ドイツ 新しき波 Neue Deutsche Welle

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 「ノイエ・ドイチェ・ヴェレ」というジャンルというかムーブメントがロック/ポップの世界にはあるのだが‥
英訳すればGerman New Wave、パンク・ロックへの西ドイツからの返答といったところ。この動きを日本でまとめたコンピレーションがこの盤。
 収められたバンド、曲は玉石混交といったところで、「パンク/ニューウェイブ返答?」と首をかしげるものも収録されている。実際、収録されたバンドのいくつかはアンダーグラウンドの世界でなく、ポップミュージックとしてヒットとなっている。2曲収録されたスパイダー・マーフィー・ギャングSpider Murphy Gangというバンドがその筆頭、懐かしい思い出を2つほど書き残しておきたい。
 2000年代初頭、生活していたドイツの小さな町で、友人とその家族を自宅に呼びパーティをしたことがあった。なぜ内向的な自分がパーティなどしたのか、いまとなっては全く思い出せないが、そうせざるを得ない状況に追い込まれたのだと思う。自分以外はドイツ人とアメリカ人だったが、自分ひとりで料理を作ったりと、それなりの振る舞いはしたつもりだ。食事をしながらの談笑のなかで、ミュンヘンが話題になったのだと思うが、自分が酔っていたせいもあると思う、このアルバムで最も耳に残る「立入禁止区域のスキャンダルSkandal in Sperrbezirk」の一節「ミュンヘンにはホーフブロイハウスがあるが‥」を口ずさんだところ、その場にいた同じ世代のドイツ人だけが「おぁ」となり唱和が始まってしまった。アンダーグラウンドの一部の人間しか知らないと思っていたこの曲はドイツではよく知られていると思わされた一瞬だった。調べたら、この曲は1981年ドイツのチャートのトップに立っていた。
 2004から2005年の大晦日にはこんな思い出もある。このとき自分はフランスのストラスブールに旅行で来ていた。ドイツとの国境近くにあるストラスブールの街の大晦日を友人と楽しみ、夜遅くホテルに戻った。テレビをつけ、ヨーロッパの年替わりをテレビはどんなふうに伝えるのか眺めてみることにした。ホテルのテレビはフランス、ドイツいずれの放送も見ることができたが、日本と大きく変わりないと感じスイッチを切ろうとした瞬間、聞き覚えののある曲が耳に飛び込んできた。「Skandal in Sperrbezirk」。ドイツの紅白歌合戦らしきライブの音楽祭からは相応に歳をとったバンドが手慣れたこの曲を披露していた。ドイツからのパンクへの返答は懐メロにもなるのか‥とテレビのスイッチを落とした。数分後からは花火の爆音でなかなか眠れなかったことも忘れられない。
 Spider Murphy Gangは今も現役だ。YouTubeで検索するれば、件の曲には簡単にアクセスすることができる。コメントは当然ほとんどがドイツ語で、要約すると「80年代フォーエバー」というコメントで覆い尽くされている。
 ドイツ語版のウィキペディアにはNeue Deutsche Welleに属するバンド一覧がある。誰が決めたのか知らないが‥ Spider Murphy Gangもこの一覧にはリストアップされている。

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