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鉱物標本 ミメタイト(Mimetite)
別名:ミメット鉱、黄鉛鉱 産地:Mexico 黄褐色の樽状の六角柱結晶として産出する鉛の二次鉱物。 1853年にフランスの物理・鉱物・地質学者であり、アングレサイト(硫酸鉛)やセルサイト(白鉛鉱)などの鉱物の命名者でもあるFrançois Sulpice Beudantによって、パイロモルファイト(緑鉛鉱)(*1)との類似性からギリシャ語で模倣を意味する"μιμητής(mimetes)"より命名された。 実際にパイロモルファイトやバナディナイト(褐鉛鉱)(*2)とは固溶体を形成し、1966年にはBakerによる合成実験によってこれらが完全に同じ構造(系列)にあることが示されている。 パイロモルファイトとの中間組成鉱物としては赤褐色~橙褐色のカンピライト(カンピ鉱、Pb5[(AsO4)/(PO4)]3Cl)が存在する。ただし、ミメタイトとパイロモルファイトそれぞれが同じ環境で共に産出することは無いらしい。 2020年、紀伊國屋書店、新宿本店1階の化石・鉱物標本の店にて購入。本標本はミメタイトの小さな結晶の集まりがブドウ状の形を成しており、ファンタジーの菌類の森の様で気に入っている。 *1:パイロモルファイト →鉱物標本 パイロモルファイト(Pyromorphite) *2:バナディナイト →鉱物標本 バナディナイト(Vanadinite)
鉱物標本 3.5~4 亜金剛光沢、樹脂光沢たじ
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鉱物標本 キャストライト(Chiastolite)
別名:空晶石、Crusite、Lapis Crucifer、Macle、Maltesite、Cross-stone 産地:中国 双晶になった薄紅色のアンダルサイト(紅柱石)の隙間をグラファイトのインクルージョンが埋めることで、黒の十字模様が断面に現れる鉱物。分類としてはアンダルサイトの変種になる。 アンダルサイトには同じ化学組成ながら、結晶構造の異なる鉱物が存在し、高圧条件ではカイヤナイト(藍晶石)が、高温条件ではシリマナイト(珪線石)が生成される。 アンダルサイト(キャストライト)の場合は低圧(400MPa以下)および中温(約300℃~650℃)の条件で粘土質堆積物がマグマの貫入による接触変成作用を受けて出来た泥質紅柱石ホルンフェルス中に生成する。さらに双晶生成時に堆積物中の有機物を由来とするグラファイトをインクルージョンとして取り込むとキャストライトとなる。 この鉱物に関する最初の記述はスペインのフランシスコ会宣教師であり、古生物学者でもあったJosé Torrubiaが1754年に出版したスペインで最初の古生物学論文とされる"Aparato para la Historia Natural Española"(直訳すると『スペインの博物学のための装置』)に記されたもので、イラストとともに載せられていたそうである。 "Chiastolite" の名前はグラファイトのインクルージョンによる十字の模様に因んで、ギリシャ語で「直交する線」を意味する "chiastos" から命名された。 その十字模様からキリスト教では守護石とされたこともあり、ラピス・クルシファーやクロスストーン、マルテサイト(マルタ石)などの『十字架』に因んだ別名も付けられている。 本標本は2021年5月にミネラルマルシェで購入した研磨品。
鉱物標本 6.5~7.5 ガラス光沢~亜ガラス光沢、脂肪光沢たじ
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鉱物標本 ウルフェナイト(Wulfenite)
別名:モリブデン鉛鉱、水鉛鉛鉱 産地:Arizona, U.S.A. 主に赤色~橙色、黄色を呈する鉛鉱石。その色はモリブデン酸(MoO4 2-)の一部がクロム酸(CrO4 2-)に置き変わることに起因し、過半がクロム酸に置き換わったものはクロコアイト(紅鉛鉱、PbCro4)と呼ばれる(*1)。 またストルザイト(PbWO4)と固溶体を形成し、モリブデン酸の一部がタングステン酸(WO4 2-)に置き換わっていることがある(*2)。 熱水鉛鉱床中の酸化帯で板状の二次鉱物として生成。火山性噴気ガスによって400~550℃の温度範囲で沈降して生成される場合もある。 ウルフェナイトは1772年にIgnaz von BornがオーストリアのAnnabergで発見し、その際は"plumbum spatosum flavor-rubrum"と呼称した。また、1781年にはJoseph Franz Edler von Jacquinが"kärntherischer bleispath"と命名している。 その後、1785年に植物・鉱物学者で登山家でもあったFranz Xavier von Wulfen神父がオーストリアのBleibergで発見し、鉱物画としてその他の鉛鉱物とともに様々な結晶形を描き残した。1845年になってWilhelm Karl von HaidingerがWulfen神父に敬意を表して"wulfenite"と命名した。 本標本はアリゾナ産であるが、ここのウルフェナイトは鮮やかな橙色の薄い板状~卓状結晶として産出する。 2019年、東京ミネラルショーにて購入。 *1:クロコアイト →鉱物標本 クロコアイト(Crocoite) *2:ストルザイト →鉱物標本 ストルザイト(Stolzite)
鉱物標本 2.5~3 金剛光沢、亜金剛光沢、樹脂光沢たじ
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鉱物標本 ブルノナイト(Bournonite)
別名:車骨鉱 産地:Mexico 鉛に銅にアンチモン、3つの重金属を含む硫化鉱物。双晶を繰り返すことで歯車(車骨)のような形状を取る傾向があるため和名では車骨鉱と呼ばれる。その金属光沢も化学組成が示すように方鉛鉱(PbS)や輝銅鉱(Cu2S)、輝安鉱(Sb2S3)の中間を取るような鋼灰色の輝きしている。 英名は1805年にRobert Jamesonによって鉱物収集家で鉱物学者でもあったJacques-Louis, Comte de Bournon(1751–1825)に因んで名付けられた。 ブルノンはフランス、メスの貴族の家の生まれで鉱物収集家として自らの屋敷に鉱物コレクションを作る程だった。フランス革命でイギリスに亡命した後も鉱物収集家兼、鉱物学者として多くの新鉱物を発見した。1802年に英国王立協会のフェローに選出され、1807年には現在まで続く最古の地質学会でもあるロンドン地質学会の創立にも関わった。1814年、ルイ18世の王政復古によりフランスへ帰国し、王立鉱物閣の局長に任命される。彼のコレクションは現在、パリの国立自然史博物館と特別高等教育機関であるコレージュ・ド・フランスに分割されて保管されている。 本標本は2021年1月、ミネラルマルシェ(月刊)で購入。コロナで外出しづらい中、こういうのも有りだと思う。画像ではそんなに歯車(双晶)してる感じを受けなかったが、これまで見たことのある標本の中でもかなり安かったという理由で購入。安いながらも所々に歯車の片鱗や貝殻状の断口も見れて満足している。
鉱物標本 2.5~3 金属光沢たじ