角川書店 角川文庫 仮面城

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昭和五十三年十二月三十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和26年(1951年)から昭和27年(1952年)にかけて雑誌「小学五年生」に連載された「仮面城の秘密」を改題し、昭和27年にポプラ社から刊行された横溝正史の長編小説「仮面城」。
朝のニュース・ショーの尋ね人のコーナーで、大野健蔵という人が自分のことを探していると知った文彦少年は母親が止めるのも聞かず、持ち前の好奇心からその人物を訪ねて行った。そして、雑木林の奥にある一軒の洋館にたどり着くと、中から少女の悲鳴が上がった。文彦少年が夢中で飛び込むと、そこには頭に鮮血を滲ませた老人が床に倒れていた。その老人こそ大野健蔵その人であった。こうして文彦少年は恐ろしい事件に巻き込まれていったのだ...
横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。ふとしたことから恐ろしい事件に巻き込まれる少年少女たちと、それを助ける金田一耕助、彼らが立ち向かう今回の敵が、純粋な炭素からダイヤを造り出す“人造ダイヤ”の秘密を狙う怪盗・銀仮面です。ピンと一文字につばの張った、山の低い帽子の下に、いやらしい銀の仮面がいつもニヤニヤと笑っていて、身体をすっぽりと長いマントでくるんだコウモリのような出で立ちの怪人で、そんな銀仮面が怪汽船“宝石丸”という船舶を所有していたり、伊豆半島の西海岸、伊浜の山中に“仮面城”というアジトを構えていたりするケレン味溢れる世界観は、如何にもジュヴナイルらしい楽しさに満ち溢れていました。本書には表題作の他に「悪魔の画像」「ビロードの星」「怪盗どくろ指紋」の短編3編が併録されています。いずれも少年少女向け雑誌に掲載されたものですが、個人的には江戸川乱歩の「悪魔の紋章」を彷彿させる“三重渦状紋”を持つ怪盗が登場する“由利先生もの”の「怪盗どくろ指紋」が興味深かったです。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。
画像は昭和53年(1978年)に角川書店より刊行された「角川文庫 仮面城」です。ニヤニヤと笑みを浮かべている仮面と、魔法使いのような老婆。怪盗・銀仮面と、その手下が化けた老婆を描いた表紙画ですね。背景に描かれた“仮面城”がまるでヨーロッパの古城のようで、この画だけ見るとお伽話と勘違いしそうです。
表面に「帰って来た金田一耕助」の惹句、裏面に東映映画『悪魔が来りて笛を吹く』の公開告知が入った宣伝帯付きです。

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