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Shergoldia laevigata
2015年位から見かけるようになってきたカンブリア紀、Sandu累層の三葉虫群。広西チワン族自治区のベトナムとの国境に近いエリアから産出します。この種類、登場当初はTsinania laevigataと呼ばれていた気がします。特徴的な種類が多いSanduの三葉虫の中では、直ぐに見分けが付くアサフスの仲間です。この産地の中でそれ程珍しい種類ではなく、大きさも5㎝程度の標本も見かけます。見た目だけなら後のオルドビス紀のアサフスと同じです。
Upper Cambrian Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-526 SanduTrilobites
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Hedinaspis canadensis
小型で特徴の少ない種類ですが、尾部が滑らかで側葉の尾部側を中心に少し長めの棘が生えています。ノジュール中から産出する種類なので、どうしても縁取りが明瞭な境界が得難く、特徴が分かる標本は少ないです。初期のAsaphida(目)の仲間ですが、アサフスらしさは感じられません。
Upper Cambrian Ceratopygidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-649 McKay GroupTrilobites
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Euloma sp.
この種類は、大型種が多いFezouata系の中でも小さく平坦で地味な存在です。小さな頬棘こそありますが、目立った特徴も挙げられません。ただ状態の良い標本が滅多になく、風化が進んだ標本であれば入手は容易ですが、この標本の様な綺麗な状態は少ないです。一見すると扁平なカリメネの様に見えてしまいますが、分類上はまるで別物であり、単独の科が宛がわれる位、特殊な種類であったりします。
Ordovician Eulomidae,Ptychoparioidea,Ptychopariida TRI-100 Upper FezouataTrilobites
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Olenellus(Paedeumias) terminatus
カルフォルニア州Pyramid shale Memberからは、最初期の三葉虫が褐色系の母岩で産出します。この産地は現在は、新規の採掘はされていないと聞きます。これらは最も古い三葉虫の一つで、この産地からは、複数の個体が固まって産出し、多くがバラバラに崩れた状態で産出するため、全体像が分かる個体や完全体は滅多に無いのです。各種OlenellusやBristoliaなど、この産地のほぼ完全な標本は、凄い価格が付くのですが、初期の三葉虫は、外骨格が固くなく、化石化するまでに崩壊しやすいため、全体像が残る事が奇跡に近いのです。
Lower Cambrian Olenellidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-327 CarraraTrilobites
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Triarthrus eatoni
軟体部が保存されるニューヨークのTriarthrusは、知られる全ての三葉虫産地の中で最も保存状態が良く、三葉虫研究に重要な情報をもたらして来ました。近年は、この標本でも頭部周辺に点在していますが、三葉虫の卵とされる痕跡も話題になりました。しかし、黄鉄鉱であるが故に立派な標本であっても空気中の水分を吸収し崩壊していくため、WEBや本に載っている様な高額な標本も分解して今は見る影を持たなくなっている標本も多く、購入するのに躊躇する要因でした。当標本は、購入元に寄れば採取から数年寝かせて安定した物を剖出し、腐食防止の薬品で処置した後、コート処理されています。どちらにしても水や陽の光は厳禁であります。
Upper Ordovician Olenidae,Olenoidea,Ptychopariida TRI-153-3 Lorraine ShaleTrilobites
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Calymene blumenbachii
記載年が示すように18世紀始め、三葉虫の概念が認識された最も古くより研究された三葉虫です。博物学においても歴史的な価値があり、コレクターが手放さないため、かつて「Dudley Bug(ダッドリーの虫)」と呼ばれ、多産したと伝えられるC.blumenbachiiですが、現在では市場に登場すことが稀です。現在では保護されていて新たな産出が無いという事もあり、100年以上前に産出して、何代ものコレクターを渡り継いできたコレクションしか存在しないのです。この種類は私が収集しだしてから最も入手したかった種類でもあります。
Middle Silurian Calymenidae,Calymenina,Phacopida TRI-362 -Trilobites
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Degamella sendinoae
貴重な複眼付のキクロピゲ類です。モロッコのキクロピゲ類では最も産出量は多い種類ではありますが、いざ複眼付となると桁違いに希少性は増します。実際にはもう少し立体感はあるとは思われますが、モロッコで幾つか産出するキクロピゲ類の中では、平面的な種類です。Declivolithus titanが同じ母岩に乗っており、遊泳性のDegamellaと偶然出会ったのか、それとも共存す場面があったのか想像が掻き立てられます。 [Left side:Negative,Right side:Positive]
Ordovician Cyclopygidae,Cyclopygoidea,Asaphida TRI-629 KtaouaTrilobites
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Housia vacuna
McKay Groupの初期アサフスの中では、後のアサフスに近い特徴が見える種類だと思います。しかし近年の分類によると所属しているPterocephaliidae(科)は、新設されたOlenida(目)に移籍する説があります。側葉の最尾側に棘があるのがH.canadensis、無いタイプのHousiaが本種という認識です。Housiaという種類は市場を見ていると比較的多く見かけるのですが、状態の良い満足できるような標本が滅多にありません。この標本は、Ventral(裏掘り)ですが、写真で見る限り裏側には見えないと思います。
Upper Cambrian Pterocephaliidae,Anomocaroidea,Asaphida TRI-622 McKay GroupTrilobites
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Deanaspis goldfussi
この種類は鍔の部分が特徴的で、細かいブツブツが縁取るように規則正しく並んでいます。このブツブツは、穴で網の様に使用して餌を濾し取っていたという説がありますが、実際の所は不明です。眼も無く、他の種類の三葉虫とは一線を画した進化を進めていった仲間です。まるでフランス産のような色合いと陽の光でキラキラ輝く母岩を持ちます。
Middle Ordovician Trinucleidae,Trinucleoidea,Asaphida TRI-304 LetnáTrilobites
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Olenellus thompsoni
1980年代に閉鎖されてしまったペンシルバニア州kinzer累層からは、初期の特徴的なオレネルスの仲間が産出していました。本種は一般的な種類ではありましたが、閉鎖から40年以上経った今となっては簡単に入手できなくなっています。kinzer累層のオレネルスは、O.getzi、O.roddyiなど幾つかの種類が確認できるのですが、Wikipediaの情報を参考にすると、他のOlenelloideaと同様にGlabella(頭鞍部中央)の微妙な違いで種を判別しています。少し専門用語が多くて分かり難いですが、 O.thompsoniは、Glabella (L4)の Frontal lobe(前頭葉/両眼の間の上にある膨らみ)の最大幅は、Occipital ring(L0)の最大幅よりも大きい。L2はL0と比較して横に膨らむ。O.getziは、L4 の最大幅が L0 の最大幅より小さいか、ほぼ等しい。L2はL0と同じくらい広い。T3のPleural spinesは、6~8セグメント後方に伸びる。T7の幅は、棘を除くT3の幅の2/3未満。とありますが、実際の化石は明瞭に区別がつかないので、判断できるに至りません。単語の位置関係は、参考リンクからが分かりやすいと思います。 【参考リンク】trilobites.info http://www.trilobites.info/trilomorph.htm https://www.trilobites.info/trilomajor.htm
Lower Cambrian Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-461 KinzerTrilobites
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Sthenarocalymene celebra
インディアナ州産がこの種類の代表的な産地ですが、この標本は隣のウィスコンシン州産です。ウィスコンシン州で本種は、「州の化石(state fossils)」となっています。アメリカでは全ての州では無いですが、州の化石(state fossils)が制定されており、名だたる化石に交じり3つの州で三葉虫が制定されています。因みに他の2種は、オハイオ州のIsotelus maximus、ペンシルベニア州のEldredgeops(Phacops) ranaです。アメリカで他にも州の鉱物、貴石は勿論、昆虫、馬、豆、更にクッキー、モットーなど面白い象徴制定があります。日本でも県の鳥、花などがあると同じなのですが、国が違えば象徴も変ってきます。 【参考リンク】WIKIPEDIA:List of U.S. state fossils https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_U.S._state_fossils
Upper Silurian Calymenidae,Calymenoidea,Calymenina,Phacopida TRI-28-2 Hartung QuarryTrilobites