鉱物女子

初版 2024/06/09 19:36

改訂 2024/06/16 09:38

鉱物女子という範疇があるのを最近知りました。
鉱物に女子なんて、無敵じゃないかと思うんですが、どうでしょう。
これで眼鏡でもかけていた日には……

そういえば、はるか昔、ツイッターをやっていたころ、鉱物クラスタというのがあって、けっこう盛り上っていたことを思い出します。
あれにも女子は参加していたんでしょうか。
まあそのころは鉱物にも化石にもまるきり関心がなかったので、とくになんとも思いませんでしたが。

さて、「少女の友」という雑誌の創刊100周年記念号をぱらぱらめくっておりますと、「鉱物界標本」という教材(?)の広告が出ているのを発見しました。
初出:昭和11年5月号、となっております。

いちおう写真を撮ってみましたが、読めますでしょうか。


「最新鉱物学 教科書適用」とのことで、「最新の中学女学校の教科書にある鉱物を全部一つにまとめ」と書いてあります。
当時の女学校では鉱物学の授業があったんでしょうかね。
地学ならわかりますが、鉱物学とは。

54種入っているとのことで、これはけっこうな数だと思います。
私がもっている化石全部合せたくらいの数ですからね。
値段も書いてありますが、ちょっと字が読めません。
まさか壱円ということはありますまい。

いずれにしても、こういうものが少女雑誌の広告に出ているというのは、戦前にすでに鉱物女子がいたかもしれないという、そのひとつの傍証にはなっていると思うのです。

     * * *

蛇足をつけ加えておけば、この手の鉱物セットは、いまでもヤフオクなどで二束三文で売られております。
いまとなっては目新しくもなく薄汚れているので、だれも欲しがらないんでしょう。
しかし、それらが発売された当時、こういうセットがどういう受け入れられ方をしたかは、現在からは推し測ることができません。
私としてはともかくも、当時の鉱物女子が、こういうセットのなかのあれやこれやをつまみ上げて眺めているところが想像できるだけでも儲けものであります。

     * * *

さらに蛇足をつけ加えれば、鉱物好きの作家稲垣足穂は、この手のセットものを軽蔑しきっていたようで、「水晶物語」のなかにこう書いております。

「その小さな、薄っぺらな函の内部は碁盤目に区切られて、おのおのの区郭に、指先くらいの、蛋白石だの、蛍石だの、雲母だの、輝石だの、緑泥岩だの、電気石だの、方鉛鉱だの、蒼鉛だの、氷洲石だの、橄欖石だの、ボーキサイトだのがはいっていました。
しかしこんな代物こそ、その辺の洟たらしが持っている「見本」でないか!」

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ktr

鉱物と化石の標本を集めています

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    トリロモト

    2024/06/12 - 編集済み

     いつも勉強させて頂いております。
    近年のことしか分からないのですが、各所ミネラルショーなどを見に行くと半数以上は女性の方、それ以上の会場も多いと感じております。女性がたくさんおられるのは、やはりルースや綺麗な鉱物を置いているブースですが。
     やはり、女性に人気がある事柄は流行するんですね。会場に入るのにいつも行列が出来ていますし。対して化石のブースは大きな会場でも数ブースで男性、子供さんメインであんまり人気がないのかな?と思っています。
    釈迦に説法だと思いますが、気になった内容だったのでコメントしてしまいました。すみません。

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      ktr

      2024/06/12

      日本でミネラルショーが一般化したのは、ここ30年くらいのことだと思いますが、それ以前にも、細々とながら、鉱物好きの女性はいたんじゃないか、というのが私の興味の中心ですね。
      宝石好きの女性が多いことは、だれでも知っていますが、原石となると、やっぱり少数派で、そこのところに好感が持たれるのです。
      化石となると、「きょうりゅうレディ」ことメアリー・アニングとか、スコットランドのエリザベス・グレイ女史とか、有名な女性がいることはいますが、全体としてはさらに少数派で、変な言い方ですが、化石女子などは超稀少種であろうと思われます。

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    Trilobites

    2024/06/15 - 編集済み

    古い鉱物見本の教材、確かに偶にオークションで出て来ますが、余り価値は無さそうですね。閉山鉱山の希少鉱物とかもあるでしょうが、この様な教材に入っている標本は、余りコレクションとしての価値のあるものではないと感じます。昔、私が小学生だった時に理科準備室にこの手の鉱物教材とかあり、ワクワクして見た記憶があり、何らかの影響はあったかもしれません。

    鉱物趣味自体は昔からあったとは思います。今と違って地学をしっかり教育している時代でしたからね。記事に出ている女性向けの広告は興味深い内容ですね。意外と鉱物趣味が根付いていたんだと思います。話繋がりですが、私も明治時代の古い大衆雑誌を所有しているのですが、当時の広告だけでなく世相、風俗、言葉使い何をとっても今と異なる世界で、時代というのは常に変化している事を感じられます。

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      ktr

      2024/06/16

      私もご同様で、あまり魅力を感じません。
      古ければいいというものではありませんね。
      子供のころの理科教室の思い出は、意外と博物系コレクターには共通の体験かもしれません。
      古雑誌のたぐいは、ちょっと手に入れて眺めるのはおもしろいですが、本格的に集め始めると大変なことになりますね。
      ジャンルと時代を限定しておかないと、それこそ家の中が屑屋のようになってしまいます。

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    trilobite.person (orm)

    2024/06/16 - 編集済み

    以前、化石だけでなくちょっと鉱物の勉強でもしようかなとふと考えた際、この手の鉱物セットを買いかけました。ただコレクションとしては、同じく魅力を感じないなと思い結局中止し、「比べてわかる岩石」という初心者本で妥協しました(鉱物というか岩石の教科書ですが)。
    若干話題がそれますが、昔は鉱物学の授業があったというのが興味深いですね。現代よりも鉱山の存在が産業的にも重要だったからでしょうか。今は高校などでは、鉱物学はおろか地学をほぼ誰も履修せず、皆、物理、化学科生物を取るので、大人になって地学の知識を持っている方が非常に少ないですね。

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      ktr

      2024/06/16

      こういうセットも、見本としてはわるくないですが、やっぱりコレクションの対象にはならないですね。
      私は戦前の教科書というのは見たことがなくて、鉱物学の内容ももちろん知らないのですが、ものがものだけに、手に入るならばちょっと見てみたい気持はあります。
      私の高校時代も、受験に必要な物理化学しか授業を受けておらず、地学は「チャート式」で勉強した記憶があります。
      カオシデ石は二畳敷き、とか書いてあったのはいまでも役立っていますが。

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