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060 蛇
思い出の中で自分が見た物が大きく拡大されて記憶される事がある。 思い出すのは、つぶらな瞳をした蛇の顔だ。正確には、私の指を噛んだ小さなつぶらな瞳の蛇。 今でも忘れられない、小学生の頃。 家庭科室の前にある側溝の藪に蛇がいた。ヤモリは良く見るが蛇は本当に珍しかった。 大きな蛇ではなく恐らく青大将だろう。見つけてすぐに蛇と目が合い、本当につぶらで美しい目をしていたと思う。私は何を考えたか触ろうと手を伸びしたところ…当然、噛まれた。 目にも留まらぬ速さで蛇の姿が消えて、次に認識したのは蛇の頭が私の指にくっついていた姿だ。(確か右手の薬指の側だったか) 本当にあの瞬間は時間が止まった。 すぐには何が起こったかわからず、反応が遅れてしまったが噛まれた!とわかった時に「うわぁ!」と大声を上げて手を振り回したら蛇の顎力は遠心力に負けてどこかへ飛んでいってしまった。痛みは全く無かったが、噛まれたあとを見ると二つの小さな穴に血が滲んでいた。 休み時間が終わり、教室に戻ったときに先生にこの事を報告したところ。ちょっとした騒ぎ、何故なら学校の近くではマムシが出ることもあるからだ。 母がすぐに呼ばれて近くの病院へ血清を打ちにいくようにといわれ病院へ。私は何が起こっているのか全くわかっていない。痛みもないし気分が悪くなっているわけでもないので無理もないと思う。 正直、この後に起こった事のほうが私的には悲劇だった…。 病院について母に一体何をするのか聞いたところ注射をするとの事…勿論、注射は嫌いだ。 体調も悪くなってないのに何故なのか!とごねても無駄。 すぐに処置室に通されてそこにいるのは若い男の先生とベテランの女性の看護師さん。 恐らく無毒な蛇に噛まれたのだろうとの見立て、ならば注射は打たないだろう…とホッとしたが、ところがどっこい。 とりあえず血清を打っときましょ、との事。何故だぁ!!と心の中で思いつつ腕を押さえられ注射。痛い。しかし…様子が変だ。私ではなく男の先生の様子がだ。 少し間をおいて「もう一回」 え?今、刺したよね。 母も怪訝な顔をしていたが、とりあえずもう一回刺される私。痛い。 看護師さんも緊張した顔で見ている。 そして先生「うーん…」 もう嫌な予感しかしない。どうやら二回目のトライも失敗したようだ。 ともう一度刺されたがダメだった。どうも私の血管を探す事に失敗しているようだ。 母は鬼の形相をしているようだし、先生はもはや冷静では様子…それを見かねてかベテランの女性看護師さんが横から手を伸ばし私に注射をしてくれた。本当にスムーズだった… 好奇心は猫を殺す…別に私は死んでないが代償は大きかったと心底思った一日だった。 ただそれでも、あの蛇のあの顔を忘れる事はできない。本当に可愛い顔だった。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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044 孔雀の羽
不思議な鱗を持った魚がゆらゆらと空を泳いでいる。その鱗はまるで孔雀の羽のようだった。魚は私の目の前を横切り、遠くへ行こうとした瞬間…目が覚めた。不思議な魚の夢だった。 目が覚めた時はしばらく枕から頭を上げることが出来なかった。私は感動の余韻に浸っていたからだ。特に色彩に。 あぁ、あんな色彩を自由自在に操ることができれば…とも同時に思っていた。私は色彩を扱う能力が不足していてそういったことに苦労する事が多かった。ただあの魚を見てからは苦手な色彩に勇気を持って向かう場面も増えた気がする。もう一度、夢の中で会えたらお礼を言おう。
2009年 ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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033 とがった山
学生だった頃の私が使っていた校舎はすでに取り壊され新しいものになっている。 古い校舎で暗く非常に雰囲気(何か出そうな)があったが私は好きだった。 研究室の隣は会議室のようになっているがあまり使われておらず学生の自習室のようになっていた。 そこでこの紋様を描いていて、友人が一言「お前、修行僧みたいだなぁ」との事。紋様を描いている際は無心であっても出来上がったら悦に入っているので修行にはならんだろうなぁと思った。 この部屋は講義が終わったら自然と人が集まってくるので色々な思い出がある。校舎内では基本的に飲酒禁止だが隠れて呑んでいて警備員がやってきて電気を消し、内側から鍵をかけてやりすごしたりとか…友人と談笑していたら隣からうるさいと壁ドンされたりとか…イベントで販売する作品を壁に貼っていたりとか。 校舎は無くなったが、あの部屋は今も思い出の中にある。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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023 雨と雲と太陽
私達の生活は一日一日は別のものではないし、それで終わりではない。 その日々が、紋様のように繰り返されるものだ。記録しなければ思い出せないから別々のものになってしまうと思う。 この紋様は天気からインスピレーションを得た紋様で、雨晴れ曇り曇り雨晴れ晴れ晴れ…とそういう繰り返しは紋様のようだと思って描いたもの。 時間や事象が太古の時代より機織りのように織られ、一つの壮大な紋様のようになっていたら…なんて事を考えたりもする。そんなものが存在しているとは思ってはいないけど、もし私がそれを見られたらどんな心の動きがあるだろうか。感動?恐怖?…どうだろう。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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022 力こぶ
これを描いていた時、オノマトペに対する印象をキャラクターにする事を考えていた。そのキャラクターに使おうと思っていた紋様だ。音は「おぉ!」おの力強い音から力こぶを連想し抽象化、紋様にしたのだろう…今見るともう少しやりようがあったのでは?と思うが、どうやらその当時の私はそういう審美眼は備わっていなかったようだ…稚拙な感じがあふれて恥ずかしい。ただ、当時はとにかく数を描くのだ!という気負いのようなものからそういう冷静さがなかったような気もする。コンセプトは面白い気がするのでいずれまた。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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016 パイナップル
なんかパイナップルの表面って…こんな感じだよねぇーなんて思いながら描いた紋様。 それでその後にパイナップルを調べて表面を見てみると…あらまぁ、全く違いますです。 でもなんでこういう風に描いたのかなぁと考えて思いついたのが、絵本やカタカナの書き取りが影響しているのではということ。ああいうのに載っているデフォルメされた絵が私に影響を与えたんじゃないかなぁなんて思っている次第。 そもそもパイナップルが皮付きで出てきたこともないし観察したこともなかったなぁ。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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015 2分の1のこぎり
別にのこぎりを描こうと思っていたわけではなく、2分の1で画面を区切っていこうと思った結果、あぁのこぎりみたいと思っただけ。 ちなみにのこぎりというと記憶の紋様には欠かせない道具です。紋様を描くパネルの木枠を作る際にのこぎりが必須ですからね。ただ、パネルを作るこの作業が一番骨がおれます…早く描きたいのに描くにはパネルが必要。100個作るのに長さ20mmが200個と長さ60mmが200個必要。一体何回木の棒にのこぎりをいれたことやら…なので2018年現在、サーキュラーソーテーブルが欲しいです! 未来の私、略してサキュソテーを使って楽していますか?今の私より。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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014 矢羽
スーパースローカメラを利用して弓から放たれる矢を観察する映像をみた時に非常に驚き、感動した事がある。 てっきり弓の軸はぶれずまっすぐ、無回転で飛んでいくと思っていたが実際は矢がしなり回転して飛んでいく様子が映っていて驚いた。 その後も物を機械仕掛けの万力で物をつぶす瞬間をスローにしたり水風船が割れる瞬間をスローにしたりと…お、なんかこれ面白そうじゃね?とりあえずやってみようぜ!っていう男子思考回路フルパワーを見せられて…おーおーわかるその気持ちと変に共感(笑) テクノロジーの進化で通常の肉眼で捉えることが出来ない世界を映し出すものを見たときにあの心にわきあがる感動は何度味わっても気持ちが良いもの。こういうものが人生を満たしていくのだなぁ…なんてね。
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013 畳(たたみ)
今は取り壊されてなくなってしまったが、隔年で夏に母方の祖母の家に遊びに行った。 その家はかなり大きく床は畳、幼い私ははしゃいで勢いよく転がった際にひざ小僧を「シュッ」とやった… あの独特の痛みは忘れられない。ひざ小僧で懲りればよかったが、ひじもその後にシュッとやってやけどしたのは良い思い出。あのやけど?痛いんですよねー…なんか肌がつるっつるになるし治りが遅いし… ちなみに中学生のころに体育館でジャージを着て転んだときもジャージが溶けて穴が開きやけどをした事もある。正直、ジャージに穴を空けず3年間を無事に卒業するのは高難易度だと思う…途中でサイズが合わなくなって新品にしても一度でも溶かしたらアウトです。例外は認められません!
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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012 線のアソート
この頃、早くも紋様はネタ切れ…毎日1枚は描くのだ!なんて意気込んだはいいもののネタがなければ描けない。 しばらくリビングのソファでうなって…その日は思いつく線の種類で画面を構成しようと考えた。今でこそ紋様を思いついたり思い出を記録することに苦労しないけど、始めた当初は一つ一つ思いつくことにすごく苦労した。しかもその紋様を魅力的に仕上げることも…まあこの点は550個以上の紋様を描き上げた今でも苦労しているけれど。 日々、紋様のことを考えてどうやって画面を構成するかを考えることで徐々にスムーズに紋様を考え付く回路が脳内で出来上がっていった気がする。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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010 自然公園のトンネル
自宅近くの自然公園は一本の道で縦断できる、その途中に一度地下に潜るトンネルがある…ただ小学生の頃そこは不気味であまり通りたくなかった事を覚えている。 昼でも薄暗くじとっとした空気、夕方になると蛍光灯がつくがその明るさも十分ではない…何かが出そうな。とにかく雰囲気がある訳です。 そこを通る時にトンネルの反響が面白いと言いつつ、大声を上げて自転車で駆け抜けたのは本心では怖かったから。 怖いなー怖いなー…まあ、実際はなにもでないんですけどね?子供の頃はそういう雰囲気の中でどんな怪人やお化け妖怪がでるかを想像してみんなと共有したのは思い出。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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007 ページの曲線
高校生の頃、授業に集中できずボーっと閉じられた教科書のページを見ていて一枚一枚の紙が映し出す影が美しいなぁなんて事を考えていたことを覚えています。特に辞書みたいな分厚い本の繊細な影を見るとそのミクロの世界に吸い込まれそうだ…なんて考えていたことを思い出します。あと本を半分に開いて左右のページを一枚ずつ中心に丸めていくなんてこともしていました…何をやってるんだか…
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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006 布と糸
私が紋様のモチーフを得る所でテレビもその一つです。 これは幕や天蓋月ベッドといった垂れ下がっている布から発想を得たものでした。家具のCMでも見ていたのでしょうか… それにしても…この頃の紋様は自由です。最初のころは紋様を描くにしてもルールが存在しなかったため始まる位置や終わる位置がバラバラだったりします。後にグリッドを使って紋様の位置を決めて描き始めるのですがこれはこれで良いかと。ところで今見ているとフカヒレに見えてきました…食べたことはありませんが。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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005 ワニの歯
ワニの歯…をイメージしてぎざぎざした物を描こうとしていた形跡は見られる…があまりうまくいっていないですねw というのもこれらの紋様は全てフリーハンドで描いている事と、描き始めて恐らく一週間程度であることから腕が伴っていないことが原因。今の私が描けば綺麗に描けるのですが、この頃の下手ウマ?は出せないだろうなぁと思います。そもそもウマじゃないか…ちなみに1番目の紋様はリペイントされた物なので非常に密度が高いのです。特別な紋様なのですね。ワニの歯を描こうと思ったのはネイチャー番組で本物のワニの歯を見たことから。当時は契約したばかりのケーブルテレビで今まで見たことのないチャンネルに夢中だったことを思い出します。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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004 テレビアンテナ
今はどうかはわかりませんが、少し前までは家の屋根には魚の骨のようなアンテナが沢山立っていた気がします。 電車から見える景色の中には魚の骨、骨、骨…小さいものから大きいものまで色々とありました。中には魚には見えない物もあったなぁ、三葉虫みたいな? 元はどんな魚だったかとか、どんな生き物だったかなどを想像して目的地に向かったものです。ちなみにキャラクターを家々の屋根から飛び回らせる妄想レーシングもしていたような… 今はスマホなどがあって暇つぶしには事欠きませんが、私が子供の頃はそんなものはなかったのでそんな妄想で暇をつぶしていました。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ