リンツ!

初版 2024/04/16 00:31

改訂 2024/04/16 00:33

何というビビッドな感性なんだろう。
初めて書かれたこの序奏付きの4楽章のシンフォニーはハイドンの同様の作品の熟考と慎重の賜を今書き下ろしたような新鮮さで一気に奥深い暗部に引きこむ。
この透明で即興的な意識は作為的に紡がれた節目がない。
ヒロイックな序奏は美しく溶解し、気がつくと自分の目の前を満面に笑みを湛えた若者が駆け抜け、届かない距離から振り返って微笑んでいる。

モーツァルト/交響曲第36番ハ長調K.425『リンツ』

第1楽章 アダージオ-アレグロ スピリツォーソ
第2楽章 ポコ アダージオ
第3楽章 メヌエット
第4楽章 プレスト

1783年10月妻コンスタンツェと共にウィーンへの帰路立ち寄ったリンツ。
同じフリーメイソンであったトゥン伯爵のために普通考えられない短い期間で書き上げている。
専門的なことはわからないけれど、この作品は、研究家に拠れば伯爵が予定していた演奏会に向けてメヌエットを夾んだ4楽章構成をもっている。
管弦楽の規模もそこそこ大きい。
多く見積もっても5日間で書き上げたことになると言う。
モーツァルトの頭の中には様々な着想が無数の扉の向こうにあって、彼は様々なフレーズが降りてくるたびにひとつひとつその扉を開けてしまっているのかも知れない。
きっと次に扉を開けたときにはそれらは音楽に育っていて、はち切れそうになっているのかも知れない。
弦楽だけのアダージオにトランペットとティンパニーが加わる。
音楽が縦に広がり、ヘ長調が短調の日陰にはいるとき暗黙の淵を覗かせる。
一瞬見せる緩徐楽章のマジック。
短いがモーツァルトらしいメヌエット。
ほとんど同時期に彼はミヒャエル・ハイドンのシンフォニーに序奏を付けた作品を書いている。
以前はこの曲がリンツで作曲された急ごしらえと言われていた。
その真偽はボクには何とも言えないけれど、それはこの作品の完成度に微塵の影も落とさない。
フィナーレ楽章は当時の音楽愛好家達の嗜好を反映している。
どんなにわがままな作り方をしても、プロフェッショナルは最後の印象を顧客の満足においている。
やっつけ仕事とは思わせない歌劇の序奏的な華やかさを持つプレスト。


音楽は全曲。
カルロス・クライバーがVPOを振ったコンサートライブです。とてもオペラティックですね。

ムジクフェラインザールでのライブ キャンセル魔のクライバーが『ブルーになった』という一言を残して突然ホテルから遁走し、コンサートをキャンセルしてからウイーンのファンが待ちかねた演奏だったとのこと。彼のベルリンの国立歌劇場管弦楽団ともやったモノラルもあるけれど、ボクはこっちがいいね。CDは出てなくてDVDでした。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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