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Menomonia semele
ウィークス産の三葉虫、メノモニア・セメレ (menomonia semele) です。 数の少ないウィークス産にしては、セダリア・ミノル (Cedaria minor) に次いで産出が多い種と思います。ただ、比較的地層による影響が少なめのウィークスにしては、捻れた標本、横向きの標本、ボケたような個体が大半で、満足のいく標本がひどく少ない種でもあるように感じます。 この個体は、眼や顔線 (facial suture) 、頭部先端のヘラの細部がよくわかり、頭鞍の2列 x 3の顆粒、中軸の2列の顆粒なども明瞭に観察でき、保存状態がとてもいいです。それだけに、尾部がぐちゃっと、disarticulatedな状態になっている事が少々惜しい点です。 本体に比べれば大きな母岩の真ん中に、ポツンと寂しげに佇むこの構図も、どこかシュールで気に入っています。 一般にはあまり注目される種ではない気がしますが、前方よりの飛び出した寄り目、胸部の節の多さなど、ユニークな形質のセットを持っており、好みのタイプの三葉虫であります。
Middle Cambrian (Series3, Guzhangian) Weeks House Range, Millard County, Utah, USA Menomonia semeletrilobite.person (orm)
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Weeksina unispina
こちらは、ウィークシナ・ウニスピナ (Weeksina unispina) の標本です。ウィークス (Weeks) 累層産であります。 種小名の "ウニスピナ-単一の棘" の名が示す通り、軸葉第8節より一本の短めの棘が付いております。この特徴は同産地のゲネヴィエヴェラ (Genevievella) に同じですが、こちらの方がその棘が短く、小型で体高も低く、ゲネヴィエヴェラに比べると肉厚感はありません。 ウィークス産の三葉虫は、メニスコプシア (Meniscopsia) やクーセラ (Coosella) などでも見られるように、母岩の明るい色合いと三葉虫自体の平べったさが幸いしてか、消化器遺残物が残っている種が多いです。本種も同様であり、本標本でも頭鞍から胸節の棘のあたりまで、黒いシミのような消化器系の名残りが確認できます。 やや地味ながらも、小さくて可愛らしい種です。
Middle Cambrian (Series3, Guzhangian) Weeks Utah, USA Weeksina unispinatrilobite.person (orm)
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Genevievella granulatus
ウィークス (Weeks) 累層産、ゲネヴィエヴェラ・グラニュラトゥス (Genevievella granulatus) です。細部まで保存状態が非常によく、アップの高画質画像でも耐えるレベルの質感が素晴らしいです。側葉の細かなぶつぶつまで確認できます。 産出度としては、ウィークスの中では、物凄く珍しいというわけではないものの、一般種というわけでもないという、中間的な感覚かと思います。 普通、軸葉の後部 (胸部第8節目) から大きな棘が一本出ている事が、ゲネヴィエヴェラに特徴的です。しかし、3番目の写真で確認できるように、この標本の興味深い点でありますが、本種では認められません。化石化した後に欠損したというよりは、元から棘があった形跡がまるでないようにみえます。 巷の標本をいくつかみると、本種は棘の長さにかなり個体差があるようなのですが、この標本のように形跡ゼロというのは、珍しいかと思います。ご意見でも頂いたように、新種、雌雄差、あるいは先天性欠損などの可能性もあるのかなと思います。 あと蛇足ですが、ウィークスの母岩は四つの角のうちの一つがカットしてあることが多く (本標本の場合は、標本に対して左下) 、これには一体何の意味があるのだろうと、前々から疑問に思っています。
Middle Cambrian (Series3, Guzhangian) Weeks Millard County, Utah, US Genevievella granulatustrilobite.person (orm)
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Modocia whiteleyi
アメリカで多産するModocia属の中でも、こちらはウィークス (Weeks) 累層産のモドシア・ウィテレィ (Modocia whiteleyi) です。 この地の種は全体的に希産ですが、このウィテレィは比較的多産する方かと思います。独創的な形状の多いウィークス産の中では、セダリア・ミノル (Cedaria minor) と並び、あまりこれといった特徴を指摘できず、おとなしめの三葉虫です。本種と比べれば、有名種のモドシア・ティピカリス (Modocia typicalis) などは、むしろずっと派手に見えます。 黄色/赤色の母岩が背景であるからこそ種名が判断できるものの、もしも黒色頁岩がバックであったなどとすれば、本種を同定することは極めて困難になるでしょう。 他の同種標本を見ると、どうも微妙に見た目が違う種が混在しているようにも見えるのですが、上記の判別の難しさもあり、それが成長段階の差なのか、種としての差なのか、私には判断できません。 意外に悩ましい種です。
Middle Cambrian (Series3, Guzhangian) Weeks House range, Millard county, Utah, USA Modocia whiteleyitrilobite.person (orm)
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Meteoraspis dis
尾部がコンセントのような形状の三葉虫、メテオラスピス・ディス (Meteoraspis dis) です。 一見、尾部以外はそれほど派手でもなく、地味な三葉虫に見えるかもしれませんが、閉鎖有名産地ウィークス (Weeks) 累層の希少種の中でも、一際産出量が少ない種であります。オレノイデス・スカベルンディ (Olenoides skabelundi) やデイラケファルス・アステル (Deiracephalus aster) のような博物館級の幻種を除けば、メニスコプシア・ビーベイ (Meniscopsia beebei) などに並んで、ウィークス最希少種と言えるのではないかと思います。 メテオラスピス・ディスという学名も、どこか格好よいです (2分岐した-dis 流星の盾-Meteoraspisという意味?) 。希少種という情報にも引っ張られているのかもですが、特徴的な尾部や洒落た名前も手伝い、私には特別な種に見えます。 この標本は、色々な人の手に渡った形跡があるのですが、とりあえずは、私のところに落ち着いております。
Middle Cambrian (Series3, Guzhangian) Weeks House Range, Millard County, Utah, USA Meteoraspis distrilobite.person (orm)
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Tricrepicephalus texanus
トリクレピケファルス・テキサヌス (Tricrepicephalus texanus) 。 有名産地ウィークス (Weeks) 累層産の三葉虫で、この地を代表する有名種であります。 一見ケイルルスの仲間のようにも見えますが、旧分類ではプティコパリア目 (Ptychopariida) に属しております。それらの仲間はエルラシア・キンギ (Elrathia kingi) をはじめとして、一般的にはシンプルで、ゴテゴテした装飾がない種が多いのですが、この種は力強い尾棘がある事が特徴的です。実際、この尾部の棘がなければ、他種に埋もれて今ほど有名な種になっていたとは思えません。尾棘に加えて、比較的目立つ頬棘の絶妙な組み合わせが、本種を唯一無二の存在にしています。シンプルながら、とてもバランスが良く美しい種だと思います。 もしも、誰か初めて三葉虫を見る人に対して、『三葉虫というのはこんな感じ』という見本を見せたい場合には、私ならこの種をチョイスするかもしれません。ウィークスというよりは、三葉虫全体を代表する種の一つと言っても、過言ではないと感じます。
Middle Cambrian (Series3, Guzhangian) Weeks Utah, USA Tricrepicephalus texanustrilobite.person (orm)
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Norwoodia boninoi
カブトガニの子供の化石 !? 一目みて、そんな印象を受ける方も多いのではないでしょうか? こちらはノルウーディア・ボニノイ (Norwoodia boninoi) 、正真正銘、三葉虫の化石です。アメリカのユタ州のウィークス累層 (Weeks Formation) で産出する有名種であります。 ウィークス累層は、赤色〜黄色の母岩が特徴的なカンブリア紀中期の著名な産地です。現在は採掘が禁止されており、新規標本を得る事はできません。故に、現在市場に出回るのはオールドコレクションのみで、数が限られております。 本種は、そんなウィークス累層の中でも産出量の少ない希少種です。特徴的な三日月のような頭部、長い尾部の棘など、カブトガニを彷彿とさせる形状を持ち、その見た目の面白さからも、非常に人気が高い種であり入手は困難です。 何故こんな形をしているのでしょうか? そこに答えはなく、想像するしかありませんね。 このような形態の多様さこそが、三葉虫、ないしは古生物の世界の面白さをより駆り立ててくれます。
Middle Cambrian (Series3, Guzhangian) Weeks Millard county, Utah, USA Norwoodia boninoitrilobite.person (orm)