e970ad6d9c2

      dape_man

      2023/01/09

      昔の日本の女性を上手く描いていますよね。頬骨のちょっと出た感じなんか凄くリアルです。

      返信する