フール・オン・ザ・ヒルについて
初版 2018/03/30 10:11
改訂 2022/12/20 13:53
こんにちは、あゆとみです。
https://muuseo.com/analogrecordfan/items/910#!page-2
1980年にリリースされたThe Beatles Ballads。
大好きなアルバムジャケットの一枚だ。
中学の頃、このアルバムに収められている粒ぞろいの名曲たちを聴きながら、飽きることなくこの絵をながめていたものだ。
さて、イエスタデイやらヘイジュードやらの華麗な曲が揃っているこのアルバムの中に、比べれば地味だけどとても好きな曲があった。
それがフール・オン・ザ・ヒルである。
その当時、アルバムについていた歌詞を読んだと思うのだが、内容はピンときていなかった。歌詞よりは曲調やメロディ、歌声に惹かれていたのだと思う。
フルートにリコーダーが散りばめられ、川のせせらぎのようなのどかな調べの曲を聴きながら、ビートルズがウサギやちょうちょやトラと混じって座っているこのアルバムジャケットを見ていると、音のついた絵本を見ているようで想像力がかきたてられた。
https://www.youtube.com/watch?v=UmIwcu9AoxQ
今回はこの曲について調べてみたいと思う。
元々、マジカル・ミステリー・ツアーに収録されていたフール・オン・ザ・ヒル。
https://muuseo.com/record.fan/items/11#!page-2
題名をそのまま訳すと、「丘の上のお馬鹿さん」という感じだろうか。
「お馬鹿さん」って誰のこと?となるが、これには諸説あるらしい。
ガリレオだとか、ポールが飼っていた犬を追いかけて丘に行った時に突然現れてまた消えたという、ミステリアスな男性がモデルだという説もある。
その中でいちばん本当らしいと思えた説がある。
1997年に発売されたポール・マッカートニーの伝記Many Years From Nowからの抜粋(ざっくりとした意訳)だ。
フール・オン・ザ・ヒルは僕の曲だよ。マハリシみたいな人のことを書いたんだ。マハリシは彼のことをよく思わない連中からは馬鹿呼ばわりされてた。あの笑い方のせいで、まともに相手にされなかったんだよね・・・
ビートルズがインドに行ってマハリシ・ヨーギーから多大な影響を受けた時期があることはよく知られている事実だ。この言葉からは彼の元々のインスピレーションはマハリシ・ヨーギーだということ、そしてこの曲の「お馬鹿さん」というのは、世間で馬鹿扱いされているが実はとんでもなく聡明な「賢人」のことを言っているのだとわかる。マハリシは超越瞑想(TM)なるものを広めた人物とされている。簡単に言えば一日二回の瞑想で悟りが開けるという感じらしい。
当時グループとして継続することに煮詰まってきていたビートルズが、このマハリシとの出会いでスランプを脱し、創造力に火がついて後半の名曲ラッシュにつながったという人もいる。
さて、今度は歌詞を見ていこう。(ざっくり意訳付き)
Day after day, alone on a hill
来る日も来る日も、丘に一人きり
The man with the foolish grin is sitting perfectly still
男は身じろぎもせずに馬鹿みたいなにやけ顔で座ってる
マハリシを念頭に読んでみると、なるほど彼にピッタリ当てはまる。
ヒゲの長い、しわだらけの顔の口元に常に笑みを浮かべたマハリシが胡座をかいて丘の上に座っている絵が浮かぶようだ。
https://www.youtube.com/watch?v=QaWK4GGRMx0
Nobody wants to know him
誰も男に興味を持たない
They can see that he's just a fool
ただの馬鹿に見えるだけ
But he never gives an answer
男は決して答えを明かさない
最後の「答えを絶対に言わない」という部分は謎が多いが、マハリシがモデルだとするなら「悟り」のことなのかな?とも思える。
But the fool on the hill
だけどそんな丘の上のお馬鹿さんは
Sees the sun going down
太陽が降りていくのを見たり
And the eyes in his head
頭に目を宿らせて
See the world spinning round
回る世界を見ている
この辺りからはやはりマハリシだけの話ではなくなってくるようだ。
マハリシだけに当てはめても意味はそれなりに成立するが、「太陽が降りていく」とか「くるくる回る世界」の部分ではガリレオ説が出てくるのもうなずける。
当時、地球が宇宙の中心でその周りを太陽や他の惑星が回っているという天動説が主流だったのを否定して、「それでも地球は回っている」と地動説を唱えて、大バッシングを受け、軟禁された天才学者だ。
https://www.youtube.com/watch?v=jvlr2iMWQyc
そうなるとこれは、地動説を最初に唱えたコペルニクスにも当然当てはまってくるだろう。ちなみにコペルニクスは自分の発見があまりに時代を先行していて、批判を受けるのがわかっていたので、死の間際に地動説を発表したのだとか。
https://www.youtube.com/watch?v=M0p6NKANE08
彼らのように現体制やメインストリームに逆らい、周りになんと言われようとも自分の主張を貫き通す異端児もまた、この曲の「お馬鹿さん」に含まれるのだろう。
歌詞にある「頭にある目」のイメージは心眼とか第三の眼とか、そういう感じだろうか。世の大半の人たちに見えないものを見抜く慧眼の持ち主ということだろう。
ふむふむ。そんな背景があったのか、そうだったのかあ〜
子供の頃は何もわからずに聴いていた曲が、年をとってこうやって違う視点から見ていくと、また別の趣きを出してくるのは面白い。
ただ、やはり私にとってのこの曲、フール・オン・ザ・ヒルはあのアルバムジャケットに描かれている、4人のビートル兄さん達が野原に来てちょうちょや動物達とたわむれているあの世界、あれが一番しっくりくるんだよなあ〜とも思うのだった。
最後は1968年にSergio Mendes & Brasil 66がリリースし、世界的大ヒットになったボサノバ・カバーで。
https://www.youtube.com/watch?v=qFe0sc8XW94
https://muuseo.com/56688588/items/359
フール・オン・ザ・ヒルは8曲めに収録されている↓
#The_Beatles
#ビートルズ
#Paul_MacCartney
#ポール・マッカートニー
#the_fool_on_the_hill
#フール・オン・ザ・ヒル
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