ソナチネ SonataNo.25

初版 2024/10/22 22:20

ベートーヴェン/ピアノソナタ第25番ト長調OP.79

第1楽章 プレスト アラ テデスカ
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 ヴィヴァーチェ


1809年頃のベートーヴェンは9年後に第29番の長大で峻厳な後期の充実期に入るまであまりスケールの大きなピアノ曲は作っていない。
27番や28番、特に後者はすでに後期の雰囲気があり、実際には年代的に言っても後期の中に入れるべきかもしれない。

充実したロマン期の旋律美を裡に含んだまま、その眉根にはきわめて私的に捉えた啓示に応えるべく深い皺が刻み込まれている。
その流れの中にあって、この作品は軽く心の表層を漂う。
この頃のベートーヴェンの作品にはこういった小さくて簡潔なものが多い。

しかし、敢えてソナタと名付けたこの作品79は新たな道に分け入る前に身に付いたロマンティシズムを一端しまい込むための小さな器のようにボクには思える。
主情的でメロディアスだけど重い歌が多い時期を聴くには気分がちょっと疲れていたり、作品106の長大な宇宙を聴くには大いに集中力を欠くときに、この曲はちょうどいい。

第1楽章の『ドイツ風』ってどんなだか判らないけれど、要はこういうリズムなんだろうね。
この楽章のテンポはギレリスのが好きなんだけれど、バレンボイムもいい(ただし、年とってからのライブでは少し重すぎる。)頻繁に交差する右手と左手のパッセージが凄く楽しげで無骨でコロコロした指先が弾いてるとなんとなく見ていて口元が緩んでくる。まだ女性が弾いた演奏で『いいな』と思ったことがない。
第2楽章は9FのCD展示でもサンプリングした。

https://muuseo.com/Mineosaurus/items/448?theme_id=43332

まるでメンデルスゾーンの舟歌のようだけれど、決して彼は舟歌を書いたつもりはないのだろうね。
中間部のほんの少し湿り気を帯びた心象風景は語るのは簡単だけれど、本当に懐かしくて思いが深くて綺麗ですね。
ツェルニーを弾くように聞こえればいいというものではない。
恐ろしく短いロンド形式の第3楽章。短いくせに練られている。
軽快な主題が伴奏形の変奏だけでふっつりかき消える。
小さな作品だけに終わり方まで洒落ている。
もともと『ソナチネ』とされている曲でことさら25番などと銘打たなくてもよかった作品かも知れない。
でも、心の中にある音楽を取りだしてくる才能って凄いね。
ある意味男っぽい曲といえなくもない。
無骨な漢が背中を丸めて一心に砕いている思いが愛おしい。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

Default