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Asaphus punctatus
ロシア産アサフスの防御姿勢の個体には傾向があり、幼体での産出が殆どであります。この標本も成体の半分ほどの大きさしかない幼体です。推測するのに、まだ体の小さい幼体では、身を守る時に防御姿勢を取る方が有効であったと思われます。生息環境に幼体の大きさでは脅威になり、生体の大きさに成長すると太刀打ちが出来なくなる天敵がいた可能性はあり得ると思います。
Middle Ordovician Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-38-2 Asery levelTrilobites
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Nobiliasaphus nobilis
ポルトガルの他、スペインやフランスなど西ヨーロッパに広く産出する種類です。長く太い頬棘が特徴で、アサフス(目)の特徴を良く表しています。ポルトガル産は、褶曲の影響を受けやすく、実際の体形より伸ばされていたり、体高が低い潰された産状ですので、他の産出エリア産と比較して別種の様な姿の場合もあります。
Middle Ordovician Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-85 ValongoTrilobites
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Illaenus sarsi
ロシア産のキャラメル色や、スウェーデンの緑灰色とも違う漆黒の化石となるノルウェー産です。産出種としてはバルト海沿岸の主要産地と同じか近似ですが、色が違うだけで印象が全く異なるのは不思議なものです。2010年代に研究者から提供された標本が、マスターフォッシルを通じて幾つか流通しましたが、簡単に手を出せない位に高価にコントロールされていた数点の標本の一つです。少し待ては、もう少し安価に供給されるかと思いきや当時流通した標本以外は未だに流通してきません。「Fossils and Strata, Number 56,Trilobites of the Middle Ordovician Elnes Formation of the Oslo Region, Norway」を見るとオスロ近郊の広い範囲に産地があるようですが、この黒い三葉虫が産出するのは、多分狭い範囲だけで場所は公開されていないようです。
Middle Ordovician Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-626 ElnesTrilobites
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Hoekaspis matacensis
大きなノジュールから産出するボリビア産のアサフス。昔は比較的流通し当時は価格も高くはなかったので、コレクターにも軽視しがちと感じます。近年は新規採掘の標本はありません。1種類だけの様に見えますが、混同しているだけで数種類いるとされ、H.megacanthaなど幾つかの種が市場でも見られます。ただ資料的な情報が無く産地も含め謎が多いため、正解が分からない状況です。この標本は、供給元によれば古いコレクションからの放出品であり、この地からは珍しい頬棘がしっかり残る個体です。元々頬棘があるのが普通なのか、他に多く出回る頬棘が無い種類は別種なのか判断はつきません。 【標本リンク】FossilEra https://www.fossilera.com/fossils/3-5-hoekaspis-trilobite-bolivia--2
Middle Ordovician Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-254 CoroicoTrilobites
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Ogmasaphus praetextus
サンクトペテルブルグ産(ロシア)のアサフスが、市場では圧倒的な供給量と質を兼ね備えているので、余り関心を集めないスウェーデン産のアサフスです。バルト海沿岸を中心に広くオルドビス紀のアサフスは見つかるのですが、この標本の様に全体的に状態として悪く、産出量も極めて少ないです。スウェーデン語が良く分からないので、詳しい産地情報も正確には分からないですが、南部のバルト海に近いエリアと想定されます。
Middle Ordovician Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-186 -Trilobites
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Olenoides vali
三葉虫コレクターにとってオレノイデス(Olenoides)という種類は、憧れであり羨望の的ですので、オレノイデスは三葉虫の一つの頂点ではないかと思います。カンブリア紀ならではの扁平な種類でありながら、立体的で固い棘に覆われた姿は迫力さえ感じさせます。バージェスの影響もあり一般に知名度のある数少ない三葉虫の種類であり、名前もカッコいい響きがあります。その一方、産出量は極めて少なく完全体はおいそれと手が出せない高額な種類であります。
Middle Ordovician Dorypygidae,Corynexochoidea,Corynexochina,Corynexochida TRI-489 Marjum shaleTrilobites
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Pliomera fischeri
Pliomeraという種類は、派手な棘などありませんが、彫りが深く独特の存在感のある種です。私を含め三葉虫コレクターにもファンが多い種類の一つでないかと思います。オルドビス紀ロシア産では、アサフスが優勢でファコプスの仲間は少数派であり、実際に産出量も多くはありません。もう少し小型ですが欧州各地から産出するPlacopariaに良く似ております。真っすぐ伸びている個体も大きいと迫力がありますが、この個体の様に少し姿勢に動きがあると、生物らしくて、よりこの種の魅力が増す気がします。
Middle Ordovician Pliomeridae,Cheiruroidea,Cheirurina,Phacopida TRI-60 Kunda LevelTrilobites
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Dionide mareki
ポルトガルの三葉虫の中でも産出は少ない方で、何より頬棘が残っている個体が非常に少ないです。頬棘の有無で印象ががらりと変わりますが、この個体の様に両方の頬棘が残っている個体を見ると、頬棘の長さのが体長を上回ります。眼が無い種類でしたので、触覚以外に頬棘は、進路障害物の確認や遊泳時のバランスなど重要な役割があったと考えられます。 2023/6/10標本を入替ました。 Right side:Positive(1-4) Left side:Negative(5,6)
Middle Ordovician Dionididae,Trinucleioidea,Asaphida TRI-353 ValongoTrilobites
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Ectiillaenus giganteus
ポルトガル産では比較的多く見られる種類で、10cmを超えるような大きな個体も見られます。本種自体は、フランスなど近郊のオルドビス紀の地層からも見つかる一般種です。ポルトガル産独特の褶曲を受けて、別の種類かと思われる程に幅広に変形してしまった個体もいます。この標本は自在頬が欠損しているので、どちらが頭か分り難いとおもいますが、写真上側が頭部です。
Middle Ordovician Illaenidae,Illaenidae,Corynexochida TRI-18 ValongoTrilobites
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Illaenus jevensis
ロシアのIllaenusとAsaphusは、一部を除き見分けが付き難く、その割に種類が細分化されていて、発売元の学名だけに私も頼りがちでした。ロシア産については、「Ordovician Trilobites of the St.Petersburg Region,Russia」という良書があるので、再度コレクションの同定見直しを進めています。Illaenusの見分けは、頬棘の長さや丸さ、尾部の形状、頭部と尾部の年輪上の紋、正面から見た時の頭鞍の高さで判断していきます。本種は、丸い輪郭の小さめの尾部、紋の少なさ、一番の決め手は正面から見た時の頭鞍が非常に大きいという事で、再同定しています。17種類ほどあるIllaenusのKey to determinationは、Asaphusと共に、また日記でまとめたいと思います。 1A-2B-3C-4A(I.jevensis)
Middle Ordovician Illaenidae,Illaenina,Corynexochida TRI-102 Asery levelTrilobites
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Colpocoryphe rouaulti
カンブリア紀チェコ産の眼の無い三葉虫Conocorypheに似た名前ですが、全くの別の種類です。この標本はスペイン産ですが、近郊のポルトガルやフランスといった近郊国で同種が確認されて、それらの国で産出する方が多いのですが、スペイン産で間違えではありません。褶曲の影響を受けて別種の様に見えてしまうことが多い本種ですが、この標本は一目でカリメネと分かる形態をしています。
Middle Ordovician Calymenidae,Calymenina,Phacopida TRI-27 Pizarras con calymeneTrilobites
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Eccoptochile almadenensis
Eccoptochileという種類は、モロッコ産の立体的で大型の種類が知名度はあると思いますが、地中海を挟んだ欧州でも産出します。モロッコ産と同様に丸みを帯びた太くて短い棘が特徴です。モロッコ産もそうですが、産出量が少ないことで知られ、ポルトガル産で実物を見られる機会は限られます。
Middle Ordovician Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-413 ValongoTrilobites
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Isotelus mafritzae
北米オルドビス紀を代表する種類であるIsotelusは、カナダとアメリカ東部の広い範囲の地層で見つかります。Cobourg累層も現在は閉鎖されているので、特にカナダ産は出回らなくなってきました。I.mafritzaeという種類は、カナダ産のIsotelusでは多く聞くのですが、実は記載されていない種類の様です。また細い頬棘があるTypeAと頬棘が無いTypeBが確認されています。この標本は、頬棘が無いようなのでTypeBに相当するかと思います。
Middle Ordovician Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-78 CobourgTrilobites
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Porterfieldia punctata
三葉虫のコレクターであってもPorterfieldiaに関心があるコレクターなど殆どいないであろうという地味な種類です。軟体部保存で有名なTriarthrus(トリアルツルス)とは近縁に当たります。本種はTriarthrusと比べれば少し大きく、胸部の中央が横に膨らんだ楕円形をしています。貧酸素域か深い海に生息していたのか眼も持たず、しばしば群れで発見される事がある種類です。 [Left side:Positive,Right side:Negative]
Middle Ordovician Olenidae,Olenoidea,Ptychopariida TRI-386 CarmarthenTrilobites
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Pseudobasilicus lawrowi
楕円形で平べったく、ちょこんと飛び出た寄り目を持つこのアサフスは、とても愛嬌があり、見ていて癒される存在です。三葉虫は、人によっては気持ち悪いと感じる方もいらっしゃると思いますが、この種類を見れば印象も変わる筈です。見た目は大きく変わりませんが幾つかの種があり、P.lawrowiとP.planusが知られていますが、文献で比較するとP.lawrowiの方がしっかりした頬棘があるくらいの違いしかわかりません。
Middle Ordovician Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-82 Asery LevelTrilobites