アイデンスピーカーのはじまりについて
初版 2023/04/16 17:46
改訂 2023/04/16 18:33
アイデンのスピーカーに関して実際の機器や当時の雑誌などを検証しているのですが、その起源について興味深い資料を発見しました。
『電波科学』1975年7月号の「ユニークなSPメーカ アイデンをたずねる」に依れば、創業は昭和22年(1947年)、当時の社名は愛国電業社。
照明機器製造メーカーだった同社がスピーカーを作り始めたのは昭和36年(1961年)とあり、そこで当時のオーディオ雑誌を調査していたところ、こんな広告を見つけました。
左下に小さく、「旧 日本音響電気K.Kを吸収合併致しました」とあります。
日本音響電気株式会社は戦前より東芝の子会社としてスピーカー製造をしていた名門で、佐伯多門著『スピーカー技術の100年Ⅱ』にも記述があります。
その日本音響電気が持っていたスピーカーブランド名が「ミラフォン」というわけです。
しかし不思議なのは日本音響電気株式会社は1961年以降もミラフォンブランドで新作スピーカーユニットを発表しており、「Mirror phone」→「Mirror Fon」→「MirroFon」と変遷した後に高級スピーカーブランド「Maxonic」に成ります。(つまり一時的に2社からミラフォンというスピーカーが販売されていたことになります)
「吸収合併」とあるので、本来ならば会社自体が消滅したと見るのが普通ですが、この辺りについては『スピーカー技術の100年Ⅱ』には記載されておりません。
ただ、日本音響電気が高級スピーカー路線に舵を切ったこと、アイデンが1961年と遅まきの参入ながら複数のオーディオメーカーのOEMを請け負っていたことなどを考慮すると、一般向け製造部門のみを切り離して売却したのかもしれません。
この辺りは埼玉周辺(どちらも埼玉県大宮近辺にオーディオ事業部が在った)に住んでいる故老ならご存知の方もいるかもしれませんが、何しろ60年以上前の話、正確な情報を得られる可能性は低いでしょう。
偶然か否か、アイデンが自社ブランドを立ち上げた1973年は日本音響電気がマクソニックを立ち上げた年でもあります。
そして「ミラフォン」というスピーカーブランドは日本から消えることとなりました。