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キプロスキュプライト/赤銅鉱
キュプライトはその名が示すとおり銅を含有する鉱物です。 化学組成はCu₂Oと不純物が少なく、なおかつ酸素原子1つに対し銅原子が2つ結合してることから高品位の銅鉱として扱われます。 英名はラテン語で銅を意味する"cupurum"に由来し、さらにcupurumは銅の古典的産地であるキプロスにちなむとされています。 まさか出会えると思わなかったキプロス産のキュプライト。 由緒ある古典的産地からの美しい結晶です。 昨今のキュプライトはロシア産の黒色不透明な標本が多く流通していますが、このアルマンダインガーネットのような色と透明感をキプロス産が備えているとは思いもしませんでした。 表面は酸化被膜にやや覆われていますが、それでも古典的産地の意地と底力を感じさせる素晴らしい一石でありました。
宝石 鉱物標本 3.5~4 2019年テッツァライト
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バルティックアンバー/アゴダチグモ入り琥珀
太古の松柏類の樹液から揮発成分が抜け、硬化することで誕生する有機鉱物。 そこはかとなく薫る芳香で古代の生物たちを虜にし、現代に至ってもなお多くの人々を惹きつける甘美な宝石です。 それら中でも北欧のバルト海で産出する琥珀が『バルティックアンバー』であります。 その主たる起源はロシアのカリーニングラード州に存在する約5500万年~3500万年前の地層にあるのですが、そこから人の手に渡るまでの過程が実に情趣的。 波の浸食により地層に含まれている原石が浚い出されて海を漂流。 それがやがて浜辺に打ち上げられ、"シーアンバー"として拾い上げられる…というこの上なくロマンティックな琥珀なのであります。 そのためカリーニングラード州を始めリトアニアやポーランドといった沿岸各地では琥珀が特産品に挙げられており、今日まで数多くの良質な琥珀製品が世に送り出されてきました。 元となった樹種の影響によるものか、他地域の琥珀よりも多い3~8%のコハク酸を含んでいることもバルティックアンバーの特徴であります。 さて、私の手にあるこの琥珀についてですが、内部に目をやると何やら奇怪な生物が閉じ込められていることが分かります。 ペリカンのクチバシのように張出した鋏角や、不自然な位置関係にある頭部… "アサシンスパイダー"とも称される異形のクモ『アゴダチグモ』のArchaea paradoxaという個体です。 このアゴダチグモ、異質なのは姿だけではありません。 なんと《他の蜘蛛を捕食する》という恐るべき生態が知られているのです。 https://www.youtube.com/watch?v=kF7_HS_sihI 彼らはいったい何のために同族を狩るのか。 その意図が伺い知ることができないだけに非常に興味深く、不気味ながらもその美しい姿に注目せずにはいられません。
化石 宝石 鉱物標本 2~2.5テッツァライト
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オレゴンサンストーン・プリンセス/日長石
米国オレゴン州で採掘される秀麗な日長石。 プリンセスカットが施されたオレゴンサンストーンの裸石です。 昼夜がひとところにあるかのような、赤と緑のツートンが自慢の一石。 こちらの彼ほど彩度が高く、色の濃さが均一な個体にはあまり遭遇したことがありません。 日光にかざすと投影される "太陽の紋章" にもご注目であります。 この宝石はオレゴン州の特産品として地元に経済的な恩恵をもたらしており、1987年にオレゴン議会により州のシンボルに規定されました。 地殻の大半を構成する鉱物である長石グループの一種で、それらの中でも曹長石と灰長石の固溶体である斜長石に分類されています。 なお、この斜長石はナトリウムとカルシウムの成分比によって以下の4種が属しており、オレゴンサンストーンが該当するのがそのうち③になります。 ①灰曹長石/オリゴクレース ②中性長石/アンデシン ③曹灰長石/ラブラドライト ④亜灰長石/バイトウナイト 『サンストーンなのにラブラドライト…?』 などと昔は私も勘違いしていましたが「サンストーン」という名の鉱物は存在せず、あくまでも金属インクルージョンによるキラキラとした輝き〈アベンチュレッセンス〉を示す個体を特別視するための接尾語に過ぎません。 すなわちオレゴンサンストーンとは「オレゴン州で産出しアベンチュレッセンスを有するラブラドライト」というのが実態であります。 元来サンストーンといえば①の灰曹長石タイプの個体が知られており、謂わばこれこそが正統的な存在でありました。 しかし後出である本石も見事なアベンチュレッセンスを示していたため、亜流ながらもサンストーンの一員として認識されるに至るのです。 オレゴンサンストーンの魅力は何といってもその多彩さにあるのではないでしょうか。 淡い黄色や燃えるオレンジ、ガーネットのような赤色、そして陰影のような青緑色。 銅コロイドによってもたらされるウイットに富んだ色彩は、他の長石にはそうそう見られない特徴であります。 さらにこの銅は微細な結晶として析出しており、時に光の帯〈シラー〉となって現れます。 その様子はさながら石の内部に日差しが降り注いでいるようであり、亜流とは言え紛れもないサンストーンであることを実感させられるのでした。
宝石 鉱物標本 6~6.5 2019年テッツァライト
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乙女鉱山の灰重石/シェーライト
水晶の産地として名高い、山梨県の『乙女鉱山』より産出した清澄な灰重石(かいじゅうせき)です。 蛍光鉱物としてはホタル石と並び知名度が高く、短波の紫外線により青白い光を放つ姿が有名です。 この標本を目の当たりにし、私はひたすら驚嘆するばかりでした。 まず灰重石は、重金属「タングステン」を得るために採掘される鉱石です。 そのため本来であれば金属材の原料として製錬に回されてしまうであろうものが、こちらの彼にはどういう訳か宝石然とした研磨が施されていたのです。 幾ら透明度が高いとはいえ、この鉱物に対しカッティングが施されることはとても稀なことであります。 こちらに細工されているバゲットカットはとてもシンプルな研磨であるので、恐らくは研究用の試料として最低限の装いが成されたものだったのではないかと思います。 そのうえ国産品。 しかもラベルの産地表記に「乙女鉱山」と書かれていたのですから尚のこと驚きです。 かつてこの鉱山からもタングステン鉱が採掘されていたことは耳にしていました。 しかし水晶の方があまりに有名すぎて、乙女産の灰重石というのはそれまで図鑑ですら目にしたことが無かったのです。 この類まれな石との出会いに、ひたすら身が締まる思いであります。 #国産鉱物
宝石 鉱物標本 4.5~5 2019年テッツァライト
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ロシアンアレキサンドライト/変彩金緑石
《当館の2020年投稿アイテムいいね!No.1》 ルビーとエメラルドが宝石の女王であるならば、昼夜を統べるこの石はまさしく宝石界の皇帝〈ツァーリ〉。 端正なラウンドブリリアント型に研磨が施された、類稀なるロシア産の裸石です。 不純物として自然添加されたCrイオンにより "黄色と紫色スペクトルの吸収作用" と "青緑と赤橙のスペクトルを均等に反射する性質" が備わった結果、 光源の違いによって明瞭な色彩変化を示すものが『アレキサンドライト』と認められます。 19世紀、ロマノフ朝による統治体制が敷かれていた帝政ロシア。 ウラル山脈のベリリウム鉱床から発見されたこの石は、昼光の下では緑色を纏っていたため当初エメラルドであると思われていました。 しかし夜になり灯火に照らされたことで一転。 新緑が燃え移ろうたような赤色に変わり、まるでルビーのような様相を呈したのです。 鉱物の変色性が現代よりも知られていなかったであろう時代、昼夜で色相を変えるそれは大層神秘的な現象として人々の目に映ったことでしょう。 それに当時のロシアはユーラシア広域に覇を唱える大国。 不凍の港を求め南方へと進出していた只中のことです。 軍装のシンボルであったという "ツァーリグリーン" を想起させる深緑と、昂揚する士気を湛えたかのような深紅の変彩。 斯様にして軍事国家としての状勢を色濃く写していたこの奇石が、第11代皇帝ニコライⅠ世の下へと献上されたことは最早必然だったのかもしれません。 そしてまだ皇太子であった子息『アレクサンドルⅡ世』を讃えた名を授かり、以来ロシア帝国を象徴する誉れ高き宝石として広く知られるようになったのであります。 20世紀の初頭、王朝はロシア革命により滅亡してしまいます。 しかしこの石だけはそのような悲劇に見舞われることもなく多くの人々から愛され続け、今や五大貴石の一角として栄華を極めているのです。 ***Reirei Paint Art様より作品のモデルにして頂きました!*** https://muuseo.com/ReireiPaintArt/items/372 https://muuseo.com/tezzarite/items/114
宝石 鉱物標本 8.5 2019年テッツァライト
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アーガイル・ピンクダイヤモンド/金剛石
マントル由来の火成岩「ランプロアイト」によって齎される炭素の元素鉱物。 西オーストラリア州・キンバリー高原に所在する世界有数のダイヤモンド鉱床『アーガイル鉱山』で産声を上げた粒選りたちの末子です。 とても小ぶりで、ささやかな乙女色。 しかし均整のとれたプロポーションから放たれる光輝がその存在感を確固たるものとしており、その慎ましくも芯のある強さが目に焼き付けられるかのようです。 また紫外線ランプを灯すとハンナリとした雰囲気が一変。 青く涼やかな光を放出し、凛とした姿を暗闇の中に咲き示すのでした。 外周部分を拡大しますと、ある一点にだけアルファベットの "A" を二つ並べたようなマークを認めることができます。 これは鉱山会社によって施されたレーザー刻印で、アーガイルの地で産出したことを保証する極めて控えめなブランドマークであります。 (本来であればこのAの後にシリアルナンバーが続いているのですが一部ぼかしてあります) またそれと同時に、正規ルートにより流通した石であること・・・いわゆる紛争ダイヤではないことを示す証明でもあるのです。 こんな可憐な小花に血塗られた出自など相応しくありません。 #ダイヤモンド
宝石 鉱物標本 10 2019年テッツァライト
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フロゴパイト/金雲母
黒雲母系列の中でもMgに富み、黄~赤褐色を帯びた個体が『金雲母』であります。 名前に「金」が入ってますが残念ながら貴金属としての金(Au)を含有しているわけではありません。 英名のフロゴパイトは、ギリシャ語で "火のような" を意味するphlogoposから命名されました。 宮沢賢治の童話「やまなし」の一場面にも登場するように、川底の砂に混じってキラキラ瞬いている粒の正体が此等であったりします。 その煌びやかな様子から砂金と誤認されることもありますが、両者にはかなりの比重差があるため判別はそこまで難しくありません。 作中でも "金雲母の欠片も流れて来て止まりました" という描写がなされているように、比重の小さな雲母は容易に流浪してしまうのです。 さて、この六角形の結晶を目の当たりにした方の多くが「これは本当に雲母なのか」とお疑いになったことでしょう。 雲母は典型的な劈開鉱物でありますので、千枚はがしという別名のとおり薄く葉片状に剥離する特性が知られています。 この性質のため意外に思われるかもしれませんが、本来はこのように立体的で纏まりある結晶を成しているのです。 こちらの金雲母はミャンマーのモゴックで産出した結晶。 これも宝石の一大産地だからこそ為せる業なのか、5㎜ほどの厚みがありながら向こう側が目視できるほど透明度を有しています。 そのため舞台照明のカラーフィルターの真似をして光の中にかざしてみると、まるで幻燈機のように黄金色の影を伸ばすのでした。 暖かな白熱光で照らし上げれば内部の劈開面で反射が起こり、緑柱石の黄色種であるヘリオドールと見紛うばかりに輝きます。 一方で短波の紫外線を照射すると、淡く黄色い夜光を放つ様子を確認できます。(画像1枚目) それは月明りに照らされたヤマナシのようにささやかで、仄かだけれども芳しく、そして美しい光なのでした。
鉱物標本 2.5~3 2019年 ミャンマーテッツァライト
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ボロビエバイト/アルカリ緑柱石
セシウムを含有しているという…触れ込みで流通していた緑柱石で、アルカリ元素を含有していることから『アルカリベリル』とも呼ばれているものです。 "Vorobievite" とは本来であれば無色あるいはピンク色の緑柱石―すなわちセシウムに富むゴッシェナイトとモルガナイトのことを指す異名だったようで、一昔前の書籍の中にはそのような記載も確認できます。 しかし近年見かけるようになったこのアフガニスタン産のベリルに対してもその名が用いられているようです。 とは言えよくよく調べるとこの石自体のセシウム含有量はとても低いようで、ボロビエバイトの名は飽くまでも商品名として用いられている節があります。 緑柱石は色によって呼び名が変わる鉱物で、例えば緑色であればエメラルド、水色であればアクアマリンといったように区別されます。 こちらの石もまた冷徹な青色を呈しており、ともすれば単なるアクアマリンなのではないかと思ってしまうところです。 しかし通常の緑柱石の多くが柱面の発達した縦長の形状に成長するのに対し、こちらのボロビエバイトは薄板の形状をとっているのが個性的です。 また結晶内部には霜柱を思わせる繊維状組織が観察できることから、通常のアクアマリンとは明らかに異質な存在であることが伺えます。 このような六角板同士が密集し重なるように群晶となった姿は八重咲きの花そのものです。 花を象る鉱物として代表的なものに石膏や重晶石の「デザートローズ」や赤鉄鉱の「アイアンローズ」が挙げられます。 どれも大変美しい結晶でありますが、色彩的な観点で言えばこのアイスブルーの華々しさには及びません。 やはり花は色鮮やかであった方がより心惹かれるのであります。 #ベリル
宝石 鉱物標本 7.5~8 2019年テッツァライト
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ダイアスポア・ツイン/ズルタナイト
二つの結晶が結合成長した「双晶」という形態のダイアスポアです。 高熱に曝されることで脱水し、細々と砕けてしまう性質を持っているため「四散」を意味するギリシャ語“diaspora”から命名されました。 一般的にあまり耳にする機会のない石でありますが、アルミニウム鉱石であるボーキサイト中に本種が含有されていることから、巡り巡って姿を変え、我々の生活に溶け込んでいる身近な存在と言えるのではないかと思います。 コランダム(ルビーとサファイア)と近しい化学組成を持つほか、高品位なものは研磨が施され『ズルタナイト』という商品名で流通する宝石でもあるのです。 一部の、特にトルコで産出するダイアスポアの中には変彩性をもつ個体がいるようで、使用する光源の種類によってアレクサンドライト顔負けのカラーチェンジを目にすることができます。 このV字型の彼もそうです。 平常時の蛍光灯から、火明りの白熱光へ切り替えることで色相が反転。 慎ましい青緑色だったものが、花薫るロゼピンクや上品なワインレッドへと装いを変じるのであります。 極めつけにブラックライト。 紫外線を照射することで、ルビーの如く明瞭な赤色蛍光を発するのでした。 カラーチェンジ石における価値で言えば、本家には到底敵わないでしょう。 しかしこの石のように明瞭な形状と透明度を兼ね備えた原石ともなると、例えアレクサンドライトでもそうそうお目にかかれるものではありません。 かの皇帝の宝石でも叶えられない美しさが、この鉱物には備わっているのであります。
宝石 鉱物標本 6.5~7 2019年テッツァライト
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バーマイト/3種の虫入り琥珀
太古の松柏類の樹液から揮発成分が抜け、硬化することで誕生する有機鉱物。 人類史においては長きに渡り装身具に用いられてきた、黄金色の甘美な宝石です。 その中でもミャンマー北部に位置するカチン州・フーコン渓谷という場所で産出する琥珀を『バーマイト』と呼びます。 この地で採れる琥珀は他と比較して年代が古く、他国産の多くが約2500万年~6000万年であるのに対し1億年にまで遡る個体も存在します。 多くの琥珀がそうであるように、このバーマイトの中にも太古の生物たちの姿を見ることができました。 画像1枚目は「羽虫」。 アリやハチようなの姿をしており背中には一対の翅が生えています。 翅の状態も然ることながら触角も綺麗に残っており、節の構造ひとつひとつまで鮮明に確認することができます。 画像2枚目は「多足類」。 足の数が5~6対しかなく体長も小さいことから、ゲジゲジの幼体であると思われます。 ところどころ足が切離していますが寒気立つようなシルエットは健在で、顔部には偽複眼も確認することができます。 画像3枚目は「甲虫類」あるいは「網翅類」。 背面には外骨格か翅を纏っていますが、全体が半透明であることから翅であると思います。 不鮮明ですが頭部からは長い触角らしきものが生えている・・・と思っていましたがよ~く目を凝らすと繊維のようなものが重なっていたためそのように見えていただけでした。 頭部には複眼、腹部には節があり、尾部はやや尖った形状であることが確認できます。 画像4枚目はクモヒトデのような謎の物体。 詳細は不明ですが似たようなものがナショナルジオグラフィックに掲載されていました。 どうやら植物の一種であるようです。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2514/ 初めは1種類しか入っていないものと思っていましたが、注意深く観察した結果このように複数種の生物たちが閉じ込められていることが分かりました。 彼らは皆、甘い蜜を吸いに集まったところ逆に樹液に飲まれてしまったのでしょうか。 休息のつもりが永遠の眠りとなってしまった彼らですが、全身を甘くとろけるような飴色に包まれさぞや本望であったと願わずにはいられません。 #琥珀
化石 宝石 鉱物標本 2~2.5テッツァライト
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エンロール・アカストイデス/防御態勢の三葉虫
三葉虫は古生代における代表的な示準化石。 すなわち、その化石が産出した地層の年代を特定するうえで指標となる生物群です。 堅固な背甲と体節を持っているため、カブトガニやムカデなどと同じ節足動物でありました。 彼らはカンブリア紀に出現して以降、目覚ましい分化を遂げ、大量絶滅の発生したペルム紀まで綿々と命脈を繋ぎ続けました。 彼はその中でもデボン紀に生息していた『ファコープス』なる系統の個体で、多数の個眼からなる大型の集合複眼を備えているのが特徴です。 特に鉱物化していない素の化石ではありますが、彼の特筆すべき点はそのポージングにあります。 頭部と尾部を限りなく近づけ、弱点である腹部を隠すかのような防御態勢を取っているのです。 三葉虫といえば水底を這い蹲る扁平な姿が一般的に想像されますが、その身体構造は意外にもフレキシブル。 特定の種においては胸部関節の干渉が少ないため自由度の高い屈曲が可能となっており、球形態への移行もスムーズに行われるのです。 もちろんこのファコープス目も、そのような能力に長けていました。 こちらは全体的な状態も良好で、体節はもちろん複眼の凹凸など、各部のディティールが生前さながらに保存されています。 何よりもその丸まった姿は今も生きているようであり、ただの化石であることを忘れて愛らしさすら感じてしまうのです。
化石 2019年 モロッコテッツァライト
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ゴールドシーンサファイア/鋼玉
『ゴールドシーンサファイア』は近年になって宝石界に現れたアフリカの新星。 その名のとおり絢爛な包有物から放たれる輝きが特徴のサファイアであります。 落ち着いた色調のブルーと見事に調和しており、ラピスラズリのごとき雅やかな雰囲気を醸し出しています。 この輝きの源はブルーサファイアの中に広がるチタンと鉄の酸化鉱物から成るものとされています。 本物の金などではありませんがこのありふれた金属こそがゴールドシーンの肝であり、彼の石を新種たらしめた立役者なのであります。 彼らの中には、金色の部分に「アステリズム」というスター効果が出現する個体もいるようです。 私のサファイアにも星彩が現れるのですが、どうやらこれは繊維状の包有物が一定の角度で配列していることが要因であると思われます。 このアステリズムは本家スターサファイアと比べれば本当にささやかなもので、カメラに収めようとするとまともに捉えることすら叶いません。 肉眼観察であれば比較的シャープなスターラインを目にすることができるだけにもどかしい限りです。 ***Reirei Paint Art様から作品のモデルにして頂きました!*** https://muuseo.com/ReireiPaintArt/items/371 https://muuseo.com/tezzarite/items/112
宝石 鉱物標本 9 2019年テッツァライト
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クリスタルオパールキャッツアイ/貴蛋白石
真ん丸お目々に緑色の瞳光が輝くクリスタルオパールです。 遊色、蛍光、燐光、そしてシャトヤンシー… 様々な美点を併せ持つこの石は私の宝物であり、まさしく当館の "目玉" と呼べる存在であります。 オパールには変幻自在の光学特性が備わっているため個体ごとの表情は多岐に渡ります。 そのため真に自分好みの遊色パターンを持つ石を見つけることは容易ではありません。 そんな中、猫好きテッツァライトが目標としていたのが『ローリングフラッシュ』というパターンを示す石。 角度を変えることで端から端へと転がるように移り行く特殊な遊色で、これが時としてキャッツアイ状の光線となって現出することから強く焦がれていたのでした。 通常「キャッツアイ効果」とは繊維状の包有物を要因として内部反射した光が収束し、その結果球面に絹糸光沢のような光条を示す現象です。 しかし彼はそのような内包物に依存することなく、偶然に描かれた遊色によって猫目模様を生み出しているのです。 このように理屈では分かっていながら種も仕掛けもまったく見えないタイプのシャトヤンシーには、猫好きであるそれ以上の感動を抱かずにはいられません。 遊色効果ゆえに元から備わる神秘性と、それに加え紫外線による蛍光反応が合わさり実に神妙不可思議であります。 私に投げかけられた魅了の視線。 その魔力は生涯解けそうにありません。 #オパール #キャッツアイ #猫
宝石 鉱物標本 5.5~6.5 2019年テッツァライト