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Pseudocybele nasuta
顔のかわいさという点では、全三葉虫のうちでも五指に入るだろう。 レドリキアやオレネルスの悪相(とあえていう)とはえらい違いだ。 しかしこんなかわいい顔をしながら、食性の面からみると捕食者すなわちプレデターだったという説がある。 顔で相手を油断させておいてガブッとやったのだろうか。 私は三葉虫にはあまり捕食などという野蛮な行為はしてほしくない。 なるべくならプランクトンあたりを餌にしていてほしい。 そうやって平和な三億年を過していたと思いたい(註)。 全長:18mm (註) 厳密には最大限に見積っても2.9億年ほどで、三億年には達していない
Ninemile shale LORD Eureka, NV, USAktr
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Cybele bellatula
Labログ(キベレの思い出)にも書いたように、復帰後最初に手に入れたのがこれだ。 あれからまだ一年ほどしか経っていないが、なんだかずいぶん昔のことのような気がする。 これはエンクリヌルスの仲間に入れられていて、エンクリヌルスといえば、イチゴ頭と称される頭部のツブツブと、飛び出した目が特徴的だが、本種においては頭部の顆粒はそれほど目立たず、目は飛び出しているけれども控えめで繊細だ。 この控えめで繊細というのは、本種の全体についてもいえることで、全三葉虫のうちでもかなり優美な部類に入るのではないかと思う。 野趣が感じられないので、それが物足らないという人もいると思うが…… この標本は母岩がいびつで、どうしても安定せず、下手をするとひっくり返りそうで、心臓にわるいので、紙粘土で補強して安定させてある。 なお、この繊細すぎる三葉虫には、C. Panderi という姉妹種があって、本種に輪をかけて細長い眼軸をもっている。 その細長さは、チェコのミラスピス・ミラと双璧をなすといってもいいくらいだが、あまりにフラジャイルで私には怖くて扱えない。
Kunda Horizon, zone Asaphus expansus LORD Voibokalo quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Lemureops lemurei
シュードキベレの仲間だが、見た目がかなり異なるので、別属として立てられたらしい。 北米産の、こういう立体的に保存された三葉虫は、たとえサイズが小さくとも、その質感にはつねに見るべきものがある。 こういうシックでマットな質感は、他の産地にも見られるのだろうか? いずれにせよ、質感のよい北米産の三葉虫は、歴としたフォルマリスト(形相派)をもマテリアリスト(質料派)に傾かせるに十分だ。 本体サイズ:14㎜
Fillmore Fm. LORD Utah, USAktr
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Asaphus expansus
Asaphus の模式種がこれだ。 いまではこれに亜種が三つ見つかっているらしい。 私の手に入れたのがそのうちのどれに当るのか、それはまだ調べてみない。 この標本は見るたびに色合や質感が違っているようで、石そのものが季節の影響を受けて変化するのか、それとも光の種類や当り方でそう見えるのか、たんに私の目が頼りないのか、よくわからない。 Asaphus の仲間はどれも同じように見えるが、細かく見ていけば際限なく差異が見出される。 私としてはロシアの Asaphus の標本はこれと A. kowalewskii だけにとどめて、他の細かい差異は図鑑で楽しもうと思っている。 サイズ:68㎜
Kunda Level LORD Voibokalo Quarry, St. Petersburg region, Russiaktr