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Paradoxides gracilis
仏人地質学者Joachim Barrande(1799-1883)により研究され、著書[Systeme silurien du centre de la Boheme](1852)にて詳細な図版が描かれている本種は、三葉虫の研究史に足跡を残している重要な種類として知られます。世界のカンブリア紀の地層で見つかるParadoxidesの中でも収集家に知られる存在です。当時からの産地だったVinice Hillは、長年の採掘により枯渇しており、焦茶で艶のある本標本の様な質感があり、10cmを超える標本は、世界の収集家が放出しない限り市場に出来て来る事はありません。特に大型で頬棘が残る個体は希少価値が高いです。
Middle Cambrian(Drumian) Paradoxididae,Paradoxidoidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-307 JinceTrilobites
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Hydrocephalus minor
Jince累層の独特の色合いと艶のある質感が残ります。同じ産地のParadoxides gracilisに近いですが、そこまでは大きくならず、尾部周辺に流れるような棘があり、見た目の印象は異なります。どちらかというとEccaparadoxides pusillusに近い印象があり、EccaparadoxidesとParadoxidesの中間系みたいな感じかと思います。尾部周辺の棘は、柔らかな棘を持っていたのではと推測できる質感です。
Middle Cambrian Paradoxididae,Paradoxidoidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-122 JinceTrilobites
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Ptychoparia striata
Jince累層では古くから知られた種です。眼も棘もなく地味な印象の種類ですが、Ptychopariida(目)の中のThe・Ptychopariaとも言える元祖的存在でありながら、Ptychopariida(目)廃止の考えからUncertain(未分類)まで降格を余儀なくされている可哀そうな種類であります。元々雑多な分類できない種類の置き場所でしかなかったPtychopariida(目)ですので、Ptychopariaに責任はありませんが。
Middle Cambrian Ptychopariidae,Ptychoparioidea,Ptychopariida TRI-156 JinceTrilobites
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Conocoryphe sulzeri sulzeri
チェコからConocorypheは数種類産出しますが、C.sulzeriは顆粒などないスベスベの体表をしており、艶のある焦茶色の石質で産出します。記載年の古さからも昔から知られた種ではありますが、Jince産は掘り尽くされ絶産して暫く経ちますので、近年は状態の良い個体が本当に少なくなってしまいました。
Middle Cambrian Conocoryphidae,Ptychoparioidea,Ptychopariida TRI-119 JinceTrilobites
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Agraulos ceticephalus
棘も眼も無い地味な種類です。カンブリア紀チェコ産では、本種の様な地味な幾種か見られます。現在は枯渇していますが、昔はそれなりに産出する種類でありました。見た目で区別が難しいチェコのカンブリア紀地味種ですが、一つの見分け方に母岩や三葉虫本体の色が目安にできます。本種は、鮮やかなオレンジ色の本体なので、区別しやすいです。綺麗なオレンジ色は、生存時からこの色ではなく鉱物置換の影響でしかありません。
Middle Cambrian Agraulidae,Ellipsocephaloidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-342 JinceTrilobites
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Phalagnostus prantli
カンブリア紀を代表する生物であったAgnostida(目)の仲間ですが、世界中のカンブリア紀の地層で見つかるものの、米国ユタ州以外では、それほど多く産出する訳ではありません。Phalagnostusは、チェコの代表的なJince(累層)より産出した標本で、頭部と尾部がどちらか眼が無いので分かり難いですが、尾部は片側だけ二重の輪(右側)になっているのが特徴です。また胸部は2節、確認できます。
Middle Cambrian Phalacromidae,Agnostoidea,Agnostina,Agnostida TRI-168 JinceTrilobites
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Conocoryphe cirina
チェコのConocorypheは幾つかの種類がありますが、この種類は薄茶色から黄色い標本が多いです。通常の眼の無い三葉虫はあまり大きくなりませんでしたが、Conocorypheは比較的大型化した種類であります。棘も無く平坦でシンプルな体形をしています。眼の無い種類は大抵群れで暮らしているのですが、この標本でも別個体の姿がります。
Middle Cambrian Conocoryphidae,Ptychoparioidea,Ptychopariida TRI-121 JinceTrilobites
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Eccaparadoxides pusillus
チェコのJinceでは比較的見かける種類ですが、不完全な標本が多く、完全体での入手が難しい種類の一つです。同じ産地のParadoxididae(科)の近縁種であるParadoxides gracilisよりは小型で、Hydrocephalus minorと大きさ的には近いのですが、本種は尾部周辺のフリルが特徴的で風雅です。これらの種類に共通ですが、比較的初期の三葉虫のためか棘がそれ程は固くなく平坦な体形をしています。美しい姿をしていて産出が途絶えた現在でもコレクターに根強い人気があります。
Middle Cambrian Paradoxididae,Paradoxidoidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-458 JinceTrilobites
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Ellipsocephalus hoffi
チェコを代表する種類であり、チェコ産の中では最もポピュラーな種類かと思います。しかし、絶産して時間が経ちますので、近年は簡単には入手できなくなってきました。この地味な種類は、群れで暮らしていた為、この標本の様に群衆状態で見つかるのは一般的な産状です。WIKIPEDIAでも盲目の底生形と紹介されていますが、実際には小さな眼があるとされ、多くの個体が小さく明瞭でないため、所在がはっきりしていなかったのですが、瞼翼の形状などからも高い確率で存在していたと思われます。
Middle Cambrian Ellipsocephaloidea,Ellipsocephaloidea,Ptychopariida TRI-19 JinceTrilobites
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Rejkocephalus rotundatus
Rejkocephalus=Hydrocephalusという認識で良いですが、バラバラになりかけている事もあり、違いが良く分かりません。最後の写真に以前のオーナーか採取者の記載があるのですが、Eccaparadoxides pusillusやParadoxides gracilisといった近縁な仲間の表記もありますので、同定は難しくなっています。この化石は、複数体の個体がまとまって散乱しているJinceらしい標本で、この様な産状の化石は、当時の状況を想像できて面白いと思います。
Middle Cambrian Paradoxididae,Paradoxidoidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-394 JinceTrilobites
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Conocoryphe gerlinda
眼の無い種類であるConocorypheは、チェコ、ボヘミア地方からも幾つかの種類が産出しますが、種類の違いが分かり難く、カンブリア紀のチェコ産らしい特徴の無い地味な感じの種類です。C.gerlindaは、頭部に一面細かいブツブツがあるので比較的分かりやすい種類です。入手できるチェコのConocorypheのもう一つの見分けの方法が、母岩の色です。本種は褐色系、C.sulzeriは焦茶系、C.sulzeriは黄土色系と何故か分かりやすく区別できます。
Middle Cambrian Conocoryphidae,Ptychoparioidea,Ptychopariida TRI-370 JinceTrilobites
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Sao hirsuta
チェコで三葉虫研究史に功績を残したJoachim Barrande(1799-1883)が、本種の成長段階を詳細に記載した図版(※1)が有名です。この書籍には約20もの個体が描かれているのですが、実は成体の完全な個体は描かれていません。当時から成体の状態の良い標本は少なかったと思われます。当時ですら完全体の入手が困難なので、閉鎖産地となった現在、図鑑の中でしか見ることが出来ない様な種類であり、多くのコレクターは名前は知っている物のコレクション出来ていない代表的な種類かと思います。一般的に見れば地味で頭部から胸部まで全身がツブツブで覆われていて、見方によっては不気味で気持ち悪さを覚える方もいるかと思いますが、三葉虫研究史に名を残した種類という事で、募集価値のある種類です。因みにSaoという短い属名は、全三葉虫の中でも最も短い名前です。 ※1:SYSTEME SIKURIEN DU CENTRE DE LA BOHEME Vol.Ⅰ.Planches.Crustaces:Trilobites(1852)
Middle Cambrian Solenopleuridae,Ptychoparioidea,Ptychopariida TRI-570 JinceTrilobites