第一回 はじめまして。いち素人ですが、靴を作っています。
なんとなく靴作りを始めてみた、いち素人です。この連載では、履ける靴を一足仕上げるまでをドキュメントスタイルでお伝えしていきます。
靴制作の過程を見てもらう中で、靴マニアじゃなくても「なぜ、いい靴はこんなにも高いのか?」の疑問、さらには靴を愛したくなるヒミツがわかってもらえるのではないかと思います。
靴の裏側(というと大げさですが)がわかると、靴を見るのが楽しくなる!(購入に至るか否かはまた別の話…) まずは、僭越ながら、私の自己紹介と靴作りの魅力をお伝えします。
小さき世界に輝く。磨きと彫りの職人技とは。
東京の閑静な住宅街の一角。『DAIZOH MAKIHARA』の表札が掛かったアパートの一室が牧原氏の工房だ。部屋の中にお邪魔すると、工具や大型の切削マシン、旋盤、図面などがずらりと取り揃えられている。
ここは牧原大造氏の住居兼工房だ。改めて紹介すると牧原氏は“時計製作師”という一風変わった肩書きを名乗っている時計師だ。前回も書いたが、”時計師”という言葉を使う時、その仕事内容は2つに分けられる。1つは時計の修理を専門とする時計修理師。そしてもう一つは時計の設計や組み立てなどの製作を自らの手で行う独立時計師。牧原氏は海外から調達した時計のムーブメント(メカ部)をベースに磨きや彫りを施すことから、仕事の内容としては時計の製作、どちらかというと後者に近い。
前回は彼が“時計製作師”になるまでのプロセスを紹介したが、今回は、精緻さと大胆さが求められる、そして牧原氏が最も得意とする磨きと彫りの手仕事にクローズアップしてお届けしたいと思う。