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Morocops ovatus
最も一般的なファコプスであり、モロッコ産に限らず、ザ・ファコプスといえます。2000年代始めくらいまでは、Phacops speculatorと称され、その後、Barrandeopsという属名に変わり、現在はMoroccopsで落ち着きました。モロッコ産のファコプスは、細かい所まで見ていくと多種多様な種類が現在では提唱されています。本種と比較して複眼や顆粒、体形などがどう様に違うかという基準になる種類に思えます。
Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-23 -Trilobites
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Scabriscutellum sp.
Scabriscutellum hammadi(CHATTERTON et al.,2006)として入手した標本ですが、まだ正式な学名は付いていないと思われます。頭部や尾部が分かりやすいのですが、全体が細かい孔状の窪みがあり、体表面がツルっとした種類が多い他のScabriscutellumとは少し印象が異なります。幅広な体形でもあり、例え細かい窪みが無くても他のScabriscutellumとは違うことが分かります。産地のTafraoutは、他の産地とは違う亜種の様な三葉虫が多く見られ、一時期注目していました。
Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-506 TimrhanrhartTrilobites
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Platyscutellum cf. massai
巨大なPlatyscutellumの尾板だけの標本です。同じ個体か分かりませんが、頭部の一部も残されています。扇子を広げた様な巨大な尾板だけでも迫力があり、推定する全長は15㎝を超えていた可能性があります。この大きさですとドロトプスにも引けを取らない存在感だった筈です。尾部の部分化石が積層している様な産状で、1990年位は市場で少し見掛けましたが、近年は珍しい化石となりました。
Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-276 Hamar LaghadTrilobites
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Quadrops flexuosa
以前には、Philonyx philonyx(RICHTER&RICHTER1952)と呼ばれていましたが、現在ではQuadrops flexuosaと呼ばれています。モロッコのデボン紀の代表的な棘棘三葉虫で、その中でも異彩を放っており、4つに分れた謎の吻、平安装束の冠のような大きなヘラ状の棘(この種類は、それ程大きくないので、新種かもしれません)、肋や尾板から曲線を描いた棘、縦に3列の体節の棘など数えきれないほどの特徴的な棘で武装しています。左後の側葉部は、生前に欠損したのか一部棘が残されていません。従来から見かけるモロッコの代表的な棘々種でしたが、近年は原石が枯渇していて、現代の技術で剖出した標本は本当に貴重です。
Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-139 -Trilobites
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Gondwanaspis sp.
この種は且つて幻種でしたが、一時期少し出回る様になり、近年はまた見かけなくなりました。元々数が少ない種なのですが、値が下がるのを待ちすぎても再び買えなくなる事があるモロッコ産は、投資の勘が必要です。Gondwanaspisという属名は、あのゴンドワナ大陸に由来します。頭部や尾部を見れば、この種がLeonaspis/Kettneraspisに近縁である事が分かります。頭部縁の細かいフリル棘は、中心部だけ何故か存在しません。
Devonian Odontopleuridae,Lichida TRI-403 -Trilobites
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Dicranurus monstrosus
デボン紀モロッコ産において、最も人気が高い種類の一つです。オクラホマのDicranurus hamatus elegantusに比べれば入手はしやすいですが、思いのほか状態の良い標本が少ないです。特に近年は、採掘しつくされ、新たな原石が枯渇している状況と聞きます。現地では部分化石で採取される事が大部分ですので、安価な標本はコンポジットも散見します。この種類、状態が良いとこの標本の様に背軸に細かい1対の棘が並びます。モンスターという名前に恥じず、一度見たら忘れられない特異的な姿をしていて三葉虫界を代表する種類だと思います。
Devonian Odontopleuridae,Lichida TRI-5 -Trilobites
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Diademaproetus antlatiasus
一般的なCornuproetus(コルヌプロエタス)との違いは、頭の先端に短いヘラ状の吻(突起)がある事です。この吻は、産出地により微妙に異なりますし、体表に細かい顆粒があるタイプもいて、バリエーションに富む種類なのかもしれません。Proetus系ではこれでも大きくなる種類で、Cornuproetusより一回りは大きい個体が多いです。他の特徴として三日月状の大型の複眼を有し、頬棘も意外と長く尾部付近まで達します。
Devonian Tropidocoryphidae,Proetoidea,Proetida TRI-382 -Trilobites
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Dipleura dekayi boliviensis
Dipleuraは、同じ時代のニューヨーク州産も有名ですが、ボリビア産もほぼ区別ができない程、大きさも形態もそっくりです。モロッコ、デボン紀に棲息したParahomalonotus(モロッコ)とは、近縁でありますが、Dipleuraは、毛穴の様な独特の顆粒が全身にありまり、ツルツルな体表のParahomalonotusと比較するとザラザラな体表であった事が分かります。一応全身の標本が揃っていますが、同一個体である可能性は低く、別々の個体であったと思われます。こらは、この地のボリビア産の化石は、ノジュールで産出するためで、細長いDipleuraの全身が完全な状態で見つかるのは、小さな個体ではありますが、この大きさになると完全体での産出は不可能です。
Devonian Homalonotidae,Calymenina,Phacopida TRI-406 BelénTrilobites
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Comura bultyncki
モロッコのデボン紀を代表するド派手な棘々種です。こんなに棘が生えていると生活するにも不便だった気がします。中央列の棘列は、硬いのになだらかに後方に靡いているのは、前進する時に水の抵抗を抑えるためだったのでしょうか。この種をクリーニングするには、技術も時間もかなりの労力を要すると思います。
Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-74 -Trilobites
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Kayserops sp.
一見すると一般的なMetacanthinaに見えますが、この標本は”スパイニーカイセロップス”と呼ばれる全身がツブツブに覆われたタイプの別種です。近年、少量が市場に出てきましたが数が少なく、Kayserops marocanensis n.sp.など市場では幾つかの名称が存在していて、今の時点では正式に名称が確定していないようです。モロッコのデボン紀産一般種では、ツブツブがあるタイプと無いタイプが存在する種類が比較的多く見られますが、何故かツブツブがあるタイプは圧倒的に数が少ない理由は何なのか謎であります。
Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-11 -Trilobites
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Cyphaspis walteri
頭部のV字型の二本の角から「Devil's Horn(悪魔の角)」という愛称で呼ばれている種類です。触覚の様に見えますが棘です。この棘が如何なる機能を有していたのかは、謎であります。この種類、群れで暮らしていたのか、まとまって見つかることも多いです。近年モロッコのCyphaspisは、多くの種類が見られるようになりましたが、この種類は誰でも見分けることが可能です。一般受けする種類でもあるので、市場を見ていると贋物も非常に多く見られ注意が必要です。 【標本リンク】FFストア http://www.ffstore.net/detail/dev_010.html
Devonian Aulacopleuridae,Aulacopleuridea,Proetida TRI-297 -Trilobites
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Boeckops stelcki
モロッコのPhacopsの中では複眼が大きい方で、この標本でも縦に7列あります。頭部の粒々が他の種類より細かく、同じくらい細かい粒々が胸部も尾部にも確認できます。Austerops系との区別が難しく、この標本もAusteropsとして入手しています。これらの比較は粒々が無い箇所を見るか、複眼の縦列などで判断していきますが、状態の良い個体でなければ見分けがつけられません。
Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-627 -Trilobites
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Erbenochile erbeni
通称「Turret eyes/Tower eyes」と呼ばれる眼の高さのあるErbenochileは、デボン紀モロッコ産の棘々種において最高峰に値します。事実、この標本は、私の全コレクションの中で、最も購入原価の高い標本であります。この標本は、モロッコのトッププレパラーターHammi氏が手がけた標本で、眼の上のひさしにある細かい棘、体節にある細かい棘までが丁寧にクリーニングされて、もはや美術工芸品の域に達していて、息をのむ美しさがあります。この個体は、左側面に治癒痕も残っており、本種の生態を解明する意味でも興味深いものと思います。
Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-398 TimrhanrhartTrilobites
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Metascutellum pustulatum
全身ツブツブにびっしり覆われたScutellumは、BumpyScutellumやBumpy Typeと呼ばれ、少し前までは限られたコレクターしか所有できない幻の三葉虫でした。私自身もこの種類は、まず入手することは出来ないだろうと感じていた種類であります。近年は僅かながらも市場に出てきたため、私のレベルでも確保できる様になりました。この種類は、背軸に短い棘がありますが、疎らに生えていて、これは剖出で失ったものではなく、最初から生えていない状態であります。眼の上の棘、複眼まで残っていて剖出には非常に手間と技術が必要な種類です。
Devonian Styginidae,Illaenina,Corynexochida TRI-436 -Trilobites
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Platyscutellum cf. massai
モロッコでもScutellumの仲間は、種類は多く魅力的な尾板をしているのですが、どの種類も数は少なく近年は更に貴重になってしまいました。Platyscutellumという種類は、丸みを帯びた尾板が特徴で、Scutellumの中でも産出量が特に少ないことで知られます。産状は、基本的には部分化石であり、完全体は幻とされていました。この種類、イミテーション(贋物)が数多く出回っており、オークションやミネラルショーでも良く見かけます。コレクターには、Platyscutellum=贋物のイメージが定着してしまい、常に疑いの目を向けられてしまう種類なのですが、裏を返せばそれだけ魅力的な形態をしていて、完全体が貴重な種類でもあるのです。
Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-276-2 -Trilobites