大日本帝国陸海軍、迎撃ロケット局地戦闘機「秋水」

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ドイツのメッサーシュミットMe163を参考にしたロケット推進の戦闘機で、米軍の高高度重爆撃機B29を迎撃する切り札として、珍しく海軍と陸軍が協調して開発に取り組んだ。試作機は三菱重工業が機体、エンジンの両方を製作した。ロケットエンジンの巨大な推力で高度1万メートルまで3分半という驚異的な上昇力を発揮、時速600~800キロでB29に近づくと、両翼に搭載した30ミリ機銃で攻撃するという構想でした。ただ、ロケット燃料は上昇でほとんど使い切ってしまい、B29の巡航高度に滞空して戦闘可能な時間は1分半から3分しかなく、その後は滑空して帰投しなければなりませんでした。

 Me163の技術情報は1944(昭和19)年7月にドイツから帰還した潜水艦によってもたらされ、実物ではなく、機体とエンジンの設計説明書、ロケット薬液の組成説明書などの文献資料だけでしたが、三菱は同年8月から試作機の製作に着手しました。過酸化水素水やメタノール、ヒドラジンなどの化学反応で推進力を得るロケット機は、ジェットエンジンに比べれば構造が単純な上、燃料に石油を必要としないため、短期間で大量生産ができると軍部は大いに期待しました。しかし、未知の分野だけに開発は難航し、何とか実用に耐えるものが完成したのは45(昭和20)年の6月でした。試作1号機は7月7日に初飛行を実施、ロケットエンジンへの点火には成功したものの、構造上の問題から離陸直後にエンジンが停止してしまい、不時着して機体は大破しました。 その後、別の試作機の準備を進めましたが、エンジンの整備ができないうちに終戦を迎えたため、秋水がどれだけの実力を持っていたのかは分かりません。仮に実用化できたとしても、ロケット機は航続距離があまりに短く、B29の予想進路上に大量配備し、順次攻撃を仕掛けるといった戦術が必要で、日本の工業力を考えれば、実現することは不可能でしょう。

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