角川書店 角川文庫 白と黒 第1期

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昭和四十九年五月三十日 初版発行
昭和四十九年九月三十日 三版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和35年(1960年)から昭和36年(1961年)にかけて共同通信社系の新聞(日刊スポーツ他)に連載された横溝正史の長編小説「白と黒」。
住民たちのプライバシーを暴露する怪文書が横行する、東京の新興団地で起きた連続殺人を描いた、横溝正史の意欲作ですね。名探偵・金田一耕助が活躍する横溝正史の作品といえばその舞台は、古い因習が残る田舎の旧家や元華族などの名家の邸宅といったイメージが強いのですが、本作の舞台となっているのは市井の人々が暮らす、高度経済成長真っ只中の東京の新興団地。どちらかというと松本清張あたりの社会派推理小説に似つかわしい舞台設定というような気もしますが、横溝は「怪文書が横行している団地」というシチュエーションで愛憎渦巻くドロドロとした人間関係を浮かび上がらせ、殺人描写においてもコールタールに塗れた、顔が判別不能な女の死体というお得意の“顔の無い死体”を盛り込むなど、都会の団地を舞台にしつつも“横溝色”を強く残したものとなっているのは流石です。角川文庫には昭和49年(1974年)に収録されました。
画像は昭和49年(1974年)に角川書店より刊行された「角川文庫 白と黒 第1期」です。コンクリートの塊から突き出た、艶めかしい女の脚。本来ならば物語のイメージに沿って凄惨なものになってもおかしくないところなのですが、どことなくポップアートの趣もある印象的な表紙画です。

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