No.16 フィアット 500e (初回特別仕様)

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なお『500e』の最高出力は87kWだが、マウリツィオさんによると「87kWというのは補正を行ったうえでの数値であり、実際にはそれ以上の性能を有しています」と解説する。また、バッテリーのライフサイクルは8年もしくは16万キロメートルを走行した時点で容量70%を確認しているという。さらに各部の設計には、将来的にも最新のコンポーネンツが採用できるよう拡張性にも考慮したと語る。
次にマウリツィオさんは、静粛性に関しても言及。「EVエクスペリエンスの向上を目指し、NVH、音響性能などで最善を追求しました」と説明する。それは、カブリオレ仕様の『500e OPEN』でも同様。
ルーフ開放時もノイズは限りなく気にならないようにするのが目標であったと振り返る。そして「プレミアムスモールカーという製品コンセプトに相応しい水準を目指しました」と付け加えた。

『500e』には3つの走行モードがあり、その中のひとつに「シェルパモード」がある。シェルパ(Sherpa)とは、一般的には高地における山岳ガイドのことを指す。いっぽう『500e』の場合は、バッテリー残量が不足した場合などに、時速80km以下で走行するとともに、エアコンやシートヒーターなどを自動でオフ(手動で再起動することが可能)にして消費電力をセーブし、航続可能距離を伸ばす機構だ。ラウラさんは「the end of journeyに、家まで最大の効率で的確に導いてくれることからシェルパと名付けました」と背景を説明する。
なお、この「シェルパモード」および「レンジモード」では、アクセルペダルだけで走行できるワンペダル・ドライブが可能だ。いっぽう「ノーマルモード」では、通常の内燃機関AT車同様のアクセル&ブレーキ操作で運転ができる。ふたつの運転方法を設定した理由について、マウリツィオさんは「完全なEV体験と、これまでと変わらない運転の安心感。その双方を実現できるからです」と解説する。

『500e』は前後重量配分において、限りなく均等に近い52:48を実現。バッテリーによる低重心との相乗効果で、高い操縦性を可能にした。
ドライバビリティといえば、マウリツィオさんは、さらに興味深い話を明かしてくれた。「コンフォートとハンドリングのバランスを追求するうえで、従来の500オーナーが求めているものも尊重し、設計を進めました」。
そこで思い出したのは、筆者の知人のイタリア人である。少し前、1968年製の『Nuova 500』を突如購入した。彼女の場合、中世都市の物置を改造した古く狭い車庫に入るクルマが他に無いというのが『Nuova 500』を選んだ第一の理由だった。だが同時に、四十数年前に免許を取得したときに味わった、独特ともいえるダイレクトな操縦感覚が懐かしくなったことも、突然手に入れたきっかけだったらしい。ということは、歴代『500』のテイストを加味したという『500e』は、EVに関心があるユーザーにとどまらず、長年の『500』ファンも魅了することだろう。

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