アシュケナージの思いっきりロマンティック・モーツァルト

初版 2023/10/22 11:53

改訂 2024/01/31 18:09

思いっきりロマンティック・モーツァルト 

モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491

第1楽章 アレグロ
第2楽章 ラルゲット
第3楽章 アレグレット


いろんなピアニストの演奏を聴いて、『個性的』という表現は曲の本質をあまり離れたところにはないものだと言うことに行き着いた。
アンチなんとか派の評論家氏の、モーツァルトはこうでなければいけない風の論評に『そんなものか』とも思ったりした。
でも、重箱の隅を突っつくような評論を行って見たところで、最終的に二度三度と同じ曲を同じ演奏で聴くところからちょっと前に踏み出して、異なる演奏家のものを聴いたりしたとき、自分の感性にどっちが合っているかってこところに行きつく。


この曲に関しては、この演奏を耳にするまで、ボクはハスキルの清廉な孤独を歌う演奏を疑いもしなかった。
古いエドウィン・フィッシャーの演奏も素晴らしいと今でも思っている。
でも、それはモーツァルトの音楽に捧げられた再現であり、美しいのは演奏ではなく、美しい曲なのだとの思いを強くするものだった。
表現の多様性が、楽譜という決まったものがあってもなお、いろんな行く途を見せる。
このアシュケナージの演奏はボクにそれを今でも色褪せることなく訴えてくる。


音色というものの多様性。
同じ音を強く弾き弱く弾き、厚く弾き、薄く弾く。
出だしの音をペダルで操作しつつ、指を立て、指を寝かせ、まるでドビュッシーを弾くように同じ1音を豊麗に、孤独に、ロマンティックに色として鮮やかに聴かせる。
これは古典的モーツァルトを弾くことからはあまりにもかけ離れた恣意ではないか…といってみたところで、その説得力には抗しがたい。
この晩年指揮者としての才覚を発揮したピアニストが最も優れていて、そのかわり、美しすぎて中身が見えなくなるもの、美麗な音色。


それが実に分析的に楽曲と結びついたこの演奏は、モーツァルトの凄さと美しさを非常に明瞭に伝えてくれる。第3楽章フィナーレ近くの左手と右手の異なった歌の凄さ、ロマンティックな粘りすぎるほどの溢れんばかりの情感。
ノスタルジックなフレージングを手放しで受け容れた音色のロマンティシズム。
全楽章を通じてこれ以上透明でロマンティックな演奏は聴いたことがない。

当時の聴衆特に女性に関してはあまりに感情を揺さぶられることは気品に欠けるという風潮があったらしい。この曲は中間楽章の長調ですらほの暗いもーついぁるとの感情に支配されている。共感することが難しかったのではないだろうか。


ボクが囚われてしまった第1楽章の序奏の後の数小節のピアノパートにまたその後再びあらわれる同形のテーマの再現部にその全てがある。


鍵盤を叩いていないときのピアニストの指が鍵盤の上を緩やかに移動する空気まで想像させる音色でした。

第1楽章だけを紹介しますそれfで十分。

アシュケナージは当時のモーツァルトの指揮者を兼ねた弾き振りのスタイルで演奏します。そのくらいファゴットの音色から始まるが終わった後のピアノに現れる三度の同じ音型の音の持つデモーニッシュな表現力に耳をそばだてて下さい。

そして、その再現部、同じテーマが中腰で室内楽団を中腰で指揮していたピアニストが椅子の腰掛け、

再びピアノが印象的な主題を弾きます。音階の微妙さと音色の綾に傾聴。

なお、この楽章のカデンツァは、モーツァルトのものではなく、アシュケナージが作曲したものです。モーツァルトはこのピアニストが独奏するフィナーレを即興で行っていたことが多く、ポイントだけを楽譜に鉛筆書きしていたようでいろいろな音楽家がこの部分を自分流に作っています。有名なのは第20番の協奏曲のベートーヴェンのカデンツァですね。

当時のピアノフォルテはモーツァルトの期待通り、かなり現代のピアノフォルテに近いスケールや表現が可能なものに近づいていたようです。

Youtubeのビデオジャケットの絵柄は多分全集のでしょうね。発売当時は上のヨーゼフ・ランゲの未完の下―ツァルト画像の下に貼った弾き振りの絵柄でした。音源は同じ。アシュケナージの弾き振りでフィルハーモニア管弦楽団の団員と演奏しています。

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古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
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