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銀河釉作品 銘「遠望」
この「遠望」は高さに比べ横幅が広く、器の首が細く立ち上がった特有の形状の器の総称のようです。器を眺めていると星の海を渡る船から宇宙空間を眺めているような気がしてきます。そういう意味で結晶釉が活きる形状なのかもしれません。 少しくすんだ銀色(いぶし銀)に結晶が発色していますが、光が正面から当たると鮮やかな銀色に変化します。これも茜銀河の釉薬による発色だそうです。ベースになる釉薬も夏銀河の青とは異なり、メタリックな青で澄み切っています。 器の肩の部分に結晶が密集して、それが一つの景色にもなっています。胴の部分は大小の結晶が散らばって、ずっと見ていると三次元空間に結晶が浮かんでいるように思えてきます。 あと、マニアックですが、首と髙台の部分にわずかに発色した濃い青もきれいです。
縦20cm 横17cm 陶磁器 玉峰窯 銀河釉 中尾哲彰ひろ
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銀河釉 俎板皿
銀河釉(春銀河)の俎板皿です。 縦23cm、横32cm、厚さ1cmの大皿で、料亭などでお刺身などを盛り付けるのによさそうです。それこそ盛り付けでたまに使うこともありますが、ほとんどは飾っています。 結晶化が見事ですが均質ではなく、適度にムラがあり、それが景色に繋がっているように思います。1枚目の写真の右側の下のほうは凸型に盛り上がっていて、その部分の釉薬が流れたのでしょう、黒くなっています。逆に、皿よりも一回り小さくロの字型の濃い緑青色に発色している部分、これが釉だまりで、釉薬が流れた右下が濃くはっきりと見えています。 結晶釉は、結晶化のために焼成温度のピーク(1250度くらい)から下げていく段階の高温の状態で窯の温度の維持をしなければなりません。その間に釉薬が流れやすく、また、釉薬の性情の流れやすさもあいまって、裏面に溶けた釉薬が流れて張り付くことも多いようなのですが、これは、厚み1cmの中で見事に止まっています。
縦23cm 横32cm 高さ1cm 食器 玉峰窯 銀河釉ひろ
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窯変草花彫文花瓶 河村又次郎
河村又次郎氏といえば御本手や粉引をイメージしてしまいます。個人的には朝鮮の李朝陶器との繋がりを感じてしまうのですが、どうでしょうか。 御尊父の喜太郎氏が京焼から猿投の陶土に魅了されて愛知県に移住、その後、鎌倉に移って北大路廬山人の窯跡に基中窯を開きました。 又次郎氏自身は、愛知県で作陶を続け、喜太郎氏が亡くなった後に、鎌倉の基中窯を受け継いで作陶されていました。 この方の作品には、形状や彫文よりも、その肌理に惹かれます。3枚目の写真にアップしていますが、ビスクドールの肌のような艶めかしさと、それでいてぽってりとした温かみが感じられます。
縦26cm 横16cm 陶磁器 基中窯ひろ
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糠白釉鉄絵花瓶 木村充
益子焼の代表的な糠白釉はモミ殻灰と寺山白土、土灰に少量の藁灰と長石を加えた釉薬で白っぽく発色します。 この花瓶は、片面に鉄絵で草花を描いて糠白釉を掛けた釉裏鉄絵になり、釉薬が流れて、鉄絵がぼおっと滲んでいます。 口が大きく胴はタイトで、ロクロ成型のあと削りによる面取りが施されています。 陶土に砂が混じりきめが粗い益子焼にしては、やや薄造りです。 色合い的に白というよりも、柔らかなクリーム色に発色をしています。 個人的には、この柔らかな色合いが好きです。
縦22cm 横16cm 陶磁器 木村窯ひろ
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小壷 金城次郎
壺屋焼の小壷です。たぶん、楊枝入れではないかと思います。デパート(物産展)で購入した時に、そう用途を尋ねたら、少し嫌な顔をされて、結局、お店の方からはぐらかされてしまいました。 沖縄の方が販売されていましたから、「初の人間国宝の作品に・・・」と思われたのかもしれません。 用途と言えば、わざわざ漆塗りで内側に金箔をはった蓋を造り、茶入れとして使っていらっしゃる方がいましたが、少し、サイズ的に小さいと思いました。
縦6cm 横5cm 陶磁器 金城次郎窯ひろ
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一輪挿し(?) 金城次郎
これも、金城次郎氏の作品です。注ぎ口があれば沖縄の酒器「カラカラ」なのですが、注ぎ口がないので、一輪挿しと考えています。 壺屋焼の上焼で、魚紋が裏表に描かれています。
縦8cm 横10cm 陶磁器 金城次郎窯ひろ
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魚紋海老紋花瓶(金城次郎)
沖縄初の陶芸部門人間国宝の金城次郎氏の作品です。 最初、壺屋に築窯、のちに読谷村に移築して作陶を続けられました。 現在も金城次郎窯として、ご長男の家系で続いています。 上焼(じょうやち)と呼ばれる化粧土を施した陶器に釘彫りで魚や海老などを彫り、現在の壺屋焼にも多大な影響を残されています。 登り窯で焼かれているので、片側に少し焦げが生じています。B級品ということになるでしょうか。 金城次郎氏ご自身、あまり、出来不出来に拘らない大らかな性格の方だったようで、人間国宝になる前は、B級品を無駄にしないで、ただであげていたこともあったようです。 同氏は、民藝運動の提唱者、柳宗悦氏や河井寛次郎氏と交流があり民藝運動の体現者としての側面もお持ちです。
縦21cm 横10cm 陶磁器 金城次郎窯ひろ
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銘「曙光」 貞松善次
佐賀県有田町の陶芸家、貞松善次氏の作品です。 同氏は、辰砂釉、鈞窯釉、天目釉、黄金釉などの技法を駆使して、独自の表現に取り組まれています。 ことに、掲載作にも表れていますが、赤と黒のコントラストは鮮烈で有機的でもあり、場合によってはみるものに毒々しさを感じさせかねないものを内包しています。けして、見て、癒される作品ではありませんが、個人的には惹かれるものがあります。
縦 26cm 横30cm 陶磁器 彩窯ひろ
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飾花瓶 銘「氷紋」 藤井朱明
佐賀県有田町の陶芸家、藤井朱明氏の作品です。同氏は日展作家さんで、木の葉技法の巧として有名です。 2017年にお亡くなりになられています。 これは、全体に氷の結晶のような文様を凹凸で浮かび上がらせ、その表面に、呉須を滲ませるような太いラインが曲線を描いています。口は小さく、花瓶としての実用性はありませんので「飾花瓶」とされたのかなと思います。 この方の作品としては、木の葉技法を用いた杉林が幾重にも連なるような山並みの文様が有名ですが、この「氷紋」は、あまり見かけません。 そう思って、ネットオークションで確認をしたら、この「氷紋」と同種の技法を用いた花瓶が安価で出品されていました。 陶芸の場合、骨董ででもなかれば価格は上がりません。辛うじて、人間国宝クラスで維持されるくらいです(それも限られますが・・・)。そういう意味では、芸術としては認められていません。おまけに、安価な量産食器などの台頭で、産業全体としても衰退しています。陶磁器好きとしては残念です。
縦31cm 横34cm 陶磁器 朱明窯ひろ
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色絵釉彩「黄鶺鴒山吹紋面取壷」 影山明志
色絵磁器作家の方らしく、東京芸術大学卒、藤本能道氏門下です。日本工芸会正会員。 この方の作品は余白が大きく、絵が紋様的だと思っています。ただ、その余白を持て余していないことが上手な方なのだろうと思います。 絵は細密ですが、鳥の表情に愛らしさが少ないので、今風の好まれる筆致ではないように思います。 鶺鴒の背の柔らかな感じなど、一部に輪郭線のない朦朧体的な表現があるのも特徴かと思います。 最近では、鳥よりも花の図案が多くなっています。非常に精緻でハッとするような美しさがありました。
縦32cm 横24cm 陶磁器 影山明志ひろ
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銀河釉作品 銘「遥かなる長安」
佐賀県武雄市の陶芸家、中尾哲彰氏が創出した銀河釉の作品で、銘は「遥かなる長安」です。 オリジナルは「2001 モナコ日本文化フェスティバル モナコ公国名誉賞」「2010 タイ王室ソムサワリ王女芸術賜杯」を受賞している非売品で、これは、その姉妹品ということになると思います。 「茜銀河」という釉薬を用いた作品ですが、オリジナル(窯元のHPにあります)に比べると、表面を覆う結晶がボリューミーです。 中国の漢から唐の時代、その都の長安(現在の西安)からローマにかけてグローバルで自由な文化圏が構築されていました。その時代への共感と未来へ向けた文化の再生の願いが込められているとのことです(以上、HPより)。 端正な器の形状は紀元前15世紀頃にレバノンで発生して広まり、シルクロードの交易などで、ギリシャ・ローマからワインやオリーブオイルなどを入れて東方に運搬する際に使われた器「アンフォラ」に着想を得たとおっしゃっているのを聞いたことがあります。 このかたちの器は複数つくっていらっしゃるのですが、かけられている釉薬に関わらず、すべてに、同じ「遥かなる長安」という名称が使われています。 この器の姿に込めた作家の中尾氏の強い思いがあるのでしょうね。
陶磁器 玉峰窯銀河釉 玉峰窯 銀河釉ひろ
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銀河釉 水差し
佐賀県武雄市の陶芸家、中尾哲彰氏の銀河釉の水差しです。 これは、漆銀河という名前が付けられている釉薬の作品で、夏銀河の濃い青よりも、さらに濃紺のベースの釉薬に浮かぶ結晶の色合いが「いぶし銀」のような渋い感じになっています。 姿も丹精で、口の辺りから胴に向けて流れる結晶が取っ手側に長く連なって、漆黒の夜空を流れる天の川のように見えます。 サイズ的にも約20cmで、花瓶としても使えそうです。 「読谷山花織(沖縄)」の敷物の鮮やかな黄色とのコントラストも似合っているように思います。
陶磁器 玉峰窯銀河釉 玉峰窯ひろ
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銀河釉 茶盌(椀型)
佐賀県武雄市の陶芸家 中尾哲彰氏が創作した窯変結晶釉「銀河釉」の茶盌です。 銘はありません。 「銀河釉」には、複数の色合いがあるのですが、これは「冬銀河」と呼ばれる釉薬で、本来は白い結晶が全面を覆う発色になります。 この茶盌では、見込みに青の濃淡のベース釉が白い結晶の隙間からバランスよく覗いていて、とても美しい発色になっています。 私が銘をつけるのであれば、晴れた空から舞い降りる雪を表す「風花」にしたいと思いますが、銘はつけないままです。 茶盌自体は、中尾氏の現在の茶盌に比べるとやや肉厚(それでも十分に薄手なのですが)で、どちらかと言えば初期の作品のようです。今では見られない特徴が高台や胴にみられますので、遠州流お家元の指導を受ける以前の作品かと思われます。 窯変結晶釉の特性上、完全に同じ作品はできません。そういう意味で、すべての作品が一点ものです。
茶道具 玉峰窯銀河釉 玉峰窯ひろ
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銀河釉 井戸茶盌
佐賀県武雄市の陶芸家 中尾哲彰氏が創作した窯変結晶釉「銀河釉」の茶盌です。 茶盌の中では、一番、気に入っています。 壷(又は花瓶)には作家ご自身がつけた銘があるのですが、茶盌については「所有者が銘をつけるもの」ということで、特段の銘はありません。 もし、つけるのなら「時空」ということにしたいと思っていますが、まだ、箱書きをしていただいてはいません。門外漢が下手に銘をつけると茶盌としての価値が下がってしまいそうですから。 「銀河釉」の中でも「碧空銀河」という比較的新しく工夫された釉薬が使われているようです。 この茶碗は遠州流お家元の指導を受けて茶道具として作られていて、驚くほど軽く薄づくりです。流派の「綺麗さび」という言葉がいかにも似合う茶盌だと思います。 同じ釉薬を使って作られたものでも、窯変結晶釉の特性上、発色や結晶化の程度は個々の作品で異なり、完全に同じ作品はできません。そういう意味で、すべての作品が一点ものです。
茶道具 玉峰窯銀河釉 玉峰窯ひろ
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銀河釉作品 銘「雨水(うすい)」
佐賀県武雄市の玉峰窯(中尾哲彰氏)の銀河釉の作品です。 銘は「雨水(うすい)」です。 この作品は、淡い青に発色する「春銀河」という釉薬です。 ロクロ成型の作品で、成型時の指痕(首の部分)又は成型後の削り(胴の部分)による幾重にも並ぶ輪状の線がアクセントになっています。 そこに釉薬の濃淡と結晶の流れができて、器に沿って水が流れ落ち、波紋となって広がってゆくようにも見えて「雨水」の銘の理由のひとつともなっています。
陶磁器 玉峰窯銀河釉 玉峰窯ひろ