【手彫証券印紙】第四次発行10銭青色:ポーラス紙/目打10=Plate IV 【大珍品!?】

初版 2024/12/10 19:49

改訂 2024/12/10 22:48

手彫証券印紙は相手にする人が少なくて、入手に苦労する反面、どこに何が潜んでいるのかわからないという面白さがあります。

この度、珍品とされている第四次発行10銭青色印紙(洋紙、目打)のPlate IV を思いがけず複数手に入れることができました!

大阪市内で先日開催された某オークション。毎回併設されるディーラーブースでいろいろなものを探すのも楽しみの一つです。

ここ数回は、懇意にさせていただているベテランのディーラーさん(切手はもちろんのこと、印紙や暦にもお詳しいという稀有なお方)にお願いして、印紙貼り証書を探してきていただいております。

日曜日の午後、少々出遅れてしまって、お片付けを始めかけておられたところに出向いたところ、

「こんなもんいりませんか?」

と差し出された、明治17年の受取証(帳簿)の束。幾重にも折り畳まれた受取証で、洋紙の10銭青と和紙目打の5銭が貼られていて、同一の出所とのことです。

合計で25通の束で、合わせた厚さは10cmあまりという中々の迫力の束でした。

1通抜き取ってもらって確認したところ、洋紙/目打10の10銭青色と第三次発行5銭茶色が貼られていて、折り畳まれた内側に貼られていたこともあってか印紙のコンディションは上々。同じ出所で同じ時期ということは、一枚のシートから印紙を切り出して使われた可能性が高いので、これは第五次発行10銭青色のリコンストラクションの材料に最適、ということで、全部引き取らせていただくことにいたしました。

帰宅して詳しく見てみたところ、ポーラス紙/濃青色の目打10、印面の特徴からは第五次発行10銭青色のPlate Iと思しき印紙が、第三次発行5銭との組み合わせ(合計15銭)で25通中18通に貼られていました(残りは5銭が3枚とか、1銭のみなど様々でした)。日付をみると明治17年11月。すでに凸版の証券印紙(菊型)が流通していた時代なので、後期使用としても面白いマテリアルということに気づきました。

さてプレーティングということで、まずは上耳紙付きの単片を選んで、Plate IなのかPlate IIなのかということを判別して、残りの印紙のポジションを確定させるという手筈で作業を開始しました。

刷色も濃くて鮮やかで、明治17年11月の使用なので最後期の印刷の可能性が大。これで目打8 1/2だったらもっと良かったのになぁ、と思いながら、長谷川純さんの作品集からスキャンしたシート画像と照合を進めてみたところ...

合いません。

そんなはずはないと何度見直しても合致するポジションの印紙はなし。印面中央の「紙」の上に版欠陥として小点が幾つかありますが、これも手元のデータベースにはありません。

?????

ということで、残りの証書に貼られている印紙を確認したところ、左警告文の「刑」が見たことない異形のものや、額面表示の「1」の下のセリフが右側に長く伸びているなど、第五次発行10銭とは顔つきがちがうものが多数ありました。

?????


しばらく頭を悩ませていたのですが、ふと、長谷川純氏の作品集「手彫証券印紙」(2022)に、第四次発行10銭青色でポーラス紙のものが掲載されていたことを思い出し、同書p.140の「Fourth Issue 10 Sen Blue, Plate IV」図版を拡大して眺めてみると、今回入手したものと実によく似た顔つきです!

これは、と思い、図版をスキャンして、合致するものがないか探したところ、この耳付きの印紙と合致するものは掲載されていませんでしたが、残りの証書に貼られているもので、長谷川氏の第四次発行10銭青色 Plate IVのリーフに貼られている印紙と一致するものが発見できました!決定的な証拠です。

これから残りの印紙について、再度、第五次発行10銭青色印紙との比較をじっくり注意深く行う必要はありますが、個人的には、今回入手できた18枚は第四次発行10銭青色・Plate IVである可能性が極めて高いと考えています。


第四次発行10銭青色 Plate IVを入手したのは今回が初めて。長谷川氏によると、この版の印紙は数日で製造が中止されたと考えられること、現存数はわずか30枚程度の使用済みが確認されているのみで、未使用は未確認、とあります。この枚数が正しければ、今回、一日で確認現存数の50%超えを追加確認できたことになります。

さらに長谷川さんの作品集を読み直したところ、なんとp.141に収録されている明治22年の証書がこの印紙(第四次発行10銭青色 Plate IV)が使用されている唯一の証書とのことで、今回購入したロットが如何に貴重なものであったかということがわかりました。

ほんとに手彫証券印紙はどこに何が潜んでいるのか全く油断ができません。

素晴らしい出会いをアレンジいただいたディーラーさんに改めて感謝です。

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unechan

子供の頃から細々と続けてきた切手収集。長年のブランクを経て10年ほど前から再開し、日本切手クラシカル、ドイツインフラなどを収集。併せて手彫証券印紙の収集を始め、現在はこちらがコレクションのメインになっています。郵趣に加えて音楽(ジャズ)、釣り、鉱石収集、昆虫採集(蛾類)など趣味多数にて家族には迷惑をかけております…

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