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角川書店 角川文庫 花園の悪魔
昭和五十一年十一月十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店
昭和29年(1954年)に雑誌「オール讀物」に掲載された横溝正史の短編小説「花園の悪魔」。
東京近郊にあるS温泉の花乃屋旅館に併設されている、広さ千坪の花乃屋花壇。その花乃屋花壇のチューリップ花壇で、ヌードモデルの女が一糸纏わぬ姿で殺されているのが発見された。現場に残された遺留品から犯人は被害者と関係がある大学生の男と目されたが、その行方は杳として知れない。そんな中、容疑者の両親から依頼を受けた金田一耕助が調査に乗り出す...
東京近郊の温泉場を舞台に、エログロと猟奇で彩られた殺人事件を描いた、如何にも“通俗モノ”らしいテイストの作品ですね。チューリップ花壇の真ん中で全裸死体がポーズをとらされていたり、死後凌辱されていたりと何とも悪趣味な横溝節が炸裂していますが、それにはちゃんと理由があって、そこを金田一が解き明かしていくのが本作の醍醐味。横溝の“通俗モノ”というとそれだけで低評価の烙印を押されがちですが、ちゃんと読むとロジカルな本格派の手応えが感じられることと思います。本書には表題作の他に「蠟美人」「生ける死仮面」「首」の短編3編が併録されています。いずれも表題作に負けず劣らずの陰惨で猟奇的な物語です。角川文庫には昭和51年(1976年)に収録されました。
画像は昭和51年(1976年)に角川書店より刊行された「角川文庫 花園の悪魔」です。花に囲まれて死んでいる裸婦。まさに「花園の悪魔」事件の被害者である、ヌードモデルのアケミを描いた表紙画ですね。白目を剥いている眼、半開きの口という描写がやけにリアルな、淫靡でおぞましい画柄となっています。
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