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果樹の幾何学的な仕立て方@明治の果樹栽培書
明治晩期の果樹栽培法の本に載っている、樹形のいろいろな仕立て方の図。 我が国では明治にいたるまで果物の大規模な栽培はおこなわれておらず、19世紀も終いになってようやく、ヨーロッパやアメリカで当時の最新技術を学んできた園芸家がその知識や技術をひろめ始め、各地で果樹園が作られるようになった。また一般市民も経済状態がよくなって広い庭付き一戸建てを持つようになり、そこで果樹や草花を育てる園芸趣味が流行った。この本はそうした時代に数多く出された園芸書のひとつだが、当時のヨーロッパやアメリカで流行していたこのような幾何学的な整枝法は、実益と趣味とを兼ね備えた仕立て方として紹介されたにもかかわらず、一部を除いてはほとんど広まらなかったのではないかとおもわれる。 それでもこんな人目を惹く果樹の仕立て方が、20世紀の初めに日本へ図解入りで紹介されていたことには興味をそそられる。
實用園藝學 果樹篇 明治41年(1908年) 明治37年(1904年) 木口木版刷り+活版刷り図版研レトロ図版博物館
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十九世紀の実験さん@明治初期の無機化学入門書
帝大になるよりも前の東京大學醫學部製藥學科の最初期の卒業生が、ドイツから輸入された化学書や自らドイツ人教授から受けた知識などを基に明治十年代にまとめた無機化学書に出てくる、マジックの白手袋のようなシュールさのある「実験さん」。 輸入書にあった図版を描き写したのかどうかはわからないが、恐らくは元ネタ本にあった図を「これはわかりやすい♡」と思って採用されたのだろう。軽快な筆致のイラストを細密銅版画で綺麗に再現してある。このちょっと不思議なイメージがよっぽどお気に召したのか、表紙にまであしらわれている。 「実験さん」はその後も、化学や物理の実験場面などで盛んに登場するようになるのだが、この本あたりがそのはじまりなのではないかしらん。 本書の「第壹版」については、図版研「架蔵資料目録」ブログに載せてある。 http://lab-4-retroimage-jp.seesaa.net/article/456605716.html また本書と同じ第三版は、(画質はよくないが)国会図書館デジタルコレクションに公開されている(ただし表紙はまっくろけで、タイトルも何も書かれていないようにみえる)。 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/830924 #レトロ図版 #化学実験 #東京大学 #薬学 #製薬化学 #細密銅版画 #明治初期
無機化學 前編 非金屬部 明治13年(1880年) 明治12年(1879年) 銅版+活版刷り図版研レトロ図版博物館