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Morocops ovatus
最も一般的なファコプスであり、モロッコ産に限らず、ザ・ファコプスといえます。2000年代始めくらいまでは、Phacops speculatorと称され、その後、Barrandeopsという属名に変わり、現在はMoroccopsで落ち着きました。モロッコ産のファコプスは、細かい所まで見ていくと多種多様な種類が現在では提唱されています。本種と比較して複眼や顆粒、体形などがどう様に違うかという基準になる種類に思えます。
Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-23 -Trilobites
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Asaphus punctatus
ロシア産アサフスの防御姿勢の個体には傾向があり、幼体での産出が殆どであります。この標本も成体の半分ほどの大きさしかない幼体です。推測するのに、まだ体の小さい幼体では、身を守る時に防御姿勢を取る方が有効であったと思われます。生息環境に幼体の大きさでは脅威になり、生体の大きさに成長すると太刀打ちが出来なくなる天敵がいた可能性はあり得ると思います。
Middle Ordovician Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-38-2 Asery levelTrilobites
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Flexicalymene retrorsa
Flexicalymeneは、モロッコ産とオハイオ産が多産したので、軽視されてしまいますが、良く見ると完成された姿をしていて、この標本を見ていると美しいなと感心してしまいます。それなりの数が出る産地ですが、完全な防御姿勢で風化が少ない個体を探してみると、コレクターが満足できる品質の標本は少ないのです。 https://muuseo.com/trilobites/items/241?theme_id=20904
Upper Ordovician Calymenidae,Calymenoidea,Calymenina,Phacopida TRI-9-2 ArnheimTrilobites
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Dalmanites limuloides
まだRochester Shaleが閉鎖されていなかった頃は、本種はシルル紀の一般種として軽視される存在でした。当時でも群衆化石はそれなりの高額の標本もありましたが、単一個体の標本は入門種だと私も思っていました。ただ他の産地を見てみれば、ダルマニテスは、同じアメリカ産でもWaldron ShaleやHenryhouseでも結構な希少種ですし、英国産も簡単に入手できるような供給量はありません。現在も状態の良い標本が市場に出てくると直ぐに売りけれる様な人気種であります。
Middle Silurian (Ludfordian) Dalmanitidae,Dalmanitoidea,Phacopina,Phacopida TRI-14 Rochester ShaleTrilobites
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Symphysurus sp.
近年、軟体部が保存された化石が多く発見され注目を集めるFezouata層、何と言っても特徴なのは大型の三葉虫でも軟体部が保存されている事です。拡大しなくても大きな組織の構造が分かるのは、三葉虫の構造を知り得る画期的な産状といえます。この標本は、それでも小さい方ですが、触覚の節構造、頭部から胸部にかけてのグチャグチャに見える部分も内蔵の保存が化石化しているものです。
Lowor Ordovician (Floian) Nileidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-725 FezouataTrilobites
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Coronocephalus gaoluoensis
Coronocephalusは、三葉虫収集家には悩ましい存在です。中国名で王冠虫を名乗る様に美しい種類であり、顔縁の装飾や無数の棘、黄橙色の映える色合いなど、平坦な種類でありながら、孤高の存在感ある種類です。不完全な標本なら二束三文の価値しか無いのですが、ほぼ完全な個体など長年探しても出て来ませんので、ある程度の所で諦めるしかない事に気が付きます。そうは言っても何時か入手のチャンスが来るだろうと気に掛けてはいますが、20年以上収集してても変わりはありませんでした。産地情報も実は謎が多いのですが、市場に出回る個体は湖南省のものと見ています。
Lower Silurian Encrinuridae,Cheiruroidea,Cheirurina,Phacopida TRI-30 XiushanTrilobites
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Cambropallas telesto
カンブリア紀モロッコ産の二大大型三葉虫の小さい方というイメージでしょうか。大きい方のAcadoparadoxidesは30cmを超える巨体で、分類的にはParadoxididae(科)に対し、CambropallasはHolmiidae(科)でOlenellina (オレネルス亜目)に近い系統にあります。モロッコ産が市場に登場した初期から知られ、以前はAndalusianaと呼ばれている個体と混同する事もありましたが、流通している標本は基本的に同じ種類を指していると考えます。背部中央の特に後半に鋭く短い棘が立っているのが大きな特徴です。大型の種類は補修が入っている事が多く、時には完全に模造品も見かける程です。本種も一定以上のレベルの標本は特定の供給元からしか入手できなかったり高価になったりします。完全体は本当に少ない種類なのですが、模造品と見分けるには細部の状況の確認、ポジティブとネガティブが両方揃っていると信憑性は増します。 [Left side:Negative,Right side:Positive]
Middle Cambrian Holmiidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-45 Jbel WawrmastTrilobites
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Ductina(Illaenula) vietnamila
三葉虫コレクターが軽視するけど、実は謎の産地は幾つかあると思いますが、本種も該当するのではないでしょうか。ドイツなどで産出する事で知られる眼の無いファコプスDuctina、小さくて地味で安価なので、意外とベテランコレクターでも所有していない方もいる筈です。近年はIllaenula(Illaenusと紛らわしいが)と呼ばれる事が多くなったり、昔からのD.vietnamicaも混在するなど混乱する状況も見えます。小種名からベトナムと関連するか、ベトナムで近縁種が産出する可能性もあるのかもしれませんが、詳細は分かりませんでした。中国では数少ないデボン紀の三葉虫産地で、市場では本種位しか見かけませんが、Cyphaspidesや眼のあるPhacopsなど三葉虫の種類は知られています。 (中国名:越南沟通虫)
Middle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-34 -Trilobites
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Reedops cephalotes hamlagdadianus
この化石をじっくり見ると、三葉虫コレクターでも気持ち悪いと目を逸らす人もいるかもしれません。無数の巻貝が三葉虫の周辺を蠢いている訳ですから、無理もありません。三葉虫の化石として見た時も、醜い異物として邪魔な存在でしかないので、普通のプレパラーターでしたら、奇麗に取り除いていると思います。ただHammi氏は、当時の環境を伝える価値を理解していますから、非常に手の掛かる、この様な産状の化石を残してくれているのです。巻貝は常に共存していたというより、この三葉虫の死後、腐敗する前に集まってきた掃除屋なのだと個人的には想像していますが、他に理由を考えてみるのも楽しいです。
Lower Devonian (Pragian Stage) Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-1-2 LhandarTrilobites
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Paralejurus brongniarti
一般的なParalejurusで、見た目も完璧とは言えない個体であり、Hammi氏の剖出と言われても表側だけ見てると私も触手が伸びなかったと思います。この標本の特筆すべき所は、裏側の頭部付近です。細かい粒々が確認できます。これは三葉虫の卵であるという説があります。近年ではアメリカNY州から産出する黄鉄鉱化し軟体部が確認できるTriarthrus eatoni(HALL,1838)から、同様に三葉虫の卵とされる学説(#1)が話題となりました。三葉虫は、頭部に産卵口があるとされ、このデボン紀の産地でもHammi氏によれば、他の個体でも頭部裏にしか粒々が発見できないとの事なので、信憑性は一理あるのではと思われます。個人的には、母体の大きさの割に卵が大きく感じたり、もし卵だとしたら、もう少し大量に散乱するのではとも思います。ただ育児嚢の様な器官があって、化石化する前に少し飛び出ただけの可能性もあり、色々想像できます。 【参考リンク】#1 : Pyritized in situ trilobite eggs from the Ordovician of New York (Lorraine Group): Implications for trilobite reproductive biology(2017) https://pubs.geoscienceworld.org/gsa/geology/article-abstract/45/3/199/195237/Pyritized-in-situ-trilobite-eggs-from-the?redirectedFrom=fulltext
Lower Devonian (Pragian Stage) Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-44-2 -Trilobites
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Paralejurus brongniarti
最も一般的なParalejurusで、モロッコ産でも入門種として扱われます。この個体は頬棘が無く、ドーム状に張り出したの尾部、Paralejurusに特徴としてある皴構造は控えめな種類です。これだけ多産する一般種でありながら、小種名は P.dormitzeriとして扱われたり、混迷しています。この標本で注目すべきは、体表面に幾つかある粒上の物体、これはゴミが取り除かれていないのではなく、小さな巻貝なのです。普通なら削り取られてしまうでしょうが、この様な小生物が共存していた痕跡が残された事が重要なのです。生息環境で共存していたのか、Paralejurusの死骸に群がってきた掃除屋なのか、当時の海底に思いを馳せながら色々想像が広がります。
Lower Devonian(Pragian Stage) Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-44 LhandarTrilobites
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Reedops cephalotes hamlagdadianus
モロッコのReedopsは、私が初めて購入した三葉虫でした。この標本は、そこから買い替える事、4代目ではあります。この種類を手にした事で、何かに取りつかれ様に三葉虫を収集する事になる元凶となった三葉虫であります。一般種ではありますが、所謂ファコプス系のMorocops, Pedinopariops、Austeropsなどとは姿が異なる事が素人でも分かると思います。これらファコプス系の中では、産出量はそれ程多産する訳では無い種類だと感じます。近年、この標本の様な大型のReedopsの保存の良い個体は、入手が難しくなってきています。 【標本リンク】FossilEra https://www.fossilera.com/fossils/2-9-detailed-reedops-trilobite-atchana-morocco
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-1 LhandarTrilobites
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Eldregeops(Phacops) rana
アメリカ合衆国には、全ての州ではありませんが、Statefossil(州の化石)が制定されています。日本でも文化に根付いた都道府県の〇〇がある様に、様々な化石が多く産出し、一般にも日本より馴染みがあるんだと思います。時代も様々な州を代表する化石ですが、恐竜など強敵を抑え、3つの州で三葉虫が選出されています。その内、ペンシルヴァニア州にて「Phacops rana」が1988.12.5に制定されています。Phacopsは、現在ではEldregeopsに改称されていますが、どちらかというとニューヨーク州やオハイオ州のイメージが強いと思います。ペンシルヴァニア州産の「Phacops rana」を探して、漸く入手できたのですが、この化石です。保存状態は、世界的な良産地のオハイオ州などと比較してはいけません。何せ「州の化石」なのですから。 【参考リンク】Statefossil https://web.archive.org/web/20091026213222/http://www.geocities.com/stegob/statefossils.html
Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida - Pennsylvania,USA Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,PhacopidaTrilobites
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Gerastos tuberculatus marocensis
デボン紀モロッコ産の入門種としてコレクターの多くが収集初期に購入する種類です。それほど高価でもなく、小型で派手さも無いので軽視しがちの種類であります。大きく膨らみツブツブに覆われた頭鞍、迫出した複眼もぷっくりと大きく、見た目が可愛い三葉虫で、個人的には大好きな種類です。ドイツなど欧州のデボン紀の地層から見つかるGerastos granulatusと見た目は同じの為、同種として扱われる事がありますが、近年、やっと記載が開始される様になりました。頭鞍の顆粒の状態など見分けるポイントは論文にあるのですが、実際にはこの種以外は見かけないと言って良いレベルです。また、細かい種の同定は、レベルの高い剖出がされていないと不可能です。
Middle Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetida TRI-42 TimhanrhartTrilobites
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Wujiajiania sp.
Mckay Groupより産出する三葉虫で最も多く産出するのがこの種類で、全体の半分以上を占めるとも言われています。Wujiajianiaは、近年の研究によれば3種類に分ける事が出来ます。一番区別しやすいのが頬棘の長さで、W.lyndasmithaeは、第6~7節まで達する一番長い頬棘。 W.sutherlandiは最も短く第3節。 W.ricksmithiは第4節。その他、顔線の微妙な差もあります。この標本に照らし合わせるとW.sutherlandiが一番近いのですが、境界が甘いので同定できないと判断しました。
Upper Cambrian Olenidae,Olenoidea,Ptychopariida TRI-144 Mckay GroupTrilobites