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SINN 903.ST.AUTO
1970年代、クオーツ(セイコー)ショックにより経営が困難になったBREITLING。その際にパーツやら販売権やらを買い取ってSINNが作った「SINNのナビタイマー」が「903」である。そのような理由により初期の903はBREITLINGのパーツを使ってそのまま組み立てたモノなので、いわば育ての親が異なるものの、れっきとしたナビタイマーだと言える。 対して現行の903は、初期型の面影を色濃く残しつつ現代の仕様で作られた「SINNオリジナル」のナビゲーションウォッチという位置付けだ。 ナビタイマーとの比較はアチコチで既出でもあり、私自身も書いたことがあるので割愛するとして…私がSINNの中でも異端の出自を持つ903を手に入れた理由だが、私はこういう裏事情のややこしい時計が大好きだからである。それだけで私の心のレアリティーが2つは上がっているだろうと思う。 搭載するセリタ社のSW500も何気に良い。ETA7750の代替品のような扱いを未だに受けている可愛そうなムーブメントだが、「2010年問題」の中、多くの時計メーカーを救った功労者であることは確か。初期のSW200の不甲斐なさはすでに過去の話。採用するメーカーが爆発的に増えたことが技術向上にも繋がって、今では多くの高級ブランドがベースムーブメントに使用する信頼のエボーシュである。7750よりも4時間伸ばしたSW500のパワーリザーブにセリタ社の意地を感じる。 本家ナビタイマーに比べて分家の903は華やかさという点では大きく劣る。価格が20万円ほど高くなるナビタイマーに対してはしょうがない部分ではあるが、作っているのがSINNであるというのも大きく関係している。華やかさより実用性を追求するBREITLINGとSINNであるが、この場合はSINNの方がより質実剛健を目指したと言えるだろうか。 また本家よりも高い防水性で、日常使いに支障の出るケースは903の方が圧倒的に少ないだろう。オンオフでガシガシ使うべき実用時計、それがSINN903という時計だろう。
サファイアクリスタル 幅41ミリ SINN レザー砂布巾
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ORIENT MakoⅡ SAA02001B3
機械式ダイバーズの入門編として海外でも人気の「マコ」。私がこれを買った時の理由は非常に明確だった。忙しすぎて時計に構っていられなかった時期に、ぶつけようが大雨で水没しようが大して惜しくない時計を探してのことだった。 気兼ねのない時計を探してはいたが、そこはそれ「時計好きの性」。何でも良いというわけにはいかなかった。このマコの良いところは基本的なダイバーズの性能をある程度満たした上で、シティーユースに配慮した時計であるということ。そのサイズや重量、どちらかといえば控えめな見た目などが相まって、仕事場でとても重宝する一本となっている。 そして何より、どこからか安易にパクってきたデザインでないのが良い。どこから見ても「オリエント」なのだ。全体を覆う和風な香り。海外のファンは日本人の私よりもよりはっきりと、マコが醸し出す「オリエンタルムード」を感じ取っているのかもしれない。 全体的には価格のこともあるし文句が出ようはずもない。だが敢えて贅沢を言わせてもらえれば、ベゼル…もう少しだけ高級感出して欲しかった。リキッドメタル流し込み…とまでは言わないが、ベゼルの印象でかなり損をしていると思うのだ。惜しい! 18年の豪雨の時期には本当にお世話になった時計で心強い味方だった。悪天候の影響をモロに受けて混迷を極めた仕事のつらさを、この健気な時計は日々癒やしてくれていたのだ。というのは全然大げさじゃない。マコを見る度に戦友を見るような気持ちになるのは本当だから。 現行オリエントにとって、マコシリーズは特別な存在感で世界中のファンに愛される時計なのだ。
ミネラル・ガラス 幅41ミリ ORIENT ステンレス・スティール砂布巾
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SEIKO SEIKO5SPORTS SKZ209JC
「5スポーツ」の中でも世界中で屈指の人気を誇る「ブルーアトラス」の愛称を持つ本機。「7S36」搭載の性として手巻きもハックも当然ない。 だがこの存在感は何物にも代え難い。2万円の時計でこの完成度、この質感。厚みが多少気になるが、ケースサイズも適正で装着した際の収まりはすこぶる良い。 そして何よりインナーベゼルのコンパス機能だろう。9時位置のリューズで操作するのだがこれが楽しい。回転が軽すぎて簡単にクルクル回ってしまうのだが、むしろ率先してクルクル回したくなるメカメカしさ。時刻調整用の4時位置のリューズはスクリュー式だ。200メートルの防水性能は普段使いに於いても心強いもの。そして独特の位置にあるリューズを守るガードの形状が、アトラスのケースデザインを特徴的で印象的なものにしている。 奇抜なアシンメトリー形状の外観を持ちつつも、どこかクラシカルなアトラス。その落ち着きは各アワーマーカーの見事なバランスによるものだと思う。回転ベゼルにインナーベゼルが重なる41ミリは、当然のことダイアルの面積が狭くなるのだが、最大限の視認性を確保するためのデザインが完成している。ハンドのデザインも全体の雰囲気を崩さないものが選択されていると感じる。 デザイン、機能、価格、それぞれが全てにおいて「最適」なアトラスは、数ある「5SPORTS」の中でも記憶に残る一品だろう。
ハードレックス 幅41ミリ SEIKO ステンレス・スティール砂布巾
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BULOVA ACCUTRON II SURVEYOR BUL-96B239
一番最初に手に入れたブローバ。「サーベイヤーシリーズ」はアキュトロン2の中でも70年代風の味わいで知られる。私の中ではこの時計への評価が後のブローバ増殖へ繋がっていった。 標準的なクオーツの8倍の高精度を誇るUHFクオーツをしれっと搭載しつつもその辺りのアピールは控えめ。ゴールドでまとめたダイアルはラグジュアリー感満載だが、ラグ一体型のケースがスポーティーな雰囲気も漂わせていて広い年齢層、様々なシーンに受け入れられるデザインだと思う。ドーム型に僅かに盛り上がる風防ガラスも良い雰囲気だ。 深い角度で切れ込むラグからフラッシュフィット、ブレスへの流れが非常に立体的で美しい。仕上げは価格なりのレベルだが、磨き分けが巧みなので遠目での印象はクラス以上に良く見えているようだ。「それどこの時計?」と訊かれることが多いのはその証か。 クロノ針の赤い差し色がニクい。安くて印象的、人とは違う個性をさり気なく表現するにはよい時計だ。
ミネラル・ガラス 幅41ミリ BULOVA ステンレス・スティール砂布巾
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EPOS EMOTION NIGHTSKY 3391BL
複雑時計も良心的な価格で提供してくれるエポス。「ナイトスカイ」もポインターデイトのフルカレンダーとムーンフェイズを搭載して20数万円というビックリ価格を実現している。標準装備のレザーストラップが安っぽいのはご愛嬌として、この複雑時計をこの仕上げ具合で作れるというのは大したもの。 ムーンフェイズ搭載の時計は総じてクラシカルな方向へ行くものだが、このナイトスカイは現代的な解釈をデザインに加えて、最新のプラネタリウムを見るような未来感溢れる一本となっている。 ダイアルは複雑な色変化を見せるブルーが鮮烈。現実の宇宙と言うよりは松本零士の描く宇宙のようなファンタジーを感じる。ポインターデイトの先端には三日月。大三角形を描くカレンダーの配置とともにオトナの遊び心を感じる。 エポスのラインアップはどれも他のブランドにはない遊び心が秘められていて、好きになるときは一瞬というような印象的な時計が多い。フルカレンダーとムーンフェイズをセットする手間は相当なものなのでかなりの時計好きにしかお薦めできないが、その神秘的な美しさは折り紙付き。所有する満足度の高い時計であることは間違いない。
サファイアクリスタル 幅41ミリ EPOS ブラックレザー砂布巾