2020/12/19 屋外展示の難しさ
初版 2020/12/20 18:02
改訂 2022/09/07 12:42
公開日:2020/12/20
新城市作手の姶良火山灰層は三河高原の南東部に位置する大野原湿原の堆積物、泥炭層に挟まれています。姶良カルデラ由来の堆積物は、約2.9~2.6万年前に鹿児島湾北部から大量のマグマを噴出し、直径約20kmの錦江湾とシラス台地をつくりました。上空高く舞い上がった火山灰(姶良Tn火山灰)は、約700km飛行して大野原湿原に記録されたのです。大野原湿原の大部分は圃場整備により水田となり、原形はありません。鍵層となる広域火山灰層(広域テフラ)は地質学や考古学で時代を編年する上で貴重な存在です。
国道301号に面する保護地は先日の大雪が残り白色です。解説サインの前にはドライフラワー、邪魔して読めません。露頭を覆うアクリル板は劣化、草が茂り設置された矢印だけが姶良Tn層の存在を主張しています。灰色の粘土層に挟まれた褐色のバブルウォール型火山ガラス層は想像します。ただの斜面です。
姶良Tn層が観察できるように保護されている場所は全国でも稀です。屋外での露頭の展示保存は根尾谷地震断層観察館・野島断層保存館・なぎビカリアミュージアムのように大規模な施設でなければ困難でしょう。琵琶湖博物館や中央構造線博物館など多くの博物館で展示されているような剥ぎ取り標本を作製する他にないのかも知れません。