周辺的なものの誘惑(その1)

初版 2024/01/28 09:45

改訂 2024/01/28 20:39

三葉虫中心主義者にとって、化石の世界は「三葉虫」と「それ以外」とに大別されます。
「それ以外」にはもちろんさまざまなものが含まれますが、私はそのうちでもとくに古生代の地層から出るものを、かりに「周辺的なもの」と呼ぶことにしております。
三葉虫の周辺に棲息していた生き物たちの残した化石、という意味です。

これが、私にはじつに魅力的なんですね。
魅力的だけれども、しかし深入りするつもりはない。
めぼしいやつだけ、見本として選び取るようにしています。
条件としては、形が気に入ること、それから値段が安いこと、このふたつです。

さて、こにはどんなものが含まれるでしょうか。

ざっと思いつくままあげれば、腕足類、サンゴ、コケムシ、ウミユリ、ウミリンゴ、ウミツボミ、ウミサソリ、ウニ、ヒトデ、座ヒトデ、クモヒトデ、海綿、陸生のものでは各種のシダ類、ロボク、リンボク、フウインボク、スティグマリア、アヌラリア、等々。

かつてはこれらのうちかなりの数を所有していましたが、三葉虫への興味を失うとともに、これらに対する興味も失せて、一年ほど前に少数のものを残してあとは売ってしまいました。
そのときはそれでせいせいしましたが、皮肉なことに、三葉虫への興味が再燃するとともに、これらに対する興味もまた復活してしまったのでした。

いま思えば、なんという宝の山を放棄したことでしょう。
かつては只同然の値段で手に入ったものも、いまではその片影すら見かけません。
あれほどebayに溢れかえっていたゴトランドの化石類は、いったいどうなってしまったのでしょうか。
ダドリーやその他の産地の夢のような海底標本の数々も。

まあそういっても、かつて集めたものを一から集めなおす、なんていうことはできません。
なくなってしまったものは、やはりそういう運命にあったので、いたずらに過去を惜しんでみても始まらない。

そこで、過去は過去として、これから先どうするか。

やはり自分の目を惹くもの、興味をもったものは、無理のない範囲で買っていきたいと思います。
それがいっときの興味であったとしても、そのときにしか手に入れられないものであることは確実なので、とりあえずはゲットしておく。
ダメだったら、かつてのように売ればいい。
一時的なものであっても、手に入れることが大切なのです。
たとえあとになって売ることになっても、いったん所有したものは、記憶として頭のなかに残りますから。

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ktr

鉱物と化石の標本を集めています

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    trilobite.person (orm)

    2024/01/28 - 編集済み

    ktrさんの特にブログの方で、ゴトランドなどの、周辺的なものの良い感じの標本を、昔よく紹介されておりましたね。

    三葉虫に関しては、ebay、オンラインストアで、グッとくる標本が激減したという実感がありますが、周辺的標本もやはり数が減っておりますか。何故なのかなと考えていましが、産地が枯渇した、売り手が飽きた or 高齢化し亡くなった、コロナや戦争を発端に世界情勢が厳しくなり物流が滞っているなど、複合的要因でしょうか。

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      ktr

      2024/01/28

      ああ、そんなこともありましたね。
      化石については、旬のようなものがあって、いまは恐竜の歯や爪をよく見かけるような気がします。
      まあ私の興味をもつのは、そういう派手なものではないので、扱う業者も少なくなるのは仕方ないですね。
      むしろ少ないくらいの方が、嬉しい悲鳴を上げずに済む分、いいのかもしれません。

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