【手彫證券印紙】第5次発行1銭黒:定常変種(ごく軽微な版欠陥、軽彫)

初版 2023/06/01 06:26

改訂 2023/12/17 19:40

第5次発行1銭黒印紙のプレーティング作業を進める中で、このLabジャーナルとミュージアムで報告済みのエラーを含む定常変種の他にも、ごく軽微な版欠陥で、定常的に出現するものをいくつか見出しました。プレーティングのヒントになりうると思いますので、自分の備忘録を兼ねてご紹介いたします。

このLabログでは、いわゆるFly-speckと称される、定常的に出現する印面上の小点についても詳しく述べることといたしました。2023年6月上旬から着手した調査で、Plate I, Plate II共に数多くのポジションでfly-speckをはじめとする定常変種を見いだすことができましたので、大幅な改訂を施しました。これらの定常変種については機会を改めて郵趣雑誌へ報告分として投稿、公表したく考えています。

[2023/6/28-2023/7/7の間にfly-speckを中心に複数の定常変種を発見、追加しました]

[2023/7/8:変種説明の画像を改定しました]

[2023/7/23: Plate I/Pos.10のFly-speck2箇所を追加して改訂しました]

[2023/8/10: Plate I/Pos.11のFly-speckを発見、追加しました]

[2023/12/17Plate II/Pos.24のFly-speckを発見、追加しました]

印面上の小点 ("fly-specks")

印面の傷によるものと推察される小さな点で、偶発的な汚れやゴミではなく、特定のポジションで定常的に出現するものを整理しました。また、定常変種であることのエビデンスとして、最低でも3つのサンプルを図示することとします。印刷のインプレッションによる見え方の違いの参考となれば幸いです。

2023年8月10日時点で、Plate Iで26種類、Plate IIで36種類のfly-speck定常変種を見出すことができています。

Plate I

Plate I, Pos. 1

上額面の"S"の左側、"1"との間に小点があります。ごく小さいため、判別するのが難しいかもしれません。

Plate I, Pos. 3

上額面表示の"S"の上、印面の外枠すぐ外に小点があります。また、左警告文、「處」の第2画の縦棒のすぐ上にも小点があります。

Plate I, Pos. 4

右警告文、「贋」の第2画目、タレの終わり手前から上むきの筋が伸びています。

Plate I, Pos. 8

右警告文の「扵」の手偏が損傷して、縦線とタスキの間が途切れています。印刷擦れと思っていましたが、定常的に出現することがわかりました。印面の状態により擦れのように見えるので、代表的な4例を図示しました。

Plate I, Pos. 9

右警告文、「致」の右側、外枠線のすぐ外側にごく小さな点があります。

[2023/7/7 発見、追加]

Plate I, Pos. 10

[2023/7/23改訂] 当初の報告(3箇所)ののち、マテリアルを増やした分析の結果、次の5箇所に微細なfly-speckが潜んでいることがわかりました。

1) 菊紋の2番目の花弁の中に、やや細長い点があります。

2) 右警告文、「此」の篇(止)の上にごく小さな点があります。

3) 右警告文、「扵」の編、第3画目のハネのすぐ横に小さな点があります。印刷インプレッションによってはハネと合体して、滲んだような感じになります。

4) 左警告文、「可」の左上にごく小さな点があります。

5) 左警告文、「の」の最後あたり、右側に小さな点があります。

これらのうち、1)と5)が比較的わかりやすいかも知れません。

Plate I, Pos. 11

左側下向き房飾りの先端付近、右側に小点があります。[2023/8/10発見、追加]

Plate I, Pos. 12

左額面の「一」の書き始め、左下にごく小さい小点があります。

Plate I, Pos. 18

印面中央の「印」の第1画の始め、右下に小点があります。

Plate I, Pos. 19

2箇所にFly-speckが潜んでいます。

1) 上額面の「1」のすぐ左側に小点があります。

2) 右額面の「一」の書き始め、すぐ上側に小点があります。

Plate I, Pos. 21

左警告文の「も」(旧字)の第1画目のすぐ左側に小点があります。

Plate I, Pos. 24

左警告文、「處」と「厳」(旧字)との間に小点があります。

Plate I, Pos. 25

左警告文、「の」の最後が途切れて、先端が点になっています。版の損傷による擦れと思われますが、印面のインプレッションや保存状態によっては外的な要因による擦れと見まごう可能性もあります。

Plate I, Pos. 26

左警告文の「可」の上、上枠線との間に小点があります。

Plate I, Pos. 30

上額面の「1」の上のほう、すぐ右側に小点があります。

Plate I, Pos. 31

左警告文の「も」(旧字)の一部が損傷して途切れています。印面の擦れのように見えるために注意が必要ですが、今回の調査で定常的に出現することが確認できたので定常変種として扱うことにしました。

Plate I, Pos. 35

印面左上隅の文様のうち、一部が損傷のために薄くなっています。印面インプレッションによってはほとんど見えないようになっていることもあり、これまでは印面の擦れと思っていたのですが、今回の調査で定常的に出現することが確認できました。軽度の軽彫として扱うべきか、悩ましいところです。

Plate I, Pos. 36

菊紋の、十二時方向から数えて6番目の花弁の右斜め下、少し離れたところに小点があります。

Plate I, Pos. 38

左警告文、「可」の口のすぐ上に小点があります。また、印面中央の「紙」の糸偏の上に、ごくごく微小で淡い小点が2つあります。この淡い小点2つは見落としても不思議ではないほどの微妙さなので、「可」の小点のみでも十分にポジショニングが可能と思われます。

Plate I, Pos. 39

左額面、「一」の止めのすぐ下に小点があります。

Plate I, Pos. 40

左警告文の「も」(旧字)の右側、やや下よりに小点があります。

Plate I, Pos. 45

左額面の「銭」の下側、下枠線のすぐ上に小点があります。

Plate I, Pos. 46

印面中央の「紙」と、左側の下向き房飾りとの間に小点があります。

また、右警告文の「紙」のすぐ上にも小点があります。

Plate I, Pos. 49

上額面、「1」の中ほど、すぐ右に小点があります。また、印面中央の「印」の篇と旁の間に小点があります。

[2023/7/8追記]

Plate I, Pos. 50

印面中央の「紙」の糸偏、第6画目の書き終わりのすぐ左下に微小な点があります。かなりわかりづらい変種ですので、他の文様特徴とあわせてポジショニングを行うのが確実かも知れません。

Plate II

Plate II, Pos. 1

印面中央の「紙」の旁(氏)の最後の画、払いのすぐ下に小点があります。比較的小さな点で、見辛いかも知れませんが、定常的に出現しています。

Plate II, Pos. 2

印面中央の「印」の第1画の角すぐ左上に小点があります。

Plate II, Pos. 3

菊紋の21時方向すぐ左に小点があります。

Plate II, Pos. 4 

印面右側の房飾り群、中央の飾り文様の右斜め下に小点があります。かなり微小な点で見辛い場合もありますが、定常的に出現することが確認できたので登録しました。[2023/7/2追加]

Plate II, Pos. 5

左額面の「一」の、書き始めから1/3ほどのところ、上にごくわずかな小点があります。印刷状態によっては「一」と融合してしまって確認し辛いこともしばしばあり、難しい定常変種です。[2023/7/2追加]

Plate II, Pos. 6

印面中央の「紙」の旁(氏)の第3画の右、房飾りとの間に小点があります。

Plate II, Pos. 7

右警告文、「贋」の右上すぐに小点があります。

Plate II, Pos. 9

上額面の「E」と「N」の中にそれぞれ小点があります。ごく微小なFly-speckですが、二つあることで確認は比較的容易と思います。[2023/7/2追加]

Plate II, Pos. 10

菊紋の、十二時方向から数えて8番目の花弁のすぐ外に小点があります。Plate II, Pos. 23のものとよく似ていますが、こちらの方が小さくて、花弁のセンターラインに近いのが特徴です。

Plate II, Pos. 12 

上額面、「S」と「E」との間に小点があります。[2023/7/6発見、追加]

Plate II, Pos. 13

左警告文、「可」の最終画のハネのすぐ右下に小点があります。

Plate II, Pos. 15

左警告文の「可」の上、上枠線のすぐ下に漢字の「一」のような細長い線が入っています。他のポジションには例を見ない変種です。[2023/7/6発見、追加]

Plate II, Pos. 18

左下隅の隅飾りの先端付近、やや右側に小点があります。

Plate II, Pos. 19

右警告文枠の下端、左下角に小点があります。

Plate II, Pos. 20

右警告文枠の下端、左下角に小点があります。Pos. 19とよく似ていますが、こちらの方が微小で、位置もやや右寄りです。インプレッションによっては見難い場合もあって、難しい定常変種ですので、印面文様の他の特徴とあわせてポジショニングを行うのが確実と思われます。

Plate II, Pos. 21

左警告文の「刑」の旁(「リ」)、最終画のハネの下にわずかな小点があります。ごく小さくて、かつ薄いために判別しづらい場合もあります。[2023/7/2追加]

Plate II, Pos. 23

菊紋の、十二時方向から数えて8番目の花弁の外に小点が2つあります。印刷のインプレッションによっては2つの点が融合して一つに見えるかも知れませんので、無地紙に印刷されたクリアなインプレッションのものをあわせて表示しています。

Plate II, Pos. 24

左額面右下の青海波紋様が一部損傷している版欠陥ががあるものとないものとが存在する興味深いポジションですが、これに加えて、右額面の「銭」の金偏のすぐ上にやや大きめの点が、右警告文の「紙」のすぐ下に小点があります。これまで気づかなかったFly-Speckですが、面白いことに、件の青海波紋様損傷の有無に関わらず出現することを確認しています。[2023/12/17追加]

Plate II, Pos. 25

印面中央の「紙」のまわりに小点が3つあります。いずれもわずかな小点ですが、3つの点の配置パターンとあわせて確認することで識別ができます。[2023/7/2追加]

Plate II, Pos. 26

印面右側の房飾り群、中央の飾り文様の左横に小点があります。こちらもかなり微小な点で見辛い場合もありますが、定常的に出現することが確認できたので登録しました。[2023/7/2追加]

Plate II, Pos. 28

印面中央の「印」の旁の左右に小点が2つあります。

Plate II, Pos. 29

印面中央の「印」の第2画の書き始めすぐ、右側に小点があります。比較的はっきりくっきりとした小点です。

Plate II, Pos. 30

印面中央の「紙」の最終画、払いの終わり手前の上側に小点があります。

Plate II, Pos. 31

下額面の「E」の下側、印面外に小点があります。

Plate II, Pos. 33

左警告文、「も」(旧字)の第1画のやや左上、印面外に微小な小点があります。かなり微妙な定常変種で、印刷インプレッションが良くないとわからないかも知れません。

Plate II, Pos. 35

印面中央の「印」の第3画のすぐ右上に小点があります。

Plate II, Pos. 36

右警告文、「扵」の偏と旁の間、下側に小点があります。比較的くっきりとした定常変種です。

Plate II, Pos. 37

印面中央の「紙」の旁(氏)の第3画の、右下に小点があります。かなりくっきりしているので、プレーティング作業の際に大いに役立ちます。

Plate II, Pos. 38

印面中央の「印」と「紙」の中にそれぞれ小点があります。2つとも微小で薄い小点ですが、どちらかと言えば「紙」の旁の中にある小点のほうがわかりやすいかも知れません。[2023/7/2追加]

Plate II, Pos. 39

上額面、「1」と「S」との間に小点があります。また、「E」の上側、印面枠外に小点があります。

Plate II, Pos. 40

右警告文、「者」のすぐ下に小点があります。

Plate II, Pos. 41

右警告文、「此」の旁(ヒ)の下に小点があります。

Plate II, Pos. 43

左警告文、「厳」の斜め下に、ごく薄くて掠れた感じの斜め線があります。印刷状態によっては判別できない場合もあって、難しい定常変種です。[2023/7/2追加]

Plate II, Pos. 44

印面中央の「紙」の旁(氏)の第2画の最後の払いのすぐ下に小点があります。

Plate II, Pos. 46

上額面、「E」と「N」の間の上側、印面枠外に小点があります。印面の擦れと紛らわしくてわかりづらいかも知れません。

Plate II, Pos. 47

左警告文の枠、右上隅あたりに小点があります。

Plate II, Pos. 48

左上隅の隅飾りの先端、髪の毛文様の先端部と菊紋の間に小点があります。[2023/7/2追加]

軽微な軽彫

印刷の加減によっては若干わかりづらい程度の、軽微な軽彫と思われる定常変種です。

Plate I, Pos. 3

左下桜の、左上にある青海波文様の小波が、他のものと比べて薄くなっています。全体のシェードが濃い場合はわかりづらいことがありますが、ここに紹介したような、薄めのシェードで普通紙に印刷された場合にはよく目立ちます。

このように場合によってはわかりづらいこともあるため、先にご紹介したfly-speck(2箇所)と合わせて判別するのがもっとも確実と思われます。

Plate II, Pos. 34

左側の下向きの房飾りの軽微な軽彫で、先の方が若干薄くなっています。この軽彫は印面の刷り上がりの状態によってはかなり目立つようになってきて、擦れのような印象を受けることもあります。プレーティングを行なっていると結構目立つ変種なので、別Labログでご紹介している(はっきりとした)定常変種の方に含めるのが適切かも知れません。

この定常変種の上には、Pos.14とPos.24の定常変種があるので、この3つの定常変種が連なった贅沢な縦ストリップが存在します。この例は、Pos.4//14の縦4連ストリップのうちPos. 14//34を拡大したものです。

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unechan

子供の頃から細々と続けてきた切手収集。長年のブランクを経て10年ほど前から再開し、日本切手クラシカル、ドイツインフラなどを収集。併せて手彫証券印紙の収集を始め、現在はこちらがコレクションのメインになっています。郵趣に加えて音楽(ジャズ)、釣り、鉱石収集、昆虫採集(蛾類)など趣味多数にて家族には迷惑をかけております…

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