角川書店 角川文庫 扉の影の女 第1期

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昭和五十年十月三十日 初版発行
昭和五十二年六月三十日 九版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和32年(1957年)に雑誌「週刊東京」に連載された短編「扉の中の女」を、昭和36年(1961年)に長編化した横溝正史の長編小説「扉の影の女」。
西銀座の路地で殺害され、その後、築地の橋下で死体が発見された若い女の変死体を巡るミステリーを描いた作品ですね。西銀座から築地に移動した死体の謎、最初の目撃者が殺人現場で拾った「叩けよ さらば開かれん」と記された謎の手紙の切れ端など、導入部分はそれらしい雰囲気でなかなか良い感じなんですが、如何せん“本格ミステリー”としてはかなりアンフェアなところがあって、真犯人の正体には思わず「そんなのあり?」と突っ込んでしまうこと必至です。ただ、本作は、おケラで煙草銭にも事欠く金田一が等々力警部に煙草を恵んでもらったり、居住するアパートの管理人夫人に借金したりする名探偵の懐事情、また、朝食はトースト、ランチにステーキを食す食生活の一端など、金田一耕助の私生活が詳細に描かれていて、そういう点では非常に興味深い一作だと思います。本書には表題作の他に短編「鏡が浦の殺人」が併録されています。角川文庫には昭和50年(1975年)に収録されました。
画像は昭和52年(1977年)に角川書店より刊行された「角川文庫 扉の影の女 第1期」です。髭面の若い男と不安げな表情の若い女。劇中で重要な役割を果たしていた、あるカップルを描いたものと思われますが、杉本表紙画としてはあまりひねりが無く、平凡な印象で終わっているのが残念です。

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