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Hologon T* 16mm F8 (G)
Hologon 16mm F8はGシリーズの登場時からラインナップされていました。Hologonのみがドイツ製で,おそらくZeiss本体(?)による製造だったのかもしれません。ZeissはHologonの復活に強い意欲を示していた,という説もあります。 WikipediaによるとHologonの発売時(1994年)の希望小売価格は28万円だったようで,Zeissのレンズとしては比較的リーズナブルな価格であったGシリーズにあってダントツの高級レンズでした。 Hologonは最初はレンズ交換式のContarexカメラに15mm F8の超広角レンズを固定した「ツァイス・イコン・ホロゴン・ウルトラワイド 」というカメラとともに1968年に登場します。その後1972年にLeica Mマウント用の交換レンズとしてHologonはごく少数(400本くらい?)製造されたようですが,滅多に見かけることはありませんし,あっても普通に100万円超の価格で取引されています。2024年9月に松屋銀座で開催された世界の中古カメラ市ではじめて実物を見ましたが,200万円以上の値が付いていました。 Contax Gマウントで復活したHologonは登場時にはずいぶんと話題になったように記憶しています。しかし,その価格から自分には無縁だと思っていました。2002年頃にはモニターキャンペーンと称してBiogon 21mmやHologon 16mmが希望小売価格の1/4ほどで投げ売りをされていたようです。京セラのカメラ事業撤退に向けての在庫一掃セールだったというもっぱらの噂ですが実際のところはわかりません。新品のHologonが7万円くらいだったというのは驚きの価格です。 ただ,これに関しても真偽不明の都市伝説があるようで,シリアル番号が812xxxx番台あたりの個体がモニターキャンペーンで投げ売りされていて,投げ売り対象の個体は実はデキが悪い個体だという怪しげな話です。ちなみに,私の手元にある個体はまさにその投げ売りバージョンと噂される812万番台の個体です。 Contax G用のHologonは3群5枚構成で前玉は大きな半球,後玉は小さな半球形状で絞りはなくF8固定です。超広角レンズも標準レンズと同様に最初は対称型レンズからはじまり,Biogonタイプを改良というか洗練・単純化をしてHologonになったという考え方もあるようです。Zeissの超広角対称型レンズといえば私のなかではBiogonよりもTopogonのほうがしっくり来ます。別に何かの根拠があるわけではありませんが,HologonはTopogonの改良型なのではないか,と個人的には考えています。だからどうだってことはないのですが。 Hologonはバックフォーカスが極端に短く特殊な形状であるため,Contax Gマウント用のマウントアダプタではミラーレス一眼カメラに取り付けることができません。Leica Mマウントに改造して使うのがお作法です。Leica Mマウントへの改造をやってくれるところはいくつかあるようですが,台湾あたり(?)で開発されたらしいマウント部分をごっそり入れ替えるキットを調達して自分でマウントを交換するのが安上がりで簡単です。かつては3万円くらいでしたが,円安もあって値段が高騰しています。eBayでは香港から発送されるものが見つかることが多いように思います。アメリカから送られるものや台湾から送られるものもありますが,ブツは同じものだと思います。Hologonを使ってContax G1/G2以外のカメラで撮影するためには絶対に必要ですので,ヤフオクで未使用品がでているときにすかさずゲットしました。マウントの交換は簡単でネジを3本はずすだけです。Made in Germanyと刻印されたマウントを取り外すのはちょっと残念ですが,いつでももとに戻せるので気楽に試すことができます。ここに並べている写真の個体もLeica Mマウントに交換済みのものです。 Leica Mマウントに改造したHologonをSonyのαシリーズで使うにはLeica MマウントをSony Eマウントに変換するアダプタを介して当然のように装着できますが,Hologonの後玉の保護用ガードがシャッター幕と干渉してシャッター幕が壊れる危険があります。レンズを上向きにしているときは干渉しないけどレンズを下向きにすると干渉する,という本当にごくわずかのシャッター幕のたわみによって干渉したりしなかったりするという話があるほどのギリギリぶりです。したがってSony αで使う時は電子シャッターで撮影する,が基本です。 私はSony αに装着するのが怖かったので,Leica M Monochrom Typ 246に装着して撮影してみました(これも怖かったけど)。 Hologonの特徴は,超広角にもかかわらず歪曲がない一方で周辺光量落ちが非常に大きい,という点です。フィルムカメラの時代はあまり問題になりませんでしたが,デジタルカメラになってからは光がセンサーに正面から入射しないと感度が悪くなるという特性によってバックフォーカスが短いレンズはデジタル一眼での撮影には周辺の色被りなどが問題になるようになりました。Leica M246はモノクロセンサーなので色被りは本質的にありませんが,周辺光量が大幅に落ちているのはレンズ本来の周辺光量落ちに加えてテレセントリック性が満足されないことによるセンサーの感度低下が原因だと思われます。いくらなんでも落ちすぎ,というくらい落ちます。 このレンズによる作例を https://mor-s-photo.blogspot.com/search?q=Hologon+16mm+F8 においています。 #レンズ #MF #Contax_G #Hologon #Carl_Zeiss #16mm #F8 #広角 #単焦点
MFレンズ Contax G Carl ZeissMOR
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Retina-Tele-Arton f:4/85mm
Schneider-Kreuznachがデッケルマウントのコダックレチナ用に供給したコンパクトな中望遠レンズです。コンパクトなぶんだけ開放F値は大きく現代の感覚では85mmでF4ってどうなの,という感じになりがちですがレチナが現役だったころは明るくはないにしても特別暗いという感覚ではなかったのだと思います。 このレンズについてはあまり情報がないのですが,4群5枚のXenotar型の構成のようです。デッケルマウント用レンズのご多分にもれず,最短撮影距離が長く,1.8mもあるので使い勝手はあまりよくありません。また,レンズ先端のフィルター枠がバヨネット式のため汎用的なねじ込み式のフィルタが使えませんし,キャップでさえも簡単に見つかりません。キャップに関しては被せ式のものを調達すれば実用的には問題ないと思いますが,保護フィルタがつけられないのは個人的には持ち出すときにちょっと怯んでしまいます。 筐体は非常に美しい作りで1950から1960年代のものづくりのこだわりが感じられます。この個体はシリアル番号から1965年の後半から1966年の間に製造されたものと考えられます。 #レンズ #MF #Retina-Tele-Arton #DKL #Schneider-Kreuznach #85mm #F4 #望遠 #単焦点
MFレンズ DKL Schneider-KreuznachMOR
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Sigma 85mm F1.4 DG DN | Art
SigmaのArtシリーズのレンズのなかの1本です。一眼レフ用のDG HSMからミラーレス一眼にあわせた設計になって,2020年8月に登場しました。 DG HSM時代は手振れ補正が入っていましたが,このモデルは小型化の代償としてなのか,手振れ補正ははいっていません。肥大化するArtシリーズにあっては,意外にも小型軽量を目指したと思われます。イマドキのレンズらしくAFも速く,AFのモーター音も聞こえません。 中古であれば10万円を大きく下回る金額で取引されていますが,その性能を考えると不当に安い価格だと思います。個人的には中古が安いことはうれしいことで,だからこそ調達することができた,とも言えるのでなんとも微妙なところです。Sony純正と比較すると,明らかにSigmaのほうがコストパフォーマンス高いといえると思います。もちろん,連写速度の制限など非純正であることのデメリットはあるのですが,超高速連写が必要でないような写真を撮っている人には十分すぎる性能だと思います。 このレンズによる作例を https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/85mm%20F1.4%20DG%20DN%20%7C%20Art に置いています。 #レンズ #AF #SonyE #Sony #Sigma #85mm #F1.4 #望遠 #単焦点
AFレンズ Sony E SigmaMOR
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Contarex Planar 50mm F2
1958年に登場したZeiss Ikon渾身のカメラContarex用の標準レンズです。ContarexはZeiss Ikonがカメラ事業から撤退する1973年で市場から退場しますが,最初から最後までラインナップされていたレンズの一つがこのPlanar 50mm F2です。Wikipediaによると4群6枚構成のレンズ構成で銀鏡筒で最短撮影距離が30cmの前期型と1965年に登場したフラッシュマチック機構を組み込んで黒鏡筒,最短撮影距離38cmの「ブリッツ」があって,Contarex用レンズ最多の計37,768本が製造されたとのことです。 しかし,実際には,レンズ構成は第3群の張り合わせレンズを分割して薄い空気レンズを挟んだ5群6枚構成の拡張ダブルガウス型で,4群6枚構成のPlanarはカタログ上で見られるだけで本当に出荷されたのかどうかはっきりしません。また,鏡筒の色についても,ブリッツではない黒鏡筒モデルもあり,これは,前期型の単なる色違いのようです。しかもその黒鏡筒モデルは,ブリッツタイプのように距離環だけがアルミの銀色でそれ以外の鏡筒部分が黒なのではなく,距離環も含めて黒いオールブラック版と呼ばれるモデルがごくわずか存在するのです。 どのタイミングでオールブラック版が市場に投入されたのかはっきりしませんが,おそらく,銀鏡筒,オールブラック版,距離環のみ銀色の黒鏡筒という順番でリリースされているであろうと考えています。オールブラック版はほとんど見かけることはないのですが,なぜか,私の手元にはSonnar 135mm F4のオールブラック版があるので,Planar 50mm F2以外にもオールブラック版が存在することは間違いありません。しかし,全てのモデルにオールブラック版があったかどうかは私が調べた限りではよくわかりません。軽く検索した範囲では,Planar 50mm F2の他に,Sonnar 85mm F2, Distagon 25mm F2.8は本物らしきものが出品されていました。 だからどうだ,という話は何もありません。私の手元のPlanar 50mm F2は前期型,最短撮影距離が30cmの銀鏡筒モデルです。シリアル番号は261万番代なので,1959年か1960年ごろの製品で,Contarex用レンズとしてはかなり早い時期のものだと思われます。Zeiss Ikon純正のバヨネット式フードは50-135mm用というかなり大雑把なものです。レンズ先端にはネジを切ってあるのでねじ込み式のフィルタを取り付けることもできますが,純正フードとは共存できない,という微妙な仕様です。フィルタとフードを両方使いたい場合は,バヨネット式のフィルタを取り付けてからフードをとりつけるか,ねじ込み式のフィルタを取り付けてから社外品の適当なねじ込み式のフードをつけるしかありません。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Planar%201%3A2%20f%3D50mm に置いています。 #レンズ #MF #Planar #Contarex #Carl_Zeiss #50mm #F2 #標準 #単焦点
MFレンズ Contarex Carl ZeissMOR
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Contarex Sonnar 85mm F2
Sonnarは1929年にベルテレ博士によって発明されたレンズ構成で,コーティングが発明される前の時代に,空気とガラスの境界面を可能な限り減らして収差を補正し,大口径を実現するものでした。貼り合わせレンズにより,わずかに3群に抑えていることが特徴です。3枚貼り合わせレンズが2群と1枚の前玉の組み合わせという3群7枚構成の85mmのSonnarはSonnarタイプの設計思想が存分に活かされたレンズと言えると思います。 モノコーティングが実用化されると,レンズ群の数を少なくして空気とガラスの境界面を減ずることの意味は次第に薄れてきますが,Zeiss Ikonの超高級カメラであるContarexには,85mmと135mmのSonnarがラインナップされました。特に,85mm F2は,コントラスト,階調,ボケ,発色,大口径が高度にバランスした,絶妙の設計で究極のSonnarとの呼び声も高いようです。Zeiss Ikonはこのレンズの設計に力を入れたのだろうと思われます。1958年の最初のContarexとともに登場し,Zeiss Ikonがカメラ事業から撤退する1973年まで製造が続けられました。その間の15年間に7585本が出荷されたようです(Wikipediaによる)。単純計算で月産50本にも満たず,工業製品として成立するとはちょっと思えないような数字です(もちろん,まとめて生産しておいて在庫を少しづつ出荷していたのでしょうけれど)。 とてもよく写るレンズだと思います。もちろん,よいレンズだというプラセボ効果も多分にあるのでしょうけれど,ボケも自然で滑らかなので積極的に開放を使いたくなります。手元の個体は,前期型の銀鏡筒のもので,比較的コンディションのよい個体でしたが,某マエストロにメンテナンスをしていただいたものです。ある特定のマウントアダプタを使うと確実に絞り羽が動かなくなる,ということがわかりました。正常に動作するアダプタとそうでないアダプタの違いはほとんどわからないのですが,レンズの絞り連動用のパーツを確実に壊すというものでした。まさかそんなワナにハマるとは思ってもいませんでした。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Sonnar%201%3A2%20f%3D85mm に置いています。 #レンズ #MF #Sonnar #Contarex #Carl_Zeiss #85mm #F2 #望遠 #単焦点
MFレンズ Contarex Carl ZeissMOR
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Contarex Distagon 35mm F4
1959年に西ドイツのZeiss Ikonから発売されたContarex用の交換レンズのひとつです。ContarexはZeiss Ikonが威信をかけて開発した究極の一眼レフカメラ,といってよいと思います。商業的には小さくて軽くて壊れないNikon Fをはじめとする日本製カメラに完敗してしまいます。結果として,Zeiss Ikonは1971 (1973?)年にカメラ事業から撤退します。 よく言われるようにContarexのrexはラテン語の王を意味していて,Contaxの王様,という意気込みで名付けられたものです。レンジファインダーのContaxは戦後はLeizがM型Leicaを出したことで大きく水をあけられZeiss Ikonは一眼レフに活路を見出そうとしたのだと思われます。しかし,凝った機構のために,兎に角,大きく重く高価でした。 現代の感覚では暗いレンズであってもContarexの現役時代はたいへん高価であったようです。さすがに現代では比較的安価に(といってもコンディションがよいものはそれなりのお値段で)入手することができます。 35mm F4に限ったことではないのですが,後年のContax/YashicaマウントのCarl Zeissのレンズはどちらかというと派手な発色でコントラストがはっきりした印象がありますが,レンジファインダーのContax Cマウントや一眼レフのContarexマウントのレンズはモノクロ時代のレンズということもあって,どちらかというと階調を重視したバランスであるように思います。それでも解像感は十分で階調と解像感をうまくバランスさせているのがContax/Yashicaマウントより前のZeissのレンズのよいところであると勝手に考えています。 手元の個体はシルバー鏡筒の前期型で,最短撮影距離は19cmで35mmレンズとしてはとても寄れます。これはいざというときには本当に便利です。ボケ味とかそういう概念がない時代のレンズなのですが,絞り羽根は8枚あります。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Distagon%201%3A4%20f%3D35mm に置いています。 #レンズ #MF #Distagon #Contarex #Carl_Zeiss #35mm #F4 #広角 #単焦点
MFレンズ Contarex Carl ZeissMOR
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Curtagon f:4/28 mm
このレンズについてはあまり情報がないのですが,Kodakのレチナ用交換レンズ(DKLマウント)のなかでは最も広い画角をカバーする広角レンズです。広角側が28mmというのは現在の感覚ではかなり残念な感じですが,レチナが現役だった時代は十分に広角だったと思います。 CurtagonはSchneider-Kreuznachのレトロフォーカス型のレンズ銘の一つで,28mmや35mmがあったようです。exaktaやM42マウントのものも多く作られています。DKLマウントのレチナはレンズビハインドシャッター方式の一眼レフなので,後玉の径に大きな制約があって,最短撮影距離が長いものが一般的です。exaktaやM42マウントのものは最短撮影距離が短いので,現代にあって,あえてDKLマウントのレンズを選択する理由はあまりありません。手元にDKLマウントのレンズが増えてくるとついつい手を出してしまった,という,もはや何が目的かわからないような理由で入手しました。 レチナのDKLマウントレンズは初期には距離計連動式のレンジファインダカメラでも使えるように距離計連動用のカムがついていましたが,後に一眼レフのみに対応してカムが省略されるとともに少し最短撮影距離が短くなりました。Curtagonも後期のモデルでは最短撮影距離は60cmに短縮されています。そうはいっても十分に最短撮影距離は長いので使い勝手はよくありません。 レンズ構成は典型的なレトロフォーカス型だと思われますが,6群6枚構成という説もあるようですが,おそらく6群7枚構成だと思います。DKLマウントのCurtagonについての情報はネット上でもあまり見つからないので実際のところはよくわかりません。 この個体は松屋銀座であった世界の中古カメラ市で売られていたものを入手しました。レンズ銘として「カータゴン」と書かれた値札の大きな紙がバブルケースの上に貼られていたので本体がよく見えず,これがCurtagonだということに気がつきませんでした。ふと値札の下を覗いて気がついた次第です。少しクモリはあるようでしたが,それほど高いわけでもなかったので,購入となりました。
MFレンズ DKL Schneider-KreuznachMOR
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EF-M 32mm F1.4 STM
2018年9月に登場したおそらくEF-M最後になるであろうレンズです。プロ向けのLレンズに匹敵する光学性能という触れ込みです。このレンズが登場した時はすでにRFマウントのミラーレス一眼カメラ(EOS R)が発表されていました。RFマウントが登場してもはやEF-Mは終わった,と多くの人が思ったタイミングでリリースされました。おそらくCanonのなかではRFとは関係なく開発されていて,最終段階にあったためRF登場後であっても市場に投入されたのだと想像します。 しかし,このレンズの後,EF-Mレンズは5年以上経過しても新しいレンズが登場するという噂さえも聞こえてこないので,おそらく,CanonのなかでEF-Mシステムは,レンズ,カメラともに完全にその役目を終えている,と考えるのが妥当だと思われます。RFマウントでAPS-CフォーマットのカメラであるR7, R10, R50もリリースされ,APS-C用のRF-Sレンズも登場しているのでEF-Mはもう終わったと考えるべきでしょう。 私の記憶では,CanonはAPS-Cサイズのイメージサークルをもつレンズに対してはLレンズを一つもリリースしてこなかった,と思います。Lレンズに匹敵するという触れ込みで登場した32mm F1.4は,EF-Mシステムの有終の美を飾るレンズと言えるかもしれません。 実際,よく写りますし,EOS M6 Mark IIの高画素にも十分に対応できる解像度があります。現代的な意味でとてもよくできたレンズだと思います。 このレンズによる作例を https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/EF-M%2032mm%20F1.4%20STM においています。 #レンズ #AF #EF-M #Canon #32mm #F1.4 #標準 #単焦点
AFレンズ EF-M CanonMOR
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SEPTON 1:2/50
デッケルマウント と言えばSeptonと言ってもいいくらいDKLマウントレンズを代表するレンズです。 生産数の多さで言えばColor-SkoparやSkoparexには及びませんが,VoigtlanderのDKLマウントレンズのなかでは3番目にたくさん生産されたレンズで5万本以上生産されたようです。1960年に高級カメラのUltramaticとともに登場し,1967年まで生産されます。4群6枚のダブルガウス型構成の1群と2群の間に凹メニスカスを挟んだ独特の構成です。 ネット上には同じような解説が多数あるので特にここで改めて述べる必要はないのかもしれませんが,簡単にまとめると, 1) 7枚玉であるにもかかわらず明るさを欲張らず,描写性能に特化した。 2) Septonという銘は数字の7に由来する。 3) 音までも写すと言われるほどの素晴らしい描写 というのが通説です。 Voigtlander自身も,その商標使用権を得たコシナもSepton銘のレンズはこのDKLマウントのレンズ以外には出していません。Septonは登場時は距離計連動用のカムを備えており,最短撮影距離も90cmでしたが,その後,他のDKLマントレンズと同様に距離計との連動機構を捨てて撮影距離を短縮しています。距離計用カムを持たない後期型では最短撮影距離は60cmになっていました。 SeptonはDKLマウントレンズとしてはSchneiderのXenon 50mm F1.9と並んでもっとも明るいレンズの一つでした。Septonが開放F値を欲張らなかったのは,そもそもレンズビハインドシャッター方式の一眼レフで後玉を大きくとれず大口径化が難しいという制約があったために,F2で可能な限りよいレンズを作りたい,と考えたからかもしれません。 Septonは多くの個体でバルサム切れが発生しており,製品寿命が限界に近づいていると考えられます。製造時のミスでバルサムの配合を間違えた,という説もあるようですが,実際のところはよくわかりません。この個体もバルササム切れによると思われる曇りが発生しています。製造番号が670万番台なので1967年ころの製造と考えられます。最短撮影距離は90cmの前期型ですが生産の最終年で後期型に切り替わる直前くらいの個体だったようです。 #レンズ #MF #SEPTON #DKL #Voigtlander #50mm #F2 #標準 #単焦点
MFレンズ DKL VoigtlanderMOR
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SKOPAREX 1:3.4/35
Voigtlanderのベッサマチック用SKOPAREXです。ざっくり言えばBessamatic用の3群4枚の典型的なTessar型であるColor Skopar 50mm F2.8をベースに焦点距離を35mmにしたもの,と言えます。ただし,Bessamaticは一眼レフでミラーがあるため,レンズはバックフォーカスを長くとらねばなりません。そのために,Tessar構成のレンズ前端に2群2枚のレンズを追加して5群6枚構成のレトロフォーカスタイプで設計されています。 Skoparexの祖先はTessar型のColor Skoparですが,これをレトロフォーカスタイプにしたProminent用のSkoparon 35mm F3.5が直接の先祖だと考えられます。マウント形状はDKLと同じであるものの後のBessamaticとは互換性がないVitessa-T用のSkoparet 35mm F3.4となり,いわゆるDKLマウントのBessamatic用のSkoparex 35mm F3.4へと繋がっていきます。 Bessamatic用のSkoparex 35mm F3.4は大きく分けて前期型と後期型があり,前期型はVoigtlanderが出すつもりだったレンジファインダー式カメラとの互換性を考慮して距離計に連動するためのカムが装備されており,最短撮影距離も1mでした。当時は35mmレンズは十分に広角レンズだったと思われますが,広角レンズなのに1mまでしか寄れない,というのはなんのための一眼レフ用レンズなんだ,という中途半端な仕様でした。 その後,レンジファインダー式カメラは実現しないまま,一眼レフカメラが全盛となり,Skoparexも距離計連動のためのカムを捨て,最短撮影距離を40cmとした後期型になります。最短撮影距離がどうしても長くなってしまうビハインドシャッター方式のBessamatic機のなかでは最短撮影距離の短さで1,2を争うレベルであったと言えます。 Skoparexは1960年から1969年まの9年間で6万本強が生産されたということです。1969年にはVoigtlanderはZeiss Ikonに吸収合併されて消滅しますが,ブラウンシュヴァイクの工場は操業を続けます。SkoparexはZeissのICAREXやSL706用レンズとしてマウントをICAREXやM42に変更されます。レンズ構成はBessamatic時代の5群6枚のレトロフォーカス型であることに変わりはなかったようですが,光学設計は微妙に変更されているようです。したがって,同じレンズ銘でもVoigtlander時代とZeiss時代では異なる描写となっているようです。その後,1972年にはZeis Ikonのカメラ事業とVoigtlanderがRolleiに移譲され,RolleiからColor Skoparex銘のレンズがリリースされます。 1981年にはそのRolleiも倒産し,Voigtlanderの商標は別の会社に移譲され,現在は日本のコシナが商標を使っています。コシナからはColor Skopar銘のレンズはでていますが,Skoparex銘のものはないようです。だからどうってこともないのですが,コシナがSkoparex銘を使わない理由は少し気になります。 この個体は最短撮影距離が40cmの後期型でシリアル番号が700万番台なので,Voigtlanderとして最後期の1965から1970年の間に製造された個体であると考えられます。この頃のVoigtlanderのシリアル番号は1年におおよそ20万づつ増えていることを考えると,この個体は1967年ころの製造ではないかと推察されます。 #レンズ #MF #SKOPAREX #DKL #Voigtlander #35mm #F3.4 #広角 #単焦点
MFレンズ DKL VoigtlanderMOR
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COLOR-SKOPAR X 1:2.8/50
Voigtlanderのベッサマチック用COLOR-SKOPAR Xです。50mm F2.8の典型的な3群4枚のテッサー型のレンズです。Schneider-KreuznachでTessarを設計したかの有名なトロニエ博士がVoigtlanderに移籍後に設計したレンズで,デッケルマウント用のColor-Skoparは1959年から1967年までの間に20万本弱生産されたそうです。そのため,中古レンズは豊富にあり,状態のよいものを選ぶことができます。 デッケルマウントのレンズでは当たり前の最短撮影距離が1mという使いにくいレンズですが,作りは贅沢で真鍮(たぶん)の削り出しの精巧なマウントとアルミの短い鏡筒が美しく,小さいけれどもずっしりとした重みを感じます。 Voigtlanderは1756年に創業した世界最古の光学メーカーですが,1950年代中頃をピークに日本製のカメラにおされて業績は悪化していきます。1956年にはカール・ツァイス財団に売り渡され,1969年にはツァイス・イコンに吸収合併,1971年にはツァイスが民生用レンズの生産をやめることを決定したことに伴いローライに商標権を売却,1972年には伝統あるブラウンシュバイクの工場が操業を停止しています。そのローライも1981年には倒産しています。 1999年に日本のコシナがVoigtlanderの商標の通常使用権の許諾を得てかつてのレンズ銘で新しいレンズを開発,販売しています。Skoparもそのような新しいレンズに与えられた銘の一つです。ただ,レンズ銘は伝統あるものですが,レンズそのものは普通にコシナのレンズというだけで,かつてのVoigtlanderのテイストが感じられるかどうかは少し別の話のように思います。 この個体はシリアル番号から1963年製であることが推察され,デッケルマウントのカメラがまだ勢いがあった頃のものだと考えられます。ヤフオク!で入手しましたが,純正のスカイライトフィルタとかぶせ式の汎用品と思われるフードがついていました。コンディションは可もなく不可もなく,実用には特に問題はないものでした。 #レンズ #MF #COLOR-SKOPAR #DKL #Voigtlander #50mm #F2.8 #標準 #単焦点
MFレンズ DKL VoigtlanderMOR
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LUMIX G VARIO 12-32mm/F3.5-5.6 ASPH./MEGA O.I.S.
2013年11月にLumix DMC-GM1とともに登場したレンズです。GM1用の小型で軽量なキットレンズとしてセットで使われることを想定して開発されたと考えられます。沈胴式でレンズ収納時は厚さ1インチ(=25.5mm)にも満たないコンパクトさです。厚さを約24mmに抑えたのはアメリカで販売するときに1インチより薄い,ということをアピールしようとしたからでしょうか(考えすぎかな?)。 質量は100gをはるかに下回ります。このレンズを装着したDMC-GM1は300g足らず(スペック上は約274g)ですから,下手なコンデジよりも軽いのです。例えばPanasonicの1インチセンサーのコンパクトデジタルカメラのDMC-LX9は24-72mmのズームレンズ付きで310gですから,GM1の軽さは際立っています。望遠端が少し短いものの,レンズ交換式でこの軽さは驚異的で,その軽さにLumix G 12-32mmが大きく貢献していることは間違いありません。 レンズを繰り出してもそれほど長くなるわけでもなく,コンパクトなままです。コンパクトなのに広角端を12mm (35mm判換算24mm)としたことはPanasonicの見識だと個人的には思います。小さくするなら広角端を14mmにしたほうが設計はずっとラクだったはずですが,それをあえて12mmからのズームとしたというのはある種のこだわりだったのだと思います。そういうこだわりが感じられるモノがとても好きです。 このくらいコンパクトだといろいろなところに設計上の無理がでてきてどこか破綻するところがありそうなものですが,さすがに現代の設計だけあってバランスよく設計されています。というか,むしろよく写るレンズだと思います。レンズにおける軽薄は正義だということを主張するレンズです。 このレンズによる作例を https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/LUMIX%20G%20VARIO%2012-32mm%2FF3.5-5.6%20ASPH.%2FMEGA%20O.I.S. に置いています。 #レンズ #AF #m4/3 #MFT #Panasonic #12-32mm #F3.5-5.6 #H-FS12032 #標準 #ズーム #手振れ補正
AFレンズ MFT PanasonicMOR
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M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
2010年4月にOlympusから発売されたマイクロフォーサーズ(MFT)規格の超広角ズームレンズです。一眼レフのフォーサーズ規格でも同様のスペックのレンズがありましたが,それをベースにMFTに手直ししたものと思われます。そうは言ってもフランジバック が全然違う一眼レフとミーレス一丸ではレンズの設計は根本的に違うものになって当然で,実際,構成するレンズの枚数からして違います(MFT用のM.ZUIKOのほうが1群1枚少ない)。前のモデルとの共通点はスペックだけ,ということだと思います。 広角域はフランジバックが短いミラーレス一眼が一眼レフに比べて圧倒的に有利ですが,加えてセンサーサイズが小さいので非常に小型・軽量なレンズが実現できます。この超広角ズームも35mm判換算で16-36mmという超広角なのに150gちょっとしかありません。センサーが小さく焦点距離が短いのでボケの量は少ないですが,超広角ならパンフォーカスでどんどんシャッターを切れば良い,という考えなので,個人的にはMFTと超広角は相性がよい,と思っています。 実際,どこにフォーカスが来てもピントはあってしまうのでフレーミングだけしてシャッターを切ればOKです。けっして高価(で高性能)なレンズとはいえませんが,写りは十分ですし,標準ズームに追加してもう1本持っていくことが苦痛ではない,というのは重要です。フルサイズのカメラを持っていけないときでも,気軽に交換レンズを複数持ってでかけられるのはマイクロフォーサーズの特権だと思います。 ただし,最近はMFTでもカメラ本体が巨大化しているので,荷物を少なくしたいときには,中古で調達したLumix GM5の一択になってしまっているのが残念です。 このレンズによる作例を https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/M.ZUIKO%20DIGITAL%20ED%209-18mm%20F4.0-5.6 に置いています。 #レンズ #AF #m4/3 #MFT #Olympus #9-18mm #F4-5.6 #広角 #ズーム
AFレンズ MFT OlympusMOR
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M-HEXANON LENS 28mm F2.8
1999年に登場したコニカ のHexar RFはライカM型とほぼ互換性のあるレンジファインダーカメラです。ライカに遠慮してかレンズのマウントはKMマウントという名前になっていました。微妙に距離計の連動が異なっていたようです。これはHexar RFの基線長がライカMのそれよりも少し(2.8mm)短かかったことが原因かもしれません(本当のところはよくわからない)。当時は,KMマウントのレンズをライカに装着して使えるように距離計の連動カムを調整するというサービスもあったようです。 M-Hexanon 28mm F2.8はHexar RFの広角レンズとして1999年にHexar RFとともに登場します。2003年ころまでは販売されていたようです。よく言われるのはライカの第4世代のElmarit M 28mm F2.8とウリ二つのレンズ構成で,よく写るレンズだというものです。和製エルマリートなどと呼ばれたりしたようですが,そのように呼ばれること自体,なんとなく負けた感があるというか,最初から負けているという感じがします。 そうはいっても,コニカはHexar RFに相当,力をいれていたようで,この28mm F2.8も構成レンズの全ての面をマルチコーティングして絞り羽も10枚というとても贅沢なつくりで,当時のコニカの意気込みが伝わってきます。 イマドキのレンズと比べるようなものではないと思いますが,開放からシャープできっちり写り,コントラストもある,今風の写りのレンズだと思います。なんというか,普通にちゃんと写るレンズ,と言えばよいでしょうか。もちろん21世紀にはいってすぐの頃に発売されたレンズでもまだ現役のものもあることを考えればM-Hexanon 28mm F2.8が「よく写る」ことはあまり驚くことではないのかもしれません。 このレンズによる作例を https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/M-HEXANON%20LENS%2028mm%20F2.8 においています。 #レンズ #MF #M-HEXANON #LM #Konica #28mm #F2.8 #広角 #単焦点
MFレンズ LM KonicaMOR
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smc PENTAX-DA 1:2.8 14mm ED [IF]
PentaxのAPS-Cセンサー用の超広角レンズです。発売時にはPentaxの超広角短焦点レンズとしては,もっとも広角でもっとも明るいレンズでした。 DA 14mm F2.8は2004年6月に発売されているので,デジタル一眼レフが本格的に普及し始めた頃の超広角レンズということになります。smc PENTAX-DAシリーズのレンズはデジタル一眼レフに対応した高解像度のレンズという位置付けですが,当時のカメラのセンサー画素数を考えると2020年代のレンズと比較するのはちょっと可愛そうです。2004年はPentaxからはAPS-Cサイズのセンサーを搭載したデジタル一眼レフとしては2世代目,610万画素の*istDSが市場に投入された年です。 APS-C専用の単焦点レンズとしては大きく重く,その後,2013年に登場したHD PENTAX-DA 15mm F4 ED AL Limitedが1段暗いものの小さく軽く,コーティングも進化していてDA 14mm F2.8の立ち位置は微妙になりました。さらに,2021年には35mm判換算21mmの画角としてはフルサイズ用のHD PENTAX-D FA 21mm F2.4 ED Limited DC WRが登場したことで,もっとも明るい単焦点レンズの座を明け渡すことになりました。 DA 14mm F2.8は大きく重い,ということに加えて,手持ちのAPS-CカメラがK-7で,ファインダーのキレがイマイチであったため超広角ではピントがつかみにくく,あまり持ち出しませんでした。本当はカメラのせいじゃなくて,横着だっただけなのですが。 さすがに古い時代のレンズらしく開放は甘いですが,当然のように絞れば普通に写ります。このレンズが登場した当時はこれが普通でしたし,特に不満もありませんでしたが,2020年代の開放からカリカリに解像するレンズばかり見ているとずいぶんと見劣りします。とはいえ,PKマウントのAPS-C用レンズとしては他に代わるものがありませんから,文句を言わずに使う,が正しいのだと思っています。 #レンズ #AF #smc_PENTAX-DA #PK #PKAF #Pentax #14mm #F2.8 #広角 #単焦点
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