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迫鉄平「CCAD」
写真を撮る一瞬の時間を引き伸ばして動画にする。どれも見過ごしてしまうような日常そのものの光景。何か劇的なことが起きるわけではない。けれど何かが起こりそうな面白みをたたえている。 作家は映像での応募が可能になったその年にまさにその映像で「写真新世紀」のグランプリをかっさらった猛者。あくまで写真を撮るように目の前の光景にスマホを向けて撮られた映像の数々は、写真と動画の位置関係をフラットにとらえていて自分には新鮮に映った。 また、関西出身でありながら私も見知っている名古屋の景色が不意に現れる(画像にあるスケートリンクもそのひとつ)ので油断ならない。
CCAD 迫鉄平 個展「Carbon, Copy, Analog, Delay」2016.8.6-8.28 YEBISU ART LABOあさはらやあま
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札本彩子「false image 2/2」
某チェーンのハンバーガーのようで、よく見るとポテトチップスやラーメン、お米やちくわの天ぷらなど現実にはあり得ないものが挟まっている。作家がひとつひとつ自作した食品サンプルの精巧さに驚きつつも、全体から受ける印象は「美味しそう」からは遠く離れている。 京都のHAPSでの個展(「last night meal」2017.11.10-12.4)では、食品サンプルで大きな臓器をつくって食べるという行為の持つグロテスクさを感じさせて印象に残っていて、その直後にこの作品と出会ったので思わず購入を決めてしまった。
false image 2/2 札本彩子 「ウォーホール美術」2017.12.12-12.24 KUNST ARZTあさはらやあま
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尾野訓大「砂山」
大きな砂の山を撮った写真である。けれど、これが真夜中に撮られたと聞くと急に自分の目に頼りなさを覚えてしまうのは何故だろう。カメラの長時間露光の機能を利用して撮られた作品は、人間には不可能な夜の景色を見ることを可能にしている。これは事実なのか、脚色された事実なのか。砂の山が緑色なのは現場にある照明の種類に影響されているらしい。 この作品と出会ったのは、ある大学内のギャラリーで行われた作家の個展だった。トークが行われたのは平日の昼間。学外の人間は私ひとりしかおらず、進行役の方からたびたび話を振られて冷汗をかいた。 それから何年か経ったあと、コマーシャルギャラリーでの初個展でこの作品と再会。個展のメインとなるものではなかったけれど、個人的に思い入れがあったので購入を決めた。
砂山 尾野訓大 個展「思春の森」2014.5.17-5.31 AIN SOPH DISPATCHあさはらやあま
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三田健志「On the contour line」
大洲奏という冒険家をめぐるシリーズのうちの一作。大洲は世界各地を旅して回り、そこで見つけた植物や鉱物を製薬会社などに送ることで活動資金を得るという、近代的なスタイルを築いた冒険家のひとりと言われている。 ナップサックを背負い斜面を登っている男がその大洲だろうか。実は画像そのものはクリエイティブ・コモンズのライセンスのもと提供されているものを使用している。そして紙に出力して凹凸を作ったものを撮影するという行程を取っていて、下のほうには紙の端がわざと写り込んでいる。 ひとつの画面のなかにいくつもの虚構が重なっていて、写真の世界のまた新しい面白さを感じさせてくれた。
On the contour line 三田健志 個展「等高線を登る」2016.7.30-8.27 雅景錐あさはらやあま
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今村遼佑「UNTITLED ハクモクレン」
UNTITLED ハクモクレン 今村遼佑 個展「そこで、そこでない場所を」2018.11.2-11.30 eN artsあさはらやあま
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荒木由香里「Bomb (red)」
Bomb (red) 荒木由香里 個展「Existence」2013.10.12-10.26 AIN SOPH DISPATCHあさはらやあま
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本山ゆかり「画用紙(5人)」
画用紙(5人) 本山ゆかり 個展「SUPER FUNCTION」2015.12.3-12.27 YEBISU ART LABOあさはらやあま
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小濱史雄「長い休日」
今やすっかり欠かせないものとなったGoogle Earthのストリートビュー機能。映像はそのストリートビューの景色のなかを進んでいくけれど、景色はところどころで間伸びして歪んでしまっている。これはインターネット回線速度が遅いためバグを起こしているらしい。 学生時代の展示や卒業制作でこの作品は見ていたけれど、コマーシャルギャラリーではじめて展示されたのは作家が大学を出たあと、インディペンデント・キュレーター長谷川新氏による企画(展示タイトルは正式には「IN MIRROR」に取消し線)。上田良氏の作品をはじめて見たのもこの展示だったと記憶している。 12分13秒(画像は部分)
長い休日 小濱史雄 「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」2015.1.10-3.1 the three konohanaあさはらやあま
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加藤巧「in a day #7」
in a day #7 加藤巧 「Transfer Guide」2017.11.11-12.24 the three konohanaあさはらやあま
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黒宮菜菜「Bedroom」
Bedroom 黒宮菜菜 個展「うつつ」2018.9.29-10.27 ギャラリーノマルあさはらやあま
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谷川美音「リフレインの向こう側 08」
これが漆の作品だとは信じられないというのが最初の印象だった。太いペンで試し書きした筆跡を起こしたような形は、漆芸と聞いて浮かぶイメージからは大きくかけ離れている。けれど、よくよく見て見ると細部まで丁寧に作られていて、漆の持つ美しさをはっきりと実感できる。 ちなみに裏面には磁石が仕込んであるので位置を合わせて画鋲を刺せば壁に設置できるという簡単さ。ここでも細やかな仕事ぶりが発揮されている。
リフレインの向こう側 08 谷川美音 「ART OSAKA 2017」2017.7.7-7.9 Finch Artsあさはらやあま
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永井天陽「metaraction #5-3」
ピンク色のアクリルはマリア像を形取られている。両手を少し広げた、慈愛に満ちたその姿。アクリルのなかにはバービー人形が押し込められている。まるで使役されるように。聖と俗というまったく異なる立場にいるふたつが合わさったとき、妙にグロテスクな印象を受けるのはどうしてだろうか。 立体作品では珍しくエディションのある作品で、このときはなかのバービーを選ぶことができた。タイプの異なる3つの候補のなかから、前髪があって瞳の色が青いものを選んだ。作家とメールのやり取りをして、面白い体験をさせてもらった。
metaraction #5-3 永井天陽 個展「いつかのニュース」2015.6.9-6.21 gallery blankaあさはらやあま
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東慎也「Spitting Woman」
spitが「ツバを吐く」という意味だと作品タイトルの意味を調べてはじめて知った。決してきれいとは言えない人物や行為が勢いのあるタッチで描かれていて、どこかポップな印象さえ受ける。 興味を持ったのはある作家さんのアトリエへお邪魔したときに壁にかけてあった作品を見たのがきっかけ。いいなと思っているうちに人気が高まっていって、このときも展示初日に既にいくつか赤丸がついていた。
Spitting Woman 東慎也 「YOUNG ARTIST EXHIBITION 2019」2019.4.5-4.28 EUKARYOTEあさはらやあま
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新平誠洙「00;33;44;00」
ビル・エヴァンスの演奏動画の一コマを描いていて、左右に入るピンクの線はふたつの作品のあいだに時間が流れていることを強調している。作品は一点ずつの購入もできたけれど、ふたつ並べないと意味がないと思い同時に購入を決めた。 ずいぶん後になってから彼のドキュメンタリー映画を見た。鍵盤にぐっと顔を近づけるようにうつむきながら弾くのが彼のスタイルだと知った(何となくお辞儀した場面を描いているのだと思っていた)。近しい人の死や薬物乱用に苦しみながらもピアノを弾きつづける彼の演奏がとても美しく感じられた。
00;33;44;00 新平誠洙 個展「windows upset」2015.6.9-7.18 ARTCOURT Galleryあさはらやあま
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新平誠洙「00;33;42;20」
作品をはじめて見たのは京都市立芸大の卒制でのこと。いくつか展示しているなかで惹かれたのが、ビル・エヴァンスを描いた大きな作品だった。この人の個展があったら作品を買いたい。見ているうちにそんな願望が込み上げてきた。 およそ一年後に行われた待望の個展。そこで出会ったのが、卒制に比べればサイズは小さいものの、まさしくビル・エヴァンスを描いた作品だった。
00;33;42;20 新平誠洙 個展「windows upset」2015.6.9-7.18 ARTCOURT Galleryあさはらやあま