『未知との遭遇』との第三種接近遭遇

初版 2023/07/18 20:10

改訂 2023/07/19 02:03

スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『未知との遭遇』のことを少々。
 
【ご注意!】
このログは、映画『未知との遭遇』のネタバレを含んでいます。
 
1977年(本邦では1978年)。

公開までは、映画の内容・情報がすべて秘密にされたSFサスペンス映画『未知との遭遇』。

観客が目にしていたのは、星空の下にまっすぐ伸びる道の先が光っているポスターと“We are not alone”のコピーのみ。

ちょうど公開中の『君たちはどう生きるか』みたいな感じです。


1980年には、一部をカットし新規撮影シーンを加えた132分の『未知との遭遇 -特別編-』(オリジナルは135分)が劇場公開。
また、ビデオソフト化の際は、そこから数カットを短縮してリリースされ
さらには、2002年に『未知との遭遇 ファイナル・カット』として138分に再編集され、それが現在の公式バージョンとなっています。
 
大ヒット映画で、ままあるリリース毎の再編集。どのバージョンを最初に観たかで、好き嫌いが分かれるところ。
私も、最初に観て衝撃を受けた1977年の劇場公開版が好みです。


『特別編』で追加され物議を醸したマザーシップの内部シーンは、オリジナルのVFX監督ダグラス・トランブルが参加しておらず、合成ラインがクッキリ。
セットデザインも未知の異星文明にしてはシンプル過ぎる感じでした。
結局、コロムビア映画が要望したこのシーンは、『ファイル・カット』時に削除されてしまいました。
また、オリジナルの撮影監督ビルモス・ジグモンドも『特別編』の撮影には参加していません。

残念ながら、わたしの好きなオリジナル・バージョンが劇場でリバイバル上映されることは、今後もう無いかも知れません。まあ、Blu-rayソフトが出ているので観ることは出来ます。

コレクション的には、当時出版された写真構成のストーリー本「バンダイのシネマブックス Vol-1」を今でも大事に持っています。これには現在のバージョンで見れないシーンも掲載されています。


■映画のストーリーを紹介


舞台は現代。 第二次世界大戦で消息不明になった戦闘機がメキシコで発見され、現地の老人は“太陽が来て歌った・・・”と語る。


ある夜。電気技師のロイ・ニアリー(リチャード・ドレイファス)は大規模な停電事故の原因を調査中に、突然強烈な光と重力異常現象に襲われる。
唖然呆然の彼は、業務無線の情報で複数の謎の光る飛行物体の存在を知り、トラックで物体を追跡。停電が回復する街の上空を飛び去るUFOを目撃する。


時を前後して、母子家庭の一軒家を眩い光が包み、嬉々として喜ぶ息子バリーは必死で止める母親のジリアン(メリンダ・ディロン)を振り切って、光と共に消えてしまった。


UFOと遭遇したロイは頭に浮かぶ奇妙なビジョンに囚われ、衝動を抑えきれず家の中に巨大な山の模型を作り、それにより仕事も家庭も崩壊してしまう。

 
 ☆

 
この序盤の展開は、まさにホラー映画で、母子家庭、子供の誘拐、家庭の崩壊など、当時アメリカの社会問題も同時に含んでいます。
しかし物語は、UFOによって全てを失ったロイ、ジリアン、そして学術的にUFOを追うクロード・ラコーム(フランソワ・トリュフォー)が出会うことで一転する。


ロイ・ニアリーは選ばれた男として、ジリアンは息子を取り戻す母として、クライマックスの第三種接近遭遇と一種ファンタジーとも思えるラストに向けて走りだす。

 ☆

 
この映画は今となっては、感動の実話から宇宙戦争、恐竜との生存競争まで、あらゆるジャンルの映画を撮るスピルバーグ監督の《通過点》に過ぎないと思われがちですが、
『未知との遭遇』の前半・後半・ラスト、その天と地ほど落差のある展開は、世界的大ヒット『ジョーズ』の直後で怖いもの知らずの若き天才だったスピルバーグだから書けた特異な脚本だと思うのです。
 
・・・と、たいそうに書きましたが、実は、先日NHKで放送された「幻解!超常ファイル/UFO×アメリカ最新情報」に触発されて、思いつきで書いた戯言です。 
ええ~と、お後がよろしいようで・・・では、また。

 〈完〉

好きな映画のアイテムをこつこつ集めております。

コレクションに関する基本姿勢
・価値あるものを安く入手する
・買ったものは積まずに飾って鑑賞する
・無い物は創る

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    woodstein

    2023/07/19 - 編集済み

     『未知との遭遇』の音楽については、エンドタイトルのデストロイド・ヴァージョンなど、エピソードがありますが、いつか語ってみたいですね。

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      墨石亞乱

      2023/07/19

      woodsteinさま
      おお、それは面白そうなお話ですね。
      いつかお聞かせくださいませ!

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