-
7Artisans LM-E Close Focus
ミラーレス一眼カメラ用をはじめとして種々のマウントのMFレンズが日本にも輸入されている7Artisans (七工匠)のマウントアダプタです。以前からレンズは輸入されていたので7Artisansというブランドは知っていましたがマウントアダプタを作っていると云うのは知りませんでした。これまで使っていた無限遠ロック付きヘリコイドがついたノーブランドのLM-NEXマウントアダプタの精度が心配になったことがあって(実際にはレンズ側の問題でした),他の選択肢ということで名前を聞いたことがあるメーカーのマウントアダプタを調達しました。 ヘリコイドにロック機構をつけることで大幅に製造コストがあがる気もしないのですが,ロック付きに比べると10 USDほどお安い価格設定でした。ロック機構がないためなのかヘリコイドは重めです。オーダーしてからかなり時間がかかっていつものように(?)中国大陸から届きました。ノーブランド品のように白箱に入って届くのかと思っていたのですが,上の写真のように,やたら立派なロゴまでついて,磁石でフタがくっつくような中国的ゴージャス感満載な箱に入っていました。肝心のアダプタの作りも悪くありません。 そもそもの購入動機であるマウントアダプタの精度については,ロック付きのマウントアダプタの問題ではなくレンズ側に問題があることがわかったので,アダプタの精度を比較検証するという必然性が失われてしまいました。そんなわけでこのアダプタは買ったもののいまだに実戦投入の機会がないまま惰眠を貪っているかわいそうなヤツです。そのうち使ってやらなくてはなりません。 #マウントアダプタ #7Artisans #七工匠 #LM #SonyE #Sony #Leica #NEX
マウントアダプタ Leica M to Sony E 7ArtisansMOR
-
ALFINAR 38mm F3.5
オランダのOld DelftがスイスのAlpaカメラ向けに供給した準広角レンズです。製造数は600本ほどと言われています。かなりレアな割には人気がなく,市場ではそのレア度に比して比較的安価で流通しています。 典型的なtessarタイプの構成で非常に小さなレンズです。レトロフォーカスタイプにしないでバックフォーカスを維持したまま焦点距離を38mmまで短くしたというOld Delftの意地(?)が込められています。 この個体はマウント部のカメラに固定する爪がアルミ部材から一体で削り出されています。マウント部分に爪がネジで固定されているのがAlpaマウントの一般的なスタイルです。この個体のようなスタイルのマウントはごく少数の初期のAplaカメラ(マウントが異なる)用のレンズ以外では見たことがありません。なぜ,この個体が古い時代のAlpaカメラのマウントと同様のつくりで生産されたのか,つまり,アルミから一体で爪も削り出されているマウントがついているのかは謎です。 #レンズ #MF #Old_Delft #Alpa #38mm #F3.5 #広角 #標準 #単焦点
MFレンズ Alpa Old DelftMOR
-
ALGULAR 135mm F3.2
オランダのOld DelftがスイスのAlpaカメラ向けに供給した望遠レンズです。Alpa用の望遠レンズには,ピントあわせのためのヘリコイドを汎用ヘリコイドとしたものがいくつかあり,Alpa Alnea mood. 4以降のカメラ向けの汎用ヘリコイドはEXTENSANと呼ばれます。このレンズもEXTENSAN仕様です。Alpa用の135mmレンズは開放F値が3.5のSchneider製のTele-Xenarは比較的よく見かけますが,Algularは珍しいほうだと思います。 アルパブックによると製造期間は1954年から1959年で実絞りの前期型が579本,プリセット絞りの後期型が704本生産されたということです。後期型はOld Delft製ではなく,スイスのスペクトロス社によるOEMでした。そのため前期型はMade in Holandの刻印がありますが,後期型はMade in Switzerlandとなっています。前期型と後期型の違いは絞り環の色で,前者は黒,後者は銀です。EXTENSANの距離環も銀色なので後期型は黒い鏡筒に銀色のストライプがたくさんはいっていて落ち着かない感じがします。 Old DelftのAlpa用レンズは38mmと50mmがテッサー型,180mmが逆テッサー型なので135mmもテッサー型かと思いきや,全然違うレンズ構成で前群から1+2+2の3群5枚です。後群が両凹レンズ構成なら普通のテレフォト構成と言えるのでしょうけれども,なぜか後面が凸レンズになっています。2つの張り合わせレンズ(第2群と第3群)は径は違いますが対称型ダブレットを構成していて,1905年にドイツのEmil Busch社が発売した望遠レンズであるBis-Telarを踏襲しています。Algularはそのbis-telar型の2群4枚構成の前群に1枚追加した構成であり,DallmeyerのStigmaticという20世紀はじめの古典的なレンズ構成とほぼ同じ構成になっています。135mmであればゾナーでもテッサーでもいかようにでも作れたはずですし,テッサー型ならばこれまでのレンズで十分な実績があったはずです。それなのに,135mmだけが,どういうわけかStigmaticという石器時代の(といってもよいくらい古い)レンズ構成を採用しているのです。 カタログでは軽さを強調していたらしいのですが,確かに270gしかなくて見た目よりもずっと軽く感じます。ガラスの塊みたいなゾナーに比べればかなり軽いことは間違いありません。Old Delftの常識の斜め27度あたりを狙ってくる発想は謎めかしいのですが,不思議なレンズです。 このレンズもOld Delftの他のAlpa用レンズと同様にとても数は少なくてレアな割には流通価格はたいした金額ではありません。日本では海外と比べてもより人気がないのかeBayよりもずっと低価格であるように思います。 手元の個体は写真からわかるとおり,EXTENSAN部分以外は真っ黒な鏡筒の実絞りの前期型です。EXTENSAN部分はレンズから完全に分離できることもわかると思います。また,5枚目と6枚目からわかるとおりEXTENSAN部分のヘリコイドはかなり伸びます。 #レンズ #MF #Old_Delft #Alpa #135mm #F3.2 #望遠 #単焦点
MFレンズ Alpa Old DelftMOR
-
ALPA ALFITAR 90mm F2.5
シネレンズで有名な,フランスのAngenieuxがAlpaカメラ向けに供給したレンズの一つです。AlfitarはAlpaカメラ用のレンズとしては生産数は多いほうだと思いますが,そもそもAlpaカメラの絶対数が少ないのでいつでもどこでも見かける,という性質のレンズではありません。 このレンズは4群4枚のエルノスター型構成でエグザクタマウント等の他マウントにラインナップされていたType Y12と同じ光学系だと思われます。絞りは鏡筒にあるダイアルを回転させる独特の仕様です。Alpa用のAlfitarはクローム鏡筒の前期型と黒鏡筒になった後期型に大きくわけることができます。この個体は写真のとおり前期型です。クローム鏡筒の仕上げはたいへん上質で,Alpaカメラ用に作られたレンズ,という趣きを持っています。 #レンズ #MF #P.Angenieux #Alpa #90mm #F2.5 #望遠 #単焦点
MFレンズ Alpa P.AngenieuxMOR
-
Alpa Retrofocus 24mm F3.5
AngenieuxはAlpaカメラ用レンズの主要な供給元でした。この24mm F3.5はAlpaの純正レンズとしてはもっとも広角でした。エグザクタマウント用のType R51やR61と同等の光学系を持つと思われます。また,エグザクタマウント用と同様に絞りはダイアル式で,クローム鏡筒の前期型,黒鏡筒の後期型があります。 Angenieuxはレトロフォーカス型のレンズを最初に製品化したメーカーとしてたいへん有名です。最初に35mm,その後,28mm, 24mmの一眼レフ用レンズをレトロフォーカス型でリリースしています。一眼レフカメラのミラーを避けるためにレンズは長いバックフォーカスが求められますが,広角レンズにおいて長いバックフォーカスを確保するために逆望遠型の光学系としたものがレトロフォーカス型です。レトロフォーカスという語は本来はAngenieuxのレンズの固有名でしたが,逆望遠型光学系を表す一般名詞として使われるほどレトロフォーカスという名は広く知られています。言ってみれば,ホッチキスやゼロックスみたいなものでしょうか。Angenieuxはレトロフォーカスという商品名を商標登録しなかったことを悔やんでいたとどこかで読んだことがありますが,真偽の程はよくわかりません。 Alpa用にAngenieuxが供給した広角レンズは24mmのほかに28mmがあり,ほとんど同じ外観です。しかし,24mmのほうがより生産数が少なく,クローム鏡筒,黒鏡筒あわせて1200本足らずだったようです。この個体は距離指標がフィート表示ですが,メーター表示の個体も存在し,それはよりレアだということです。 Alpa用レンズの多くはフィルターが専用の嵌め込み式で,専用の純正フィルタの中古品を見つけるのは難しいいうえにやたら高価です。そのため,普通のステップアップリングの雄ネジ部分を少しヤスリで削ってレンズのフィルタ枠に嵌め込んで,ねじ込み式のフィルタが使えるようにしています。最後の写真に62mm径の保護フィルタを取り付けた例を挙げています。実用的にはこれで問題はないのですが,このようにすると,今度は純正のキャップやフードが取り付けられないためそれはそれで不便です。 Alpaはどこまでいっても不便さを楽しむ気持ちがないと使えないシステムなのかもしれません。しかし,たとえどんなに使いにくくてもどうしても使ってみたいレンズがたくさんラインナップされていることも事実でなんとも罪深いカメラ・レンズたちです。 #レンズ #MF #P.Angenieux #Alpa #24mm #F3.5 #広角 #単焦点
MFレンズ Alpa P.AngenieuxMOR
-
AUTO ROKKOR-PF 55mm F1.8
Auto Rokkor 55mmレンズは最初F1.8で1958年にミノルタの最初の一眼レフSR-2とともに登場します。レンズ先端部分(というか内側の鏡筒)が銀色のもので,プレビューレバーが円筒形のつまみが付いています。これが前期型で私が所有している個体もこのタイプです。 その後,フィルター径が55mmから52mmに縮小されて絞り羽根も8枚から6枚に減っています。プレビューレバーも円筒形のつまみがなくなって,半円形のでっぱりがついているだけになって,いろいろな意味で小型化かつ簡素化されています。ロッコールレンズは基本的にはフィルター径は55mmなので微妙に中途半端な小型化です。 さらに,次の代ではF2.0になってより普及価格帯向けとなって,普及価格のカメラとして登場したSR-1とともに1959年に発売されます。Auto Rokkor時代の55mmレンズはこの3つだけのようですが,その後,MC rokkorになってから55mm F1.7という標準レンズになりますが,この55mm F1.7のレンズはAuto Rokkorの55mm F2のレンズ構成を継承しているという説があります。その意味で,Auto Rokkor 55mm F1.8は最初期に出てそのまま消えたレンズの系譜なのかもしれません。Auto Rokkor時代はやわらかい描写が主たる特徴だと思いますが,その後のMC RokkorからMD Rokkorへと時代がすすむにつれてより解像度が重視されていく傾向があってそのような流れのなかでAuto Rokkor 55mm F1.8のレンズ構成の系譜は淘汰されてしまったのかもしれません。 ただし,Auto Rokkor 55mm F1.8の前期型は解像度が高いとの説もあります。実際,撮影をしてみてもそれなりに高い解像感があります。もちろん,古いレンズなので逆光性能などはそれなりですが,古い時代のレンズなのに想像以上にカチッとした写りです。普段使いのレンズとしてなんの問題もないと思います。 下手をするとミラーレスカメラ用のマウントアダプター(新品)よりも安いお値段で入手できてしまうかもしれません。兎に角,一眼レフカメラのセットレンズとして世の中に出たレンズなので数はいっぱいあります。よって安い。基本設計が1958年頃とすると既に還暦を過ぎています。ある意味20世紀中頃のレンズ性能の高さを実感させてくれます。安くてよく写るレンズだと本当に思います。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/AUTO%20ROKKOR-PF%2055mm%20F1.8 に置いています。 #レンズ #MF #MC_ROKKOR #SR #Minolta #55mm #F1.8 #標準 #単焦点
MFレンズ SR MinoltaMOR
-
Canon EOS5 QD
デジタル一眼レフカメラのEOS 5Dではなく,1992年に登場したフィルム一眼レフカメラのEOS5です。EOSの後に半角スペースがあるかないか,という微妙な違いがありますが,EOS5 QDというのは日本国内向けの名前で,日本と北米以外ではEOS 5という名称だったのでさらに混乱しそうです。また国内向けのEOS5 QDのマニュアルにはEOS 5QDと書かれていて半角スペースの位置にまったく一貫性がありません。まぁ,だからどうだっってことはないのですが,たぶんメーカーも何も考えていなかったのでしょう。 EOS5は視線入力が初めて搭載されたカメラでした。私の場合,最近流行の瞳AFと聞くと視線入力のことかと思ってしまうのですが,当時のカメラを知らない世代の人は視線入力とはなんのことか意味がわからないかもしれません。EOS5には測距点が5つあって,中央がクロスセンサー,両側2個づつの4個は縦センサーでした。イマドキのミラーレスならセンサーのほぼ全面でピント合わせが行えますが,当時は5つの測距点でも測距点の数としては多かったのです。それで,たくさんの測距点からピントを合わせるための1つを選ぶのはたいへんだろう,という発想がでてきます。ファインダーをのぞきながら,ピントを合わせたい測距点を見つめるとその測距点が選ばれてピント合わせが行われる,という画期的な機能が「視線入力」だったのです。メガネをかけていない人はそれなりに視線入力で測距点を選ぶことができましたが,メガネをかけているとあまりうまくいかないこともあったようです。私自身はメガネをかけていないので,ほとんど不便を感じることなく,視線入力の恩恵にあずかることができました。瞳の個人差に対応するためにキャリブレーションの機能があったりしてとても未来的な雰囲気を出していたカメラです。 このEOS5は自分で買ったはじめての一眼レフカメラでした。当時,開店したばかりのとても小さなカメラ屋さんが,発売されたばかりのEOS5をたいへん安値で売っているという折り込み広告を入れていたので,カミさんといっしょにお店に行ったことを今でもよく覚えています。このお店はデモ機として仕入れた個体をデモに使わずに新品のまま売ってしまう,という禁じ手で安値を実現していたようです。当然,1台限りの特価だったのでもともとEOS5を買う気満々だったこともあって,即決で買って帰りました。そんなわけで,この個体の背面下部には「DEMO」という刻印が入っています。 このEOS5はほぼ10年にわたって世界中を連れ歩いて使い倒しました。デモ機として頑丈に作られていたのか,あるいはたまたまアタリの個体だったのかはまったくわかりませんが,故障することなく必要な時に必要な写真を残してくれました。明るく見やすい代わりにピントの山がほとんど掴めない素通しのようなファインダーには閉口しましたが,AFで使う分には快適でした。MFで使うことは想定されていないカメラだったのでしょう。 ここ15年ほどは電源も入れずに放っていたのですが,電池を入れたらちゃんと動きました。シャッターも切れるし,フィルムも巻き上げるし,AFも動作します。新品で買ってからほぼ30年が経っていますが,ちゃんと生きていました。このことは,ちょっとした驚きでした。バブル経済がはじけるタイミングと相前後して発売されたEOS5は色々な意味で贅を尽くして作られたカメラだったのかもしれません。 久しぶりにEOS5に電池を入れて30年前のカメラが動く様子を見て,このカメラといっしょに出かけた様々な場所のことを懐かしく思い出しました。 #カメラ #レンズ交換式 #一眼レフ #AF #Canon #EOS5 #35mmフィルム #フルサイズ #視線入力
レンズ交換式カメラ EF CanonMOR
-
CANON LENS 25mm F3.5
Canonがレンジファインダーカメラを作っていた1956年に登場したレンズです。当時25mmの画角は超広角で,かつこのレンズは25mmで世界で最も明るい(ZeissやNikonよりF値が半絞り小さい)レンズでした。こういうスペック重視なところは現在と変わらずCanonらしいなぁ,と思ってしまいます。 レンズ構成は2群4枚のトポゴン型の後群の後ろに「無限遠曲率の特殊光学ガラス」を追加して収差補正を行っています。「無限遠曲率の特殊光学ガラス」という表現は,Canonのオフィシャルサイト内のCanon Camera Museumの説明です。要するに,最後面に板ガラスを追加した,ってことです。簡単なことをわざわざ難しく説明するというのはなんだかなぁ,と思わなくもありませんが,このような変形トポゴン型のレンズはたぶん,Canon 25mm F3.5が唯一無二だと思われます。 トポゴン型レンズは,まるでビー玉のように大きな曲率をもつ半球状の2組のレンズが向かいあって配置される対称型のレンズで,Carl Zeissのロベルト・リヒテルによって戦前に発明されました。歪曲が非常に少ないため,航空測量用のレンズとして使われたようです。その後,レンジファインダーカメラのContax用のTopogon 25mm F4として投入されます。歪曲は小さいのですが,周辺減光が半端なく大きい,という特徴を持ちます。ZeissのContax用トポゴンは数も少なくたいへん高価です。Zeissの超広角レンズはTopogonはこの一代限りで終わり,Biogonや15mmのHologonに置き換わります。 トポゴン型構成のレンズはレンズエレメントの製作が難しいためか,あまり多くはなく私の知る限り2つしかありません。ひとつはトポゴンコピーとして知られるNikonのW-Nikkor C 2.5cm F4です。このレンズも繊細で美しいレンズですが,本家のTopogon以上に高価で取引されているようです。もうひとつはソ連製のOrion-15 28mm F6です。Orionは第二次世界大戦のどさくさでソ連が接収した多くのレンズ(と技術)の末裔ではなく,Zeissから技術供与をうけて独自に開発されたソ連オリジナルのレンズだそうです。Orionは数も多く,ソ連製ということもあってそれほど高価ではありません。 Canonの変形トポゴン型レンズである25mm F3.5は1970年代まで現役の20年にわたるロングセラーだったようです。また,このレンズによって撮られた多くの写真が写真雑誌の月例コンテストなどに多く入賞していたようです。撮影に使われたカメラはLeitz Minolta CLが多かったとか。一番重要なのは写真の腕とセンスなのでしょうけれど,このような武勇伝を聞くとこのレンズを使えば自分もよい写真が撮れそうな気がしてきます。 #レンズ #MF #Canon_Lens #L39 #Canon #25mm #F3.5 #広角 #単焦点 #Topogon
MFレンズ L39 CanonMOR
-
Carl Zeiss Jena BIOTAR 5.8cm F2 T
Carl Zeiss JenaのBiotarです。4群6枚構成の典型的なダブルガウス型のレンズで,グルグルボケで有名です。戦前の初期型は球面形状の絞り羽でしたが,戦後に登場した前期型では通常の平面形状の絞り羽となっています。また,前期型以降はモノコーティングが施されており,レンズ銘板には赤字でTの刻印がはいっています(中期型の途中からTの刻印は省かれます)。 旧ソ連製のHelios-44がグルブルボケで一部のインスタな人たちにウケているようですが,Biotarはそのコピー元となったレンズです。第二次世界大戦の終戦時にソ連はドイツから技術者も含めてレンズに関するあらゆるものを接収してコピーを作り始めています。その後,ソ連製レンズは単なるコピーから独自の発展をしていきます。 Biotarは前期型の一部を除いて全てシルバー鏡筒でした。この個体はブラックの前期型でシリアル番号が327万番代ですので,1949年頃に製造されたと思われます。また,外観からおそらく前期型のなかでも少し改良が加えられた第二世代のモデルだと考えています。前期型は最短撮影距離が90cmでその後のモデルに比べてかなり長いので実用性を考えれば中期型以降のほうが便利です。しかし,中期型以降と前期型以前では少し画作りが違うように感じられ,かつ,前期型のほうが個人的な好みにあっているように感じています。 #レンズ #MF #Biotar #M42 #Carl_Zeiss #Jena #58mm #F2 #標準 #単焦点
MFレンズ M42 Carl Zeiss JenaMOR
-
Carl Zeiss Sonnar 50mm F2
Sonnarといえばベルテレと脊髄反応してしまうくらい有名な設計者による有名なレンズです。1931年にベルテレが写真機用(Contax)用Sonnarとしてはじめて設計したレンズは5cm F2でした。Sonnarの特許そのものは1929年にとっており,その後すぐに,映画撮影機用のSonnarが設計されています。ベルテレは1900年生まれだそうですので30歳前後で後世まで残る発明を世に送り出したことになります。もちろん時代背景が異なるので,現在の我々と同列で比較することが難しいことは言うまでもありませんが,それにしてもたいへんな仕事をした人物だったことは想像に難くありません。 収差の補正には多くのレンズを用いた方が有利ですが,レンズのコーティングが十分ではなかった時代には出来る限り空気とガラスの境界面を少なくすることが求められました。そのような要請に巧みに応えたのがSonnarだったといえます。最初に設計された開放値F2のレンズは3群6枚,その後に設計された開放F1.5,いわゆる「イチゴのゾナー」は3群7枚です。3枚貼り合わせのレンズがSonnarの特徴だと認識していますが(とても短絡的です),後世のレンズでSonnar銘のものはあまりそのような構成に拘らずに名前がつけられているものもあるようです。 手元にあるSonnar 50mm F2のレンズはシリアルナンバーが149万番台ですので,1953年から1959年の間の比較的早い時期にCarl Zeiss, Oberkochen, West Germanyにおいて生産された個体であると想像されます。ベルテレがSonnarを設計したときにはまだカラーフィルムは開発途上だったはずですし,この個体が世に出た時はカラーフィルムは存在していたけれどもまだ一般的ではなく,黒白フィルムを使うのが普通だった時代です。ネット上ではこってりした色のりのレンズだというようなコメントも見られますが,どうせならモノクロ時代のレンズはモノクロで撮ってみたい,と思います。 また,この個体はフィルター枠に当たりがあってフィルターがねじ込めないので,被せ式のコダックの(かなり無骨な)フードにシリーズ6のフィルタを挟んでいます。アメリカ風味のごついフードとちょっと繊細なイメージのSonnarは完全にミスマッチです。見た目的には全然ダメですが,古いレンズをフードなしで使うのはやや無理がありますから,実をとったということで自分的には納得しています。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Sonnar%2050mm%20F2 に置いています。 #レンズ #MF #Sonnar #Contax_C #Carl_Zeiss #50mm #F2 #標準 #単焦点
MFレンズ Contax C Carl ZeissMOR
-
COLOR-SKOPAR X 1:2.8/50
Voigtlanderのベッサマチック用COLOR-SKOPAR Xです。50mm F2.8の典型的な3群4枚のテッサー型のレンズです。Schneider-KreuznachでTessarを設計したかの有名なトロニエ博士がVoigtlanderに移籍後に設計したレンズで,デッケルマウント用のColor-Skoparは1959年から1967年までの間に20万本弱生産されたそうです。そのため,中古レンズは豊富にあり,状態のよいものを選ぶことができます。 デッケルマウントのレンズでは当たり前の最短撮影距離が1mという使いにくいレンズですが,作りは贅沢で真鍮(たぶん)の削り出しの精巧なマウントとアルミの短い鏡筒が美しく,小さいけれどもずっしりとした重みを感じます。 Voigtlanderは1756年に創業した世界最古の光学メーカーですが,1950年代中頃をピークに日本製のカメラにおされて業績は悪化していきます。1956年にはカール・ツァイス財団に売り渡され,1969年にはツァイス・イコンに吸収合併,1971年にはツァイスが民生用レンズの生産をやめることを決定したことに伴いローライに商標権を売却,1972年には伝統あるブラウンシュバイクの工場が操業を停止しています。そのローライも1981年には倒産しています。 1999年に日本のコシナがVoigtlanderの商標の通常使用権の許諾を得てかつてのレンズ銘で新しいレンズを開発,販売しています。Skoparもそのような新しいレンズに与えられた銘の一つです。ただ,レンズ銘は伝統あるものですが,レンズそのものは普通にコシナのレンズというだけで,かつてのVoigtlanderのテイストが感じられるかどうかは少し別の話のように思います。 この個体はシリアル番号から1963年製であることが推察され,デッケルマウントのカメラがまだ勢いがあった頃のものだと考えられます。ヤフオク!で入手しましたが,純正のスカイライトフィルタとかぶせ式の汎用品と思われるフードがついていました。コンディションは可もなく不可もなく,実用には特に問題はないものでした。 #レンズ #MF #COLOR-SKOPAR #DKL #Voigtlander #50mm #F2.8 #標準 #単焦点
MFレンズ DKL VoigtlanderMOR
-
Contarex Distagon 25mm F2.8
Contarex用の広角レンズです。Contarex用レンズは主な焦点距離において明るい(F値が小さい)ラインと暗いラインの二本立てになっていました。明るいレンズとして35mm F2, Planar 55mm F1.4, Planar 85mm F1.4, Sonnar 135mm F2.8がラインナップされ,暗いレンズとしてDistagon 35mm F4, Planar 50mm F2, Sonnar 85mm F2, Sonnar 135mm F4というラインナップでした。しかし,これらのレンズよりも広角または望遠側のレンズについてはさすがに需要が少ないということもあってか1つの焦点距離に対して1つのF値というラインナップでした。 レンジファインダーのContax用のレンズ(Contax Cマウントレンズ)では広角は(おおよそ)対称型のBiogonでした。しかし,一眼レフでは長いバックフォーカスが必要となるため,Contarexではレトロフォーカス型のDistagonがラインナップされていました。現在では標準ズームの広角端にすぎない25mmもContarexが登場した1960年代は超広角レンズという扱いでした。また,Carl ZeissのレンズはBiogonの時代から超広角は24mmではなく25mmという焦点距離のレンズをラインナップしていて,それは現在まで続いています。NikonやCanonもレンジファインダーカメラの時代には25mmをラインナップしていましたが一眼レフの時代になると24mmになっています。 Contarex用の(当時としては)超広角レンズであるDistagon 25mmはかなり特殊な位置づけと認識されていたのか,明るさ(開放F値)は1種類だけで中庸を狙ったF2.8のものが1963年にリリースされています。前期のクローム鏡筒のものと,後期の黒鏡筒のものがあり,Wikipediaによると両者をあわせて6,630本生産されたということです。Alpaのレンズを見ていると十分に多い数字に見えてしまいますが,Zeissが自前のカメラ事業から撤退した1973年までの約10年間の生産数とすると,平均して1年に660本あまりしか生産されておらず,工業製品としてみるとその生産数は非常に少ないと言えます。実際,超レアというほどではないにしても,十分にレアな部類に入るレンズだと思います。 手元の個体は写真に見る通りクローム鏡筒の前期型で,最短撮影距離は17cmでほとんど広角マクロとして使えるレベルの近接能力をもっています。寄れる,ということは撮影の幅が広がるということで使い勝手がよいレンズです。しかし,古い時代の広角レンズにありがちな周辺光量落ちや逆光耐性の低さは普通にありますから,これらの要素をレンズの味として楽しめなければ使いにくいかもしれません。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Distagon%201%3A2.8%20f%3D25mm に置いています。 #レンズ #MF #Distagon #Contarex #Carl_Zeiss #25mm #F2.8 #広角 #単焦点
MFレンズ Contarex Carl ZeissMOR
-
Contarex Distagon 35mm F4
1959年に西ドイツのZeiss Ikonから発売されたContarex用の交換レンズのひとつです。ContarexはZeiss Ikonが威信をかけて開発した究極の一眼レフカメラ,といってよいと思います。商業的には小さくて軽くて壊れないNikon Fをはじめとする日本製カメラに完敗してしまいます。結果として,Zeiss Ikonは1971 (1973?)年にカメラ事業から撤退します。 よく言われるようにContarexのrexはラテン語の王を意味していて,Contaxの王様,という意気込みで名付けられたものです。レンジファインダーのContaxは戦後はLeizがM型Leicaを出したことで大きく水をあけられZeiss Ikonは一眼レフに活路を見出そうとしたのだと思われます。しかし,凝った機構のために,兎に角,大きく重く高価でした。 現代の感覚では暗いレンズであってもContarexの現役時代はたいへん高価であったようです。さすがに現代では比較的安価に(といってもコンディションがよいものはそれなりのお値段で)入手することができます。 35mm F4に限ったことではないのですが,後年のContax/YashicaマウントのCarl Zeissのレンズはどちらかというと派手な発色でコントラストがはっきりした印象がありますが,レンジファインダーのContax Cマウントや一眼レフのContarexマウントのレンズはモノクロ時代のレンズということもあって,どちらかというと階調を重視したバランスであるように思います。それでも解像感は十分で階調と解像感をうまくバランスさせているのがContax/Yashicaマウントより前のZeissのレンズのよいところであると勝手に考えています。 手元の個体はシルバー鏡筒の前期型で,最短撮影距離は19cmで35mmレンズとしてはとても寄れます。これはいざというときには本当に便利です。ボケ味とかそういう概念がない時代のレンズなのですが,絞り羽根は8枚あります。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Distagon%201%3A4%20f%3D35mm に置いています。 #レンズ #MF #Distagon #Contarex #Carl_Zeiss #35mm #F4 #広角 #単焦点
MFレンズ Contarex Carl ZeissMOR
-
Contarex Planar 50mm F2
1958年に登場したZeiss Ikon渾身のカメラContarex用の標準レンズです。ContarexはZeiss Ikonがカメラ事業から撤退する1973年で市場から退場しますが,最初から最後までラインナップされていたレンズの一つがこのPlanar 50mm F2です。Wikipediaによると4群6枚構成のレンズ構成で銀鏡筒で最短撮影距離が30cmの前期型と1965年に登場したフラッシュマチック機構を組み込んで黒鏡筒,最短撮影距離38cmの「ブリッツ」があって,Contarex用レンズ最多の計37,768本が製造されたとのことです。 しかし,実際には,レンズ構成は第3群の張り合わせレンズを分割して薄い空気レンズを挟んだ5群6枚構成の拡張ダブルガウス型で,4群6枚構成のPlanarはカタログ上で見られるだけで本当に出荷されたのかどうかはっきりしません。また,鏡筒の色についても,ブリッツではない黒鏡筒モデルもあり,これは,前期型の単なる色違いのようです。しかもその黒鏡筒モデルは,ブリッツタイプのように距離環だけがアルミの銀色でそれ以外の鏡筒部分が黒なのではなく,距離環も含めて黒いオールブラック版と呼ばれるモデルがごくわずか存在するのです。 どのタイミングでオールブラック版が市場に投入されたのかはっきりしませんが,おそらく,銀鏡筒,オールブラック版,距離環のみ銀色の黒鏡筒という順番でリリースされているであろうと考えています。オールブラック版はほとんど見かけることはないのですが,なぜか,私の手元にはSonnar 135mm F4のオールブラック版があるので,Planar 50mm F2以外にもオールブラック版が存在することは間違いありません。しかし,全てのモデルにオールブラック版があったかどうかは私が調べた限りではよくわかりません。軽く検索した範囲では,Planar 50mm F2の他に,Sonnar 85mm F2, Distagon 25mm F2.8は本物らしきものが出品されていました。 だからどうだ,という話は何もありません。私の手元のPlanar 50mm F2は前期型,最短撮影距離が30cmの銀鏡筒モデルです。シリアル番号は261万番代なので,1959年か1960年ごろの製品で,Contarex用レンズとしてはかなり早い時期のものだと思われます。Zeiss Ikon純正のバヨネット式フードは50-135mm用というかなり大雑把なものです。レンズ先端にはネジを切ってあるのでねじ込み式のフィルタを取り付けることもできますが,純正フードとは共存できない,という微妙な仕様です。フィルタとフードを両方使いたい場合は,バヨネット式のフィルタを取り付けてからフードをとりつけるか,ねじ込み式のフィルタを取り付けてから社外品の適当なねじ込み式のフードをつけるしかありません。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Planar%201%3A2%20f%3D50mm に置いています。 #レンズ #MF #Planar #Contarex #Carl_Zeiss #50mm #F2 #標準 #単焦点
MFレンズ Contarex Carl ZeissMOR
-
Contarex Sonnar 85mm F2
Sonnarは1929年にベルテレ博士によって発明されたレンズ構成で,コーティングが発明される前の時代に,空気とガラスの境界面を可能な限り減らして収差を補正し,大口径を実現するものでした。貼り合わせレンズにより,わずかに3群に抑えていることが特徴です。3枚貼り合わせレンズが2群と1枚の前玉の組み合わせという3群7枚構成の85mmのSonnarはSonnarタイプの設計思想が存分に活かされたレンズと言えると思います。 モノコーティングが実用化されると,レンズ群の数を少なくして空気とガラスの境界面を減ずることの意味は次第に薄れてきますが,Zeiss Ikonの超高級カメラであるContarexには,85mmと135mmのSonnarがラインナップされました。特に,85mm F2は,コントラスト,階調,ボケ,発色,大口径が高度にバランスした,絶妙の設計で究極のSonnarとの呼び声も高いようです。Zeiss Ikonはこのレンズの設計に力を入れたのだろうと思われます。1958年の最初のContarexとともに登場し,Zeiss Ikonがカメラ事業から撤退する1973年まで製造が続けられました。その間の15年間に7585本が出荷されたようです(Wikipediaによる)。単純計算で月産50本にも満たず,工業製品として成立するとはちょっと思えないような数字です(もちろん,まとめて生産しておいて在庫を少しづつ出荷していたのでしょうけれど)。 とてもよく写るレンズだと思います。もちろん,よいレンズだというプラセボ効果も多分にあるのでしょうけれど,ボケも自然で滑らかなので積極的に開放を使いたくなります。手元の個体は,前期型の銀鏡筒のもので,比較的コンディションのよい個体でしたが,某マエストロにメンテナンスをしていただいたものです。ある特定のマウントアダプタを使うと確実に絞り羽が動かなくなる,ということがわかりました。正常に動作するアダプタとそうでないアダプタの違いはほとんどわからないのですが,レンズの絞り連動用のパーツを確実に壊すというものでした。まさかそんなワナにハマるとは思ってもいませんでした。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Sonnar%201%3A2%20f%3D85mm に置いています。 #レンズ #MF #Sonnar #Contarex #Carl_Zeiss #85mm #F2 #望遠 #単焦点
MFレンズ Contarex Carl ZeissMOR