スカブリスクテルムという名前

初版 2025/02/02 11:58

改訂 2025/02/09 08:57

私が今回買ったスクテルムは、Scabriscutellum hammadi という名前がついている。これはこれで正しいと思われるが、その形を見るかぎり、これはかつて(いまでも?) Scabriscutellum furciferum という名前(商品名?)で出ていた(いる)ものをたんに呼び変えただけのような気がする。つまり両者は同一なので、たんに名前が違うだけではないか、と。

ところでこのスカブリスクテルムという名前、もとはといえば、ドイツで産出した標本につけられた名前で、scaber というのは「荒い、ごつごつした、ざらざらした」という意味。つまりスクテルムのうちでも、表面がざらざらしたタイプに付けられた名前なので、私の買ったような、表面がつるつるした種類をスカブリスクテルムという名前で呼ぶのはどうも落ち着かない感じがする。

そもそもこの Scabriscutellum furciferum は、もともとチェコで産出したスクテルムに与えられた名称で、属名は当初(1847年)の Bronteus から Dicranactis へ、それがまた Cavetia に変り、最終的に Scabriscutellum に落ちついた、という経緯がある。本属にはもちろん furciferum 以外にもいろんな種があるが、モロッコで多産するスクテルムは、とりあえずこのチェコのものから名前を借りて、Scabriscutellum furciferum という仮の名を名乗っているわけだ。

これは明らかに不都合なので、Scabriscutellum hammadi と呼び変えられたのは妥当だといえる。ただ、上にも書いたように、本種は scaber ではないので、そこだけはちょっと引っかかる。

モロッコで産出するうちでも、おそらくは最多産種であり、かつ体制ももっともベーシックで、あらゆる特殊化を免れているので、Scutellum hammadi としておいてもよさそうに思うが、まあそれは専門家が決めることだ。

たかが名前なのでどうでもよさそうだが、いちおうメモとして。

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ktr

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    Trilobites

    2025/02/09 - 編集済み

    S.hammadiという呼称自体が仮称という認識でいるので、モロッコ産の複数存在する、かつてScabriscutellumに商業的に付加される呼称として流通してると私も認識してます。この辺りは、研究者の興味が向くかどうかにかかっていて、一昔前のファコプス系やプロエタス系の様に論文が出るのを待つしか無いですね。あきらかに単一種しかなくてsp.どまりであっても研究者が記載してくれないとそのままですし、採取者、プレパラーター、流通過程の方々やコレクターは命名出来ないので、市場先行の化石の世界では仕方ないですね。現生生物なら新種は難易度高いのですが、古生物はまだ幾らでも余地があるのですが、古生物学者も分野が限定的ですし、論文書くには労力が居る仕事なのですからね。

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      ktr

      2025/02/09

      記載、命名という作業がどういう手順で行われているのか、前から興味をもっているんですが、いまだによくわかりません。国際古生物学協会みたいなのが存在するのなら話は簡単ですけどね。
      いずれにしても、現状 sp. とか aff. とか var. で何とかなっているようで、あまり気にしなくてもよさそうですね。

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